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【調査結果】

電力線通信の漏洩電波で短波放送が聴こえなくなる可能性
アマチュア無線有志による実験データ

■URL
http://www.jarl.gr.jp/plc/report1/

 日本アマチュア無線連盟(JARL)の関西地方本部は18日、「電力線搬送通信による漏洩電波の影響評価に関する公開実験」の結果報告書をとりまとめた。特に短波放送の受信については、放送が聴こえなくなる可能性を示唆するデータとなっている。

 すでに本誌でもお伝えしたように同実験は、高周波数帯による電力線搬送通信(Power Line Communication:PLC)で電線から漏れる電波の影響を懸念したアマチュア無線家有志らによって実施されたものである。11月23日、大阪大学吹田キャンパス内に模擬的なPLC環境を構築、アマチュア無線や短波放送の受信機に与える漏洩電波の強さなどが測定された。実験するに至った経緯や具体的な使用機器、測定環境、実験手順などが報告書に詳しく説明されている。

 各実験の結果は実際に報告書を参照してもらいたいが、「この実験は計測データ収集を目的としたため、結果について考察は加えない」とされており、示されているのは数値的なデータのみである。アマチュア無線などの知識がない人には、これらの数値がどういう状況を表わしているのかわかりにくいだろう。そこで、今回の実験の監督も務めたJARL関西地方本部技術担当幹事の水島章広氏にかみ砕いて説明していただいた。

 まず、アマチュア無線や短波の受信機で実際に受信された漏洩電波の強度を測定したデータ「表1 受信した信号強度の表」からは、短波放送の周波数帯で観測された漏洩電波が「多くの放送局の信号と同等か、より強い信号」であり、「結果として放送の聴取に重大な支障を与える可能性がたいへん高いことになる」としている。

 一方、アマチュア無線の周波数帯では数値が低くなっているが、これは今回の実験でシミュレートしたPLC信号の出力レベルが「HomePlug」規格に基づいて再現されたものだからである。HomePlugでは、アマチュア無線を妨害しないよう、アマチュア無線と重なるいくつかの周波数帯については、出力を1,000分の1に低減することになっているという。しかしながら、「アマチュア無線では放送局と比較して送信電力が弱いため、放送局より微弱な電波を受信する頻度が高い」としており、結局は「アマチュア局の運用に支障を与える可能性が高いことになる」のだそうだ。

 それでは、どこまでPLCの出力を下げれば、アマチュア無線に影響を与えなくなるのか? これを測定したのが、「表2 アマチュア局が受信限界になったときのSG出力」としてまとめられているデータだ。アマチュア無線の周波数帯は出力が抑えられているにもかかわらず、さらにPLCの出力を下げなければ「アマチュア無線に妨害を与えてしまう」わけだ。その度合いは周波数帯によって異なるが、少なくところで約3分の1、最大では約500分の1に出力を下げなければならないとしており、「無論、ここまで絞って、PLCとして実用になるかどうかは別の問題」となる。

 報告書からは、PLC用高周波数帯の開放、ひいては高速なPLCの実用化に対してかなり厳しいハードルが示されたと言えるが、注意しておきたいのは「いずれにせよ、これらの結果は実験場所での条件でのことであり、条件が異なると違った結果になる可能性がある」(水島氏)という点だ。実際、仮設された電線は現実の住宅配線とは環境や特性が異なるだろう。また、実験ではそもそもPLCモデムは使われておらず、シグナルジェネレーターという機器によって発生した疑似信号で測定されている。

 とはいえ、実験といえども国内では、規制されている周波数帯を使うPLCモデムは稼働できない。高周波数帯によるPLCの実用化を計画している企業でさえ、フィールド実験に漕ぎ着けられない状況なのである。

 一方、高周波数帯によるPLCがアマチュア無線をはじめとした既存の無線システムに影響を与えることが指摘されてはいるものの、それを裏付けるような、PLCの漏洩電波に関する実験データが国内ではほとんど公開されていないのが実状だ。そんな中、特定環境下という前提があるにせよ、今回の実験結果が広く公開されたのは注目に値する。JARL関西地方本部でも今後、別途報告書を作成して監督官庁にも提出していく考えだとしている。

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(2001/12/19)

[Reported by nagasawa@impress.co.jp]


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