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【特集】

ヤァヤァヤァ インターネットにマンガがやってきた!

 日本人は、マンガが大好きだ。マンガの置いてない本屋は、専門書を扱う書店でない限り見つけることは難しい。ビジネス街の書店でも、文庫版のマンガが見つかるだろう。電車に乗れば、背広姿のビジネスマンが週刊漫画誌を読みふけっている光景に出くわすだろう。駅前には、マンガ喫茶の看板だ。

 すでにマンガは日本の文化の1つだという意見もある。英語をはじめ、さまざまな言語に翻訳されたMangaが出版されている。国境を越えたマンガが、インターネットの世界に参入してくるのも当然の流れだろう。

 しかし、マンガのデジタル化には大きな壁が存在している。著作権の保護と、読みやすさのバランスだ。日常生活において、マンガは他の書籍に比べると、さまざまなシーンに存在している。それは、マンガがお手軽なものだからだ。

 今回の特集では、マンガとインターネットの親和について、異なったアプローチを試みている3社を取材した。マンガ雑誌として初めてのオンデマンド出版に挑戦する青林堂、巨匠・松本零士の作品を無料で公開している小学館、そしてマンガそのものをオンラインで見せてしまおうとするライコス。全てのサービスに共通しているのは、「踏み出さなければ、何も始まらない」という考え方だ。

●ブックオンデマンド版「ガロ」は日本初のマンガ雑誌BOD


http://www.digigaro.co.jp/
蟹江幹彦社長

 11月末、青林堂が出版していたマンガ雑誌「ガロ」が通常の書店販売を中止し、インターネット経由のオンデマンド出版(Books On Demand:BOD)に切り替えるという衝撃的なニュースが流れた。「ガロ」の創刊は、昭和39年の9月号。月刊誌としてスタートしたが、2001年に隔月刊、2002年4月に季刊に、そしてオンデマンド出版へと推移していった。BOD版の「ガロ」第1号は12月20日に刊行され、定価は現行価格の780円程度を予定している。これまで数々のオンデマンド出版物が刊行されたが、マンガ雑誌のBODは日本で初めての試みとなる。そこで、株式会社青林堂ネットコミュニケーションズの蟹江幹彦代表取締役社長にお話を伺った。

◆デジタルガロの失敗◆

 「ガロ」はかつてデジタル化された時期があった。2001年3月から、インプレスコミュニケーションズと共同で、ダウンロード型の有料マンガ配信サービス「デジタルガロ」を提供していたのだ。

蟹江: デジタルガロを9月で停止した原因は、ダウンロードされたマンガがYahoo!オークションで転売されていたのを発見したから。現状のダウンロード型配信サービスでは、著作権が守れません。

 通常の単行本をコピーして複製を作る場合、コストが原価以上にかかってしまう。ところが、デジタルデータであれば、せいぜいCD-ROM代程度で簡単にコピーできる。「デジタルガロ」は、PDFファイルのダウンロード販売だった。コピーガードなどの対策を事前に施さなかったのはなぜだろうか。

蟹江: コピーガード対策をすると、その分コストがかかる。また、専用ビューワーなどを使うと、読みにくいなど環境が悪くなってしまいます。「デジタルガロ」方式では、作家さんからの信頼を得ることができない。先祖がえりというわけではないけれど、紙媒体ならば著作権を守ることができるし、コピーガードのコストもかからないというわけです。

 青林堂は、この「デジタルガロ」の失敗を踏まえて、雑誌初のBODという選択誌を選んだのだ。

◆BOD版「ガロ」◆

 先述したことだが、定期的に刊行されているマンガ雑誌のBODサービスは、日本で初めての試みとなる。サイズは、従来のガロと単行本サイズの中間くらいになるという。

蟹江: 従来の大きさで出したかったのですが、値段が千数百円になってしまう。今のままの定価で販売するために、若干サイズが小さくなりました。

 青林堂では、2002年3月から単行本のBODサービス「青林堂B.O.Dリバースコミックス」を提供してきた。『超人ロック』や『ど根性ガエル』など、ちょっと懐かしい路線を狙ったものだ。12月時点では、すでに140作品400巻の品揃えとなっている。蟹江氏は、単行本版BODで積んだノウハウから、「『ガロ』をBODで出しても、多分続けられるだろうな」という手ごたえを掴んだという。

 蟹江氏がいうノウハウとは、「スキャニング」のノウハウだ。原稿をそのままデジタルデータに変換すると、スクリーントーンにモアレが発生したり、紙面にゴミが入ったりする。

蟹江: 普通にグレースケールでとっちゃうと、非常に見づらい。例えば、ルビの部分がつぶれてしまう。スキャニングの技術は簡単そうにみえて、ものすごく難しい。少し前なら、全部手作業で修正していましたからね。ところが今は、データが十分取れたので、ほぼ自動でできるようになりました。原稿をみて、この程度だったらこの数値でいいなということがわかります。そうじゃなきゃ、もっともっとコストがかかるし、手間がかかります。

◆なぜBODなのか?◆

 「ガロ」がBODに方向転換した背景には、昨今の出版不況がある。

蟹江: 「ガロ」の場合、出せば出すほど赤。その中でも、無理に続けてきた。そうなると、みんなにとって“いいこと”が何もない。でも、休刊にするのには忍びなかったんです。

 BODに移行することで、収益面に大きな改善が期待できる。まず、今まで返本されてきた分の印刷代がなくなる。出せば出すほど、利益は小さいながらも黒になるという。

蟹江: 少なくとも赤はでない。これは大きな差です。むしろ、儲かっているような感覚ですよ。印刷代ってこの不況でも安くならないから(笑)。

 BODの利点は他にもある。最新刊を欲しい時にすぐに入手できることと、バックナンバーが常に用意されていることだ。

蟹江: 読者さんからよく言われていたのは、「書店を回ったけれども『ガロ』が置いてない」という問題。雑誌というのは発売されてから書店に並んでいる期間が短い。しかも、売れちゃったら追加で入らない。「ガロ」の場合、全国の書店に入っても1冊程度で、発売日に買えなかったら、どこに行ってもない。これが解消されますよ。

◆新規読者の開拓に期待◆

 インターネットによるBOD販売に移行すると、従来の読者がついてこれるのだろうか。蟹江氏によると、最近の「ガロ」の読者は、20代の女性が多いのが特徴だという。

蟹江: もちろん一番多いのは大学生なんですが、読者アンケートなんかをみても、その中で女性が40%くらいあったんじゃないかな。書店さんによると、デザイン系の勉強している女性がよく買っていくそうです。
 BODに移行することで、今までの読者が全部、ついてこれるとは思ってないです。ちょっと減るかもしれない。ですが、新しい読者を開拓できると思います。将来的には、インターネット以外からも買えるようにしようと考えてます。

◆今までにない原稿料体系に、作家陣は……◆

 12月20日に出るBOD版第1号は、再録中心となる。作家陣の多くは、新作の投入について様子を見ている状況だという。当初は季刊誌として発行し、来年の早い段階で隔月もしくは月刊に戻す予定で、今後は新人発掘の場として活用していくという。

蟹江: 原稿料に関してはインセンティブ契約です。「売れた部数÷描いたページ分」。作家さんは、「勘弁してくれよぉ」という反応ですね(笑)。今までも、うちの場合は原稿料を払っていなかった珍しい雑誌でした。その代わりに、好きなことを描いてくださいと。この趣旨に賛同していただける作家さんには、今後もお願いしようと思っています。

◆BODならではの戦略◆

 雑誌と単行本の大きな違いは、広告の有無だ。現段階では、代理店も判断しかねている状況のようで、青林堂が直接交渉を行なっているという。BODの性質上、読者からのオーダーがあって初めて印刷をする。そのため、読者の年齢や性別といった属性情報も合わせて入手することが可能だ。このワントゥワンの仕組みを利用して、蟹江社長は、BODならではの戦略を考えている。

蟹江: まだ考慮中ですが、1冊ずつデータを選べますので、読者の年齢や男女別によって広告を掲載する。広告主も、出稿しやすい形になると思います。
 単行本に関しては、セレクションを提供したいと思います。例えば、200ページでいくらとか、装丁を自分専用にしたり。これは来年中にできるんじゃないかなと思ってます。ユーザーにニッチな「ガロ」にしたいですね。

 日本で初めての雑誌BODということで気負いはないのだろうか。

蟹江: やってるほうとしては、ぜんぜん大変なことをやっているとは思っていません。コミック版のBODをやってきたので、「あっ、そっか。BODでやればいいや」程度なんですよ。そのくらい我々の頭の中では、BODは普通になっています。
 それに、世の中には出すことができない状況でも、出さざるを得ないという雑誌がたくさんありますよね。2,000人、3,000人という固定読者は日本中に絶対いるけれども、それ以上増えないという本があるわけですよ。そういう専門的な本は、BODでやったほうがいいんじゃないかな。そういう読者は、値段に関係ないわけですから。

◆今後の展望◆

 BOD出版に関しては、現時点では“やってみないとわからない”という要素がたくさんある。青林堂では、今後も積極的に販促ツールとしてデジタルメディアを活用していく方針だ。

蟹江: マンガとしてデジタルに戻ることは、100%ない。マンガはあくまでも紙媒体でやる。まだまだBODというのは少数派ですけども、2、3年後にはもっと増えてくると思います。他の出版社さんもタイミングの問題だけでしょうね。身軽なうちなんかが最初に走っていかないと。
 結局、あとは販売チャンネルだけなんです。それと認知度。インターネットで細々とやっているから認知度が足りないだけで、例えばコンビニエンスストアやおもちゃ屋、ガソリンスタンドなんかでも買えるようになれば普及すると思いますよ。

 もちろん、青林堂の出版物全てがBODになるわけではない。蟹江氏も、「売れる本は、通常に印刷しても売れる。人気の高い本や、ある程度新しい本までBODにする必要はないです」と語る。

右は今までの「ガロ」。左は、青林堂内部での保管目的として試験的に作製したBOD版「ガロ」(販売予定はないそうです)。補強用のセロテープなどもしっかり再現されていました。

●『銀河鉄道999』の新作はネットで公開


http://ginga999.shogakukan.co.jp/
(C) L.MATSUMOTO
/SHOGAKUKAN

 『銀河鉄道999』は、松本零士氏の代表作の一つとして有名なマンガだ。1977年に「週刊少年キング」誌(少年画報社)で連載が開始され、翌年からアニメ放送も始まった。「月刊ビッグゴールド」(小学館)1996年7月号から連載が再開された『銀河鉄道999』は、その後インターネットに公開の場を移し、なおも鉄郎とメーテルの旅は継続中だ。

 インターネット版『銀河鉄道999』は、無料で公開されている。会員登録も専用ビューワーも不要だ。この意欲的な仕掛けについて、小学館マーケティング局ネットプロモーション室の新島徹室長にお話を伺った。

◆「999」がインターネットの海へと旅立った理由◆

 インターネットへと連載の場を移した理由は、当時連載していた「月刊ビッグゴールド」が1999年3月号で休刊してしまったためだ。この時、小学館社内では連載終了を惜しむ声があり、「インターネットだけで連載できないだろうか」と実験的に継続する方向となった。

新島: もちろん、論議がありました。読者に課金して見せるという方法も考慮されました。すでに有料サイトは存在していましたが、なかなかユーザーが集まらず苦戦していると聞いていました。小学館でもWebを公開していましたが、決定的なコンテンツがないという課題を抱えていました。そこで、人寄せとして『銀河鉄道999』を無料配信することになりました。

 松本氏も乗り気だったという。雑誌がなくなることがショックだったようで、新島氏は、渡りに船だったのではないかと推測している。

 マンガビジネスは、単行本に重版がかかってペイする仕組みになっている。松本零士氏クラスの巨匠ともなれば、新刊が出れば間違いなく売れるはずだ。それをわざわざ無料で公開してしまう狙いは何なのだろうか。

新島: 単行本を全部書き下ろしでやるとなると、松本先生もかなり力がいります。私達としても、ちょっとずつ発表して書き溜めてもらい、それを1つの作品にするのが一番良い形だったんです。フリーペーパーに連載して、それを単行本にするのと同じです。

 実際に、インターネットでのみ公開された第31話「無能の旅人」から第38話「楽劇 友に捧げる歌」までをまとめた単行本最新刊である20巻は売れた。新島氏によると、現在第40話のネーム(実際の原稿を描く前のプロット、ラフ)が入っているところだという。36ページの大作となる予定で、2003年の頭には公開できるそうだ。

◆著作権の保護をどうするのか◆

 サイトを見るとすぐに気が付くことがある。インターネット版『銀河鉄道999』では、ごく普通のJPEGファイルでマンガが公開されている。新島氏に確認したところ、特別な著作権保護技術などは利用していないそうだ。

新島: 先生のご理解もありましたが、雑誌で掲出した場合でもコピーされる時は、されてしまう。やっちゃだめだと書いてあっても、やられてしまったらしょうがないだろうと。良識に任せようということになりました。もちろん、コピーしたものを公開している人がいれば、抗議のメールを送ります。そういうケースは少ない上、抗議メールを出した結果、突っ張ってくる人も少ない。それに、松本先生のファンはたくさんいらっしゃって、何かあったらすぐに連絡が入ります。
 最終的には、「単行本になった時に、部数が減ったら考えましょうか」という結論になったんです。結局は部数は減りませんでしたし、こりゃよかったと思ってます。

 第39話「涙の表面張力」は、前後編に分かれている。小学館では、まず前編をインターネットで公開し、1ヶ月後に「ビックコミック」誌で前後編を一気に掲載、さらに1週間後に後編のインターネット公開という変則的な試みも行なった。読者の反応は、どちらも好評だったという。

◆画質重視か、回線重視か◆

 松本氏からの原稿はデータ入稿だ。しかし、小学館ではそれを一度紙焼きし、写植をした上で、インターネット公開用にスキャニングするという工程を踏んでいる。この理由は、「目的が単行本を作るからだ」という。

新島: インターネット版は「一寸見」の感覚。断ち切りなどを考えずに、原画をそのまま出して「紙媒体より、原画っぽくしよう」と思っています。

 松本氏も漫画家として、もちろん画質にこだわる人だ。「999」の書き込みの精緻さを見ればよくわかる。インターネットで見せる場合、重要なのは“軽さ”だ。小学館では、画質とデータ量のバランスを重視している。

新島: 画が大きいので、データ量を押さえるため荒いです。プリントアウトしていただくとわかりますが、読みにくいと思います。データは、部分的にすいています。全体を一気に落とせば簡単ですが、文字がぽわーとなってしまうと困りますから。また、見開きページなどは、こまごまと書いていらっしゃる。先生の熱意には応えたいので、小学館としても別々に取り込んだページを、つなぎあわせて力技で1枚の画にしています。

 新島氏は、続けて面白い意見を述べた。「著作権保護のためにも大きな画像でやっているのかもしれない」というのだ。インターネット版が開始された1999年の接続環境はそれほど速いものではなかった。

新島: 当時はダイヤルアップが主流でしたし、画像を全部ダウンロードしてくる時間の電話料金を考えれば、単行本を1冊買えてしまう。ブロードバンド環境の普及で、この考え方はどうなんだろうと思いますが、それでもブロードバンドなりに「みつけたら抗議するけど、しょうがない」とも思ってます。それが怖かったら、踏み出せないサービスなので。いつまでもドキドキしていたら、辛いんですよね。インターネットと前向きに付き合わなければ、これから先の商売はあがったりですよ。

 サービス開始当時は、「重い」という苦情があったそうだ。だが、現在に至るまでクレームがついたのは回線に由来するものだけだという。最近では少なくなったといい、「1999年から、データ量は変えていないんで、回線環境が良くなったんでしょうね」と新島氏は分析する。

◆無料というビジネスモデル◆

新島徹室長

 インターネット版『銀河鉄道999』は、あえて無料で提供しているサービスではない。むしろ無料で提供しなければ、サービスが存続できないビジネスだ。このサービスそのものはあくまでも販促の一環であり、その意味では赤字である。しかしながら、単行本が売れることで、会社全体として黒字に寄与しているのだ。

 サービスの運営費は、原稿料やサーバー管理費などを合わせて月額100万円に届かない程度だという。スタッフは、新島氏のほか、Webデザイナーと編集担当者の3人。全員が兼任でやっており、ボランティアに近い形だという。

新島: 先生とやり取りをするのは、編集部の担当さん。この人件費はインターネット事業に組み込まれてはいません。その人は、メインで他の単行本を何冊か持っていますが、校了明けなどの合間に「先生、そろそろお願いしますよ」とお願いに参上する形です。

 原稿の締め切りは設定されていない。その理由は、定期的な作業を行なうためには専任のスタッフが必要となるからだ。また、有料サービスとしての機能を備えていないからこそ、運営が可能だともいう。

新島: 読者からお金を頂くとなると、サーバーや認証など、全体的に質を高めなきゃいけません。当然、定期的に連載し、更新頻度を上げる必要があります。そうすると専任の担当が必要になる。ペイするのに今のアクセス数(20〜30万)では絶対たりない。

 アクセス数から計算すると、現在のユーザー数は2〜3万人と推測される。これを有料会員制にした場合、2,000〜3,000人に減少してしまうだろう。

新島: 無料だとコマーシャルっぽくなるので嫌だなと思います。ですから、もう少しコマーシャル色を薄めていきたい。例えば、フリーペーパーでも後ろの方には広告が掲載されていますよね。でも、前に乗っている情報がお金を出しても読みたいものだったら、持っていってもらえます。これは大事なことです。インターネットの情報は無料だし、検索すればだいたいのことを知ることができる。お金を取るのであったら、そこでしかできないことをきちっとやらないと、兼任で運営するのは不可能です。

 一方、このサービスを提供しているという事実そのものが、小学館にとって「紙媒体の『銀河鉄道999』は我々のものである」というブランディングに結びついているという。松本氏のところには、毎日のようにさまざまな企画が持ち込まれているという。

◆今後の展望◆

 小学館では、単行本のBODサービスも提供している。しかし、マンガそのものをWebで見られるものは、この『銀河鉄道999』だけだ。新島氏は、他の作家が『銀河鉄道999』と同様にインターネットでしか読めない新作の提供に賛同して欲しいと語る。

新島: 楽しみ方は模索中です。これがインターネットでの正しいやり方かどうかというのははっきりとしていません。むしろ、インターネットをプロモーションで使うというだけでは、逃げになっていると感じています。積極的にお金を取る方法が他にないのかもう一度、模索していきたい。例えば、他のサイトでインターネットアニメ版『銀河鉄道999』が始まりました。すると、このサービスにも人が増える。ユーザーにとって、『銀河鉄道999』はアニメが中心なんです。どこかに起爆剤となるものがあれば、ユーザーは必ず戻ってきますね。

 こうして戻ってきた読者の反応は、「連載が続いているなんて知らなかった」というものが多い。新島氏は、「『インターネット版を読みました。今度、単行本を買います』と続けて言われると、ちょっと嬉しいです」と語った。

●目指しているのはマンガ喫茶?〜Lycosコミック


http://comic.lycos.co.jp/
Lycosコミック

 ライコスジャパンが2002年4月30日から開始した有料コミック配信サービスが「Lycosコミック」だ。通常のマンガなら1冊100円〜150円、成人向けマンガなら500円で、48〜72時間読めるというもの。セラーテムテクノロジー社が提供する技術をベースに、ActiveXを使った専用ビューワーでサービスを提供している。

 この技術は、美術館にあるような大きな絵をアーカイブする技術だ。圧縮率が高いことと、1枚1枚の画像に鍵をかけ毎回サーバーへ問い合わせて鍵を開くという形式になっている。このため、インターネットに接続されたPCでないとサービスを利用することはできない。

 「Lycosコミック」のビジネス戦略について、バイスプレジデントでビジネス開発部シニアマネージャーの友田雄介氏と、同じくビジネス開発部の濱本享祐氏にお話を伺った。

◆著作権保護と、どこでも読めるサービスの両立◆

 マンガデータそのものは、ローカル環境にキャッシュもダウンロードもされないが、ファイル単位でやり取りしているため、何らかの形でファイルを保存される可能性は残されている。だが、ファイルを開くたびに認証を行なっているため、著作権は保護される仕組みだ。

友田: スクリーンキャプチャーで保存される可能性はあります。ですが1冊200ページ分もキャプチャーされる手間を考えれば、現実的には不可能に近いし、しょうがないと思います。関係者には、単行本を購入してそれをコピーするのと、全く変わらないということで、その部分は許してもらってます。

 ユーザー層は、男女比で6:4。インターネット人口とほぼ同じ構成だ。特徴的なのは購読時間で、一番多いのは週末のほかに、平日の日中にもアクセスが多いことだ。

濱本: 平日の読者の多くは、20代後半から30代前半の女性で、おそらく主婦層だと思います。

友田: 週末に固め読みって人は多いですよ。『美味しんぼ』全60巻を読破した人もいます(笑)。もちろん、オフィスでも読めます。むしろ、どこでも読めることに非常に気を使いました。

 現在の品揃えは、一般マンガが31タイトル/215冊、成人向けマンガが32タイトル/80冊となっている。基本的には、ライコスがプロダクションや出版社と直接交渉をしているが、一部サービスでは「電子書店パピレス」や「FRANKEN★コミックショップ」との提携で仕入れている。プロダクション単位では、石ノ森章太郎、さいとう・たかを、雁屋哲、池田理代子氏らと契約しており、今後10タイトル程度増える予定だ。

友田: 目標は1,000タイトル/1万冊です。目指しているものは、マンガ喫茶。ふらっと寄って、お金を払えばマンガが読める。マンガというのは、そもそもそういうものだと思ってます。マンガ喫茶の大きいところでは、だいたい2万冊くらいの品揃えですから、その半分ということですね。重要なのは、マンガ喫茶と違って、著作権者さんにお金をお支払いすること。

◆ユーザーの反応は上々、作家は千差万別、出版社は様子見◆

 サービス開始から10ヶ月程度経過したが、ユーザーの反響は上々だ。開始してからしばらくは、石ノ森作品しか提供していなかったが、『サイボーグ009』を中心に女性読者を獲得した。9月になってから、『ゴルゴ13』などの「さいとう・たかを特集」、10月には『ベルサイユのばら』、11月には『美味しんぼ』を一気に60巻と、矢継早にサービスを拡大し、作品の充実に比例するようにユーザー数も増やしてきている。

 気になったのは『美味しんぼ』の提供が全60巻となっている点だ。書店では82巻が販売されている。

友田: やはり最新のものは出してくれませんね。『美味しんぼ』でいうと60巻が出たのは2〜3年前くらいだと思いますが、それくらいの期間をあけてくれという出版社の要望ですね。
 どうしても旧作中心になってしまいます。みんなが知っていて、「昔雑誌で読んだけど、単行本でまとめて読んだことはなかったな」という要望を手軽にインターネットで利用できるニーズを掘り起こしたいと思ってます。
 逆に、出版社さんと競合するサービスだとは思ってません。補完関係です。Lycosコミックで1巻出して、150万部とか売れないですからね(笑)。

 一方、作家の反応は千差万別だという。巨匠になるほど、「自分の作品を広めたい」という傾向が強いそうだ。特に『美味しんぼ』の作者である雁屋氏は、新しいことに積極的に挑戦したいというタイプで、非常に協力的だそうだ。

友田: 今活躍している巨匠が参加していることで、他の巨匠にも「おお、いいじゃないか」と思われるようなアプローチをしたいですね。

◆「プレビュー」と「立ち読み」◆

濱本氏(左)と友田氏(右)

 Lycosコミックでは、2種類の無料サービスも提供している。有料コミックの一部が読める「プレビュー」と、1巻全部を読める「立ち読み」だ。

 プレビュー機能を使えば、その単行本を以前読んだことがあるかという確認ができる。プレビューできるのは最初の25ページで、ちょうど物語が盛り上がってきたところで終わることが多い。友田氏によれば、「マンガの構造はどれもよく似ていて、かなり研究しました」という。なお、アダルトコミックに関しては、最初の10ページ分となっている。

 一方、「立ち読み」で提供されているのは現時点で、『十六文』(石ノ森作品)と『怪盗シュガー』(さいとう作品)の2つ。マイナーな作品だが、続刊を購入する読者が多いという。

 スキャニングは単行本から行なっている。画質よりデータ量を重視しているそうで、1ページ(片面)で40KB程度、両面でも100KBはいかないようにしている。これまでに、「重い」とか「画質」に関するクレームはきたことがないそうだ

◆Lycosコミックは、有料サービスの1メニュー◆

 Lycosコミックは、Lycosポイントを使った有料サービスだ。1ポイント=1円で換金されるサービスだが、アンケートや資料請求などでポイントを稼ぐチャンスもある。利用者の中には、それらを駆使して1円も使わずにコミックの購読をしている人もいるそうだ。

友田: コミックというのは、男女問わず好きなもので、『美味しんぼ』のようなユニセックスで楽しめるものを中心に揃えていけば、ポイントのいい消費先になります。決して販促ツールではなく、純粋にコミックだけでビジネスになるように 作っています。オンライン販売に関しては、オンラインショップと提携することで提供しており、Lycos自身が本屋さんをやろうという気はまったくありません。

◆今後の展望◆

 最後に友田氏は、オンラインコミックを一つの業界としてとらえ、今後の方向性について語った。同氏は、「依然として出版社にはオンライン配信に対するアレルギーが残っていて、簡単には作品を出してくれない」と分析するが、「実際に売れれば出してくれると思いますので、きちんとした実績を積み重ねていく必要があります。オンラインコミック業界的に、いろいろな業者さんがいろいろな仕掛けを始めています。来年早々から盛り上がってくると予想しています」と前向きだ。

◎関連記事
■ライコス、有料課金サービスを開始〜まず漫画と株価情報からhttp://www.watch.impress.co.jp/internet/www/article/2002/0424/lycos.htm

●インターネットとマンガの可能性


 紙媒体というものは、インターネットなどのデジタルメディアでは決して代替できないパワーを持っている。それは「読んでいる実感」だ。「ページを繰る」という感覚は、決して「次」と書かれたボタンをクリックする感覚では実感できない。青林堂や小学館の試みは、最終的には紙媒体で勝負している。インターネットをツールとしてとらえた、1つの解答だろう。一方、マンガというものは基本的に娯楽だ。ちょっとした暇潰しという側面を持っている。ここに答えを求めたのは、マンガ喫茶であり、Lycosコミックだろう。

 冒頭にも述べたが、アプローチが異なる3者に共通していることは、「踏み出さなければ、何も始まらない」という考え方だ。取材を通じて、3者ともきわめて近い将来に前向きな手ごたえを掴んでいると感じた。インターネットとマンガは、「コンテンツ配信→不正コピーでファイル交換→著作権保護の強化→使い勝手の悪さ」という悪い連環に落ち込まず、良好な関係へと昇華してもらいたい。

(2002/12/16)

[Reported by okada-d@impress.co.jp]

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