向かって右から、テレビ会議システムで参加した村井氏、加藤氏、会津氏、荒野氏、坪氏、司会を務めたJPRS取締役の堀田博文氏 |
日本ネットワークインフォメーションセンター(JPNIC)とインターネット協会の主催による「第3回ICANN報告会」が23日、東京都内で開催された。3月にガーナで開催されたアクラ会議の概要と、大きな波紋を呼んでいる“改革案”の内容について説明されたのち、ICANNのあり方を考えるパネルディスカッションが行なわれた。
ディスカッションには、現ICANN理事である加藤幹之氏と村井純氏をはじめ、ICANN ASO(アドレス支持組織)Address Councilの荒野高志氏、アジアネットワーク研究所代表の会津泉氏、JPNICドメイン名担当理事の坪俊宏氏がパネリストとして参加した。
最初にコメントした加藤氏はまず、「マクロな目で今回の再編成の問題を考えていただきたい」と強調。政府の参加や理事の選挙方法が特に議論の的となっている流れについて、「個別の問題だけをとりあげるのではなく、本来ICANNに課された全体的な使命を実現するにあたってどのようなことを今改革しなければならないか」を考えるべきだと指摘した。
それでは、ICANNの使命とは何なのか? 村井氏は、「ICANNの使命の中で重要な役割を果たすルートネームサーバーの側面からの視点で、今回の改革案がどう考えられるかに関心がある」という。ICANNの任務に社会的側面が求められてきていることを認めながらも、ICANNの原動力は「インターネットを運用していくにあたって必要なミニマムオペレーション」であるとし、信頼できるIPアドレスとDNSの運用を継続できるような枠組みを作ることが最たる使命だと述べた。特にルートネームサーバーについては、ICANNが運用コストを供給することによって安定性を確保することを、改革案は狙っているのではないかと指摘する。
「分析も提案内容もあまり正しくない」として、改革案に対して明確に反対の意を示すのは会津氏だ。ICANNの決定プロセスは当初、ドメイン名やアドレスなど各分野を担当する支持組織でコンセンサスのとれた提案を理事会が追認するというかたちだったのに対して、特にgTLD問題などについて理事メンバーが議決権を行使しだしてきた状況を指摘。等しく議決権を持つ理事メンバーが、自分の非専門分野に対しても議決権を行使できる状況を問題に挙げた。「相対的に問題が少ない技術や運用面と、ポリシーがからむドメインネームや新gTLD、あるいは競争の導入を促す分野とでは性質が相当違う」として、これらすべての課題を「一つの組織が決めていくことがいいのか」と疑問を投げかけた。
分野によっては責任や権限を分離しいくべきという方向性は、今回のディスカッションでは各パネリストのコメントからも共通の認識としてうかがえた。アドレスコミュニティの立場から意見を述べた荒野氏は、ボトムアップの意志決定プロセスがうまく機能していないと改革案で分析されていることについて、「ICANN一般に関してはそれは正しいのかもしれないが、RIR(Regional Internet Registry)というアドレスコミュニティでは機能している」と反論する。すべての意志決定機能が「本当にICANNの中である必要があるかというと、決してそういう必要はない」としている。
インターネットガバナンスという視点で意見を述べた坪氏は、「ICANNがインターネットガバナンスの頂点組織」というとらえ方そのものに疑問を投げかける。「今回の改革案もそういう考え方が強く、インターネットガバナンスの頂点組織として責任と権限を集中させようという考え方があちこちに見られる」ことに対し、「インターネットガバナンスというものは、一つの組織で担うものではないし、担えるものでもない。ICANNは、インターネットの一意性を保つオーソリティとしては絶対に必要だが、インターネットガバナンスとして権限を強くしていく必要性はない」と指摘した。
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(2002/4/24)
[Reported by nagasawa@impress.co.jp]