【業界動向】
ソフトの悪用阻止と人権擁護を明記した新ライセンス
~ハッカーグループが発表
■URL
http://www.cultdeadcow.com/news/hacklicense.txt
http://www.hacktivismo.com/hessla.html
ハッカーグループ「Cult
of the Dead Cow」の下部組織でハッキングにより人権活動を支援する活動を行なっている「Hacktivismo」は25日、人権侵害する国家を国際法によって告訴することのできる新しいソフトウェアライセンス「Hacktivismo
Enhanced-Source Software License Agreement(HESSLA)」を発表した。これはGPLのようなオープンソースライセンスと似た形式を、ハッカー活動と人権活動に持ち込む新しい試みである。
Hacktivismoは人権が抑圧されたり、拷問を受ける可能性があるような地域において外部と通信できるようにする暗号化ソフトや、匿名通信ソフトなどを開発して無償配布しているハッカーグループである。こうした活動家は「hacktivist」(hackerとactivistを合わせた造語)と呼ばれており、コンピューター技術により政治的、社会的活動を推進しようとする人々だ。匿名で通信できるソフトウェアは、彼らの代表的な作品だが、テロリストなどに悪用されるとの批判もあり、hacktivistたちの活動の合法性、あるいは社会的意義については、法学者、社会学者、コンピューター科学者などによりさまざまな議論がなされているところだ。
今回発表されたHESSLAについてHacktivismoの創始者Oxblood Ruffin氏は「HESSLAは人権保護が技術移転と結びつけられた初めての出来事である」とその意義を強調した。HESSLAでは、HacktivismoやHacktivismoのソフトを利用するエンドユーザーがそのソフトを悪用した場合、法的手段に訴えることができるように記している。さらにソフトに悪質な改変を加えることも禁じ、一般的なオープンソースライセンスに比べて政治的、社会的側面が強調されている。
HESSLAの最も特徴的な点は、このライセンスによって配布されるソフトウェアを人権侵害を行なっている政府機関や組織が使用できないようにしている点だ。もしある政府がHESSLAライセンスによるソフトウェアを人権侵害に使用した場合、このライセンスでは、エンドユーザーがその政府を国際法により告訴できるようにしている。多くの場合人権侵害を行なう政府を一般市民が告訴する場合、特にそうした国家は“主権国家による免訴”という形をとる場合が多く、実質的に裁判を継続することができない。HESSLAのライセンスを使用した場合、形式的ではあるが米国のような民主国家に場を移して国際法により告訴し、裁判を行なう道が開かれる。こうしたライセンスが添付されていることにより、ソフトウェアが人権侵害や悪意のある用途に用いられないよう歯止めをかける狙いがある。
Hacktivismoは現在画像に情報を秘密裏に埋め込むいわゆるステガノグラフィー技術を使ってエンドユーザーでも簡単にインターネット上で匿名通信できるようなソフトを開発中である。
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(2002/11/27)
[Reported by 青木 大我 (taiga@scientist.com)]
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