【技術】
Harvard Berkman Centerがソースコードを公開
“便所の落書き”から抜け出すには
~有意義な議論を行なうための掲示板ツール
■URL
http://h2oproject.law.harvard.edu/index.html
http://h2oproject.law.harvard.edu/rotisserie
Harvard
Law School Berkman Center for Internet & Society(Berkman Center)は2日、インターネットを使って学術的な研究などの有意義な議論を行なうための掲示板ツール「Rotisserie」のベータ版ソースコードを公開した。このツールはすでにHarvard
Law School、MIT、Stanford Law School、Duke University、St.John's University、Harvard
Extension Schoolなどでこの秋から使用されているもので、有用であることが確認されている。
現在インターネット上で利用されているチャットルーム、Webページ、スレッドベースの掲示板などでは真剣で有意義な議論を展開することが難しいと考えられている。チャットルームではタイピングが速いことが求められるだけでなく、考察というよりは単なる思いつきが流れることが多い。また、掲示板でも無意味なスレッドが頻繁に乱立するため、そこから有意義な考察や結論を引き出すことは難しいと考えられている。こうしたことから大学などの教育機関で効果的にインターネットを活用することの困難さが指摘されてきた。この問題を解決するためにBerkman Centerではインターネットを真剣な議論の場に変革するための一連のツールの開発を開始しており、その一つが今回発表された「Rotisserie」として結実した。
Rotisserieは、一見したところ普通のスレッドベースの掲示板に見えるが、スレッドの構造と投稿を公開する“タイミング”を制御するという点で議論の流れは大きく異なっている。議論のための話題を提供するリーダーが最初の投稿を行なう時には締め切りとなる時間が設定される。その投稿に対して何らかの考えを表明したい人物は自由にそのスレッドに投稿できるが、投稿内容はその締め切り時間が過ぎるまで外部の人には見えない。そのためいちばん最初に投稿しようと先陣争いをするといった問題が避けられるだけでなく、十分に時間をかけて問題を考察してから投稿することが可能になる。また、締め切り時間が経過して投稿内容が公開された後、投稿者が最低でも一つの別の投稿を審査するようにお互いの投稿が割り当てられる。議論参加者は割り当てられた投稿を吟味し、その投稿の問題点を指摘するために新たに投稿を行なったり、その考えにどれほどの価値があるのかをレーティングという数字によって評価するように求められる。その結果、参加者すべての考えが議論参加者全体によって吟味されるだけでなく、レーティングが高いスレッドには有意義な情報があるということが一目でわかるようになり、スレッドの山に埋もれてしまうことがない。
Berkman Centerのこのプロジェクトでは、さらにテキストベースの議論だけでなくマルチメディアアーカイブを効果的に構築するためのソフトウェアツールも開発しており、今後はユーザーインターフェイスの改善、講義内容やシラバスを簡単に投稿できるようにする仕組みなどを整備していきたい考えだ。また、大学だけでなく、他の組織内でも有用な議論を行なうために利用できないかどうか検討を進めている。
この掲示板ツールRotisserieのバイナリとソースコードは、Webサイトでダウンロード可能。Rotisserieプロジェクトではこのソースコードをダウンロードし、バグを修正したり有用な機能を追加するなど新たな発展に貢献してくれるよう利用者に求めている。また、Rotisserieを実際に使用できるサイトも別に用意されている。
(2002/12/3)
[Reported by 青木 大我 (taiga@scientist.com)]
|