【イベントレポート】
DVTSの普及へ向けてコンソーシアム発足■URL DVTS(Digital Video Transport System)の普及を目指す「DVTSコンソーシアム」が10月1日に発足し、1回目となるワークショップが東京都内で12月5日に開催された。 DVTSは、DV映像をIPネットワーク上で配信する技術で、ギガビットネットワークの広帯域を活用するためのアプリケーションとして1998年から開発が進められている。基本プロトコルが公開されており、日本をはじめ韓国や米国で遠隔授業などのソリューションとして利用されはじめているほか、すでにビジネスとして商用製品に活用しようという動きも出てきているという。しかしその一方で、もともとUNIXベースで発展してきたフリーソフトのため、普及に向けては各OSに対応したGUIの提供や互換性の確保、安定運用に必要な技術情報の提供が求められるようになってきた。 コンソーシアムはこのような背景を受けて発足されたもので、セミナーやWebサイトでの情報提供を行ないながら、産学共同でDVTSの研究、技術開発や「マーケットの開拓」(コンソーシアム代表の村井純・慶應義塾大学環境情報学部教授)を後押ししていく。事務局が慶応義塾大学SFC研究所に設置されており、参加企業/組織を広く募集している。 5日に開催されたワークショップでは、SFC研究所のスタッフや民間ベンダーらによる技術動向の説明や関連製品の紹介、イベントなどでの応用事例の報告が行なわれた。 注目されるGUIの開発状況については、当初からDVTSの開発に携わってきた慶應義塾大学の小川晃通氏が、MacOS X用のGUIとして「MacOS X Aqua GUI DVTS」を近く発表予定であることを明らかにした。また、電通国際情報サービスの熊谷誠治氏からは、Windows XP用の商用ソフトとして、DVTS互換の「DV over IPシステム」を開発中であることが報告された。倉敷芸術科学大学との共同開発によるもので、製品化時期は未定だが、間もなくダウンロード配布を開始してベータテストに入る予定だという。 熊谷氏によれば、DVTSがMPEG-2やMPEG-4よりも優れている点として、リアルタイムエンコード/デコードに専用のハードウェアを必要としないことを挙げる。IEEE 1394インターフェイスのあるPCであれば、ノートPCでも市販のDVをつなぐだけでDVTSの配信マシンとして活用できるのが特徴だ。 しかしその一方で、安価な機材で30Mbpsの高品質映像配信を実現できるというメリットが、逆に現時点ではエンドユーザーレベルで非実用的であるのも事実である。キールネットワークスの櫻井智明氏が発表したテレビ会議の試作ソフトでは、DVをいったんデコードすることなく、フレーム数のパラメータを可変できる機能を搭載することでこの問題に対処している。会場でもデモンストレーションを行ない、必ずしも30フレーム/秒のフルフレーム映像でなくでも、既存のテレビ会議システムと比べて臨場感ある映像が送受信できるとしている。 なお、2社の商用ソフトのほか、すでに慶應義塾大学でもWindows用のDVTSソフトを開発しており、コンソーシアムの会員にはソースコードを公開していくという。
(2002/12/5) [Reported by nagasawa@impress.co.jp] |
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