【Internet Weeek 2002レポート】
パネルディスカッション「家庭IPv6ネットワークおよびIPv6家電の展望」Internet Weeek 2002と併催されている「Global IPv6 Summit in Japan 2002」では、「家庭IPv6ネットワークおよびIPv6家電の進捗と今後の展望」と題したパネルディスカッションが行なわれた。パネリストは三洋電機の湯村武氏、リコーの西田明宏氏、マイクロソフトの及川卓也氏、NTTコミュニケーションズ(NTTコム)の山崎俊之氏。パネルディスカッションのモデレータはインターネットイニシアティブ(IIJ)の山本和彦氏が務めた。
IIJの山本氏は、まずはじめにデイスカッションの対象となる家庭ネットワークを定義。家庭内ネットワークと、外部から家庭ネットワークにつながるネットワークの2つに絞って議論を進めていくとした。また、ネットワークに機器を接続することで享受できるメリットについてはパネリストのプレゼンテーションに任せるとした上で、ネットワークがIPv6であることの必然性について「解答を1つ示す」とコメント。家庭内ネットワークに限ればIPv4と大差はないが、外から家庭内の装置を操作するという面ではアドレスの制限から、家庭からインターネットという一方向の通信しか利用できないIPv4に対し、双方向の通信が可能である点がIPv6のメリットであると語った。 三洋電機の湯村氏は、ネット対応家電について「昨年から比べるとルータ内蔵HDDレコーダ、インターネット対応PDPなどネット家電が確実に浸透してきており、今年はネット家電元年と言える」とし、IPv6家電が普及するための大きな一歩であると説明した。また、三洋電機のネット家電の取り組みとして遠隔地から撮影、画像の閲覧ができるIPv6対応デジタルカメラと撮影した画像をすぐにサーバーへ送信できる無線LAN対応デジタルカメラのデモを実演。無線LAN対応デジタルカメラについては、IPv6対応も予定しているとした。 続いてリコーの西田氏もIPv6対応プリンタを紹介。ただしこれはあくまでオフィス向けのプリンタであり、個人向けには高価すぎるという。数千円から数万円の価格帯である家庭用プリンタのような家庭用周辺機器はコスト要件が厳しく、ネットワーク化が難しいと現状を説明。また、プリンタのような周辺機器はそのほとんどががPC接続を前提としており、「ネットワーク直結のメリットがいまのところ希薄である」と周辺機器におけるネットワーク対応化の難しさを語った。 さらに西田氏はインターフェイスの種類の多さについても言及。以前まではパラレルやシリアルが主流だったが、現在ではUSBやIEEE 1394などが登場、新しい主流となっている。コスト面では多くのインターフェイスに対応することは難しい上に、論理インターフェイスで言えば周辺機器はIPv4ですらないものも多く、ここでもIP化するメリットを提示できていないとした。 ここでネットワーク提供側のマイクロソフトからデバイス提供側に対して質問が投げかけられた。マイクロソフトの及川氏は「一般消費者の立場」とした上で、「ネット家電元年という言葉はここ数年聞かれていているが、何が家電製品にIPv6普及の障害になっているのか?」と質問。これに対して三洋電機の湯村氏は「商品によってスタンスが違い、BSチューナーなどインターネットを通じてコンテンツ受信するものに関してはすでにスタートを切っているだろう」という考えを明らかにした一方、「白物家電ではコストと、コストに見合ったメリットを提供できるかが重要だ」とコメントした。 マイクロソフトの及川氏は家庭内ネットワーク内のサービス探索として、同社が推進するUniversal Plug and Play(UPnP)についてプレゼンテーションを行なった。ホームネットワークの現実は複雑であり、ネットワーク化しなくてもUSBやメモリで事足りる、ネットワーク化する場合のインターフェイスなどさまざまな問題を抱えているという。これについて及川氏は「複雑なネットワークをいかに単純化して見せるか」が重要であり、インターフェイスに関わらず家庭内の機器がネットワークで構成されていることが第1に必要であるとした。その接続されたネットワーク内で、機器がどこにあって何をするのかという命令を司るのがUPnPであるという。 及川氏はUPnPを「デバイスをパソコンに接続すればその場で使えるというPlug and Playをネットワークの世界でも実現するもの」と説明、家庭内のどこからでも簡単にネットワーク接続できる環境をUPnPで提供できるとした。例として及川氏はUPnP対応デジタルカメラを挙げ、UPnPを利用すればカメラ自身のアドレス設定など追加操作をすることなくホームネットワークに接続、撮影画像を印刷可能であり、これをUPnPのホームネットワークの特徴として強調した。 NTTコムの山崎氏は、IPv6でのアクセスについて「昨年から比べるといい感じに進んでいる」とコメント、例としてNTTコムとアッカ・ネットワークが行なっているADSLでのIPv6実験やNTT東日本がFTTHサービスのBフレッツで先日開始したIPv6の試験サービスなどを挙げた。外部からのホームネットワークアクセスについては、家庭内のすべての端末にセキュリティ環境を構築する「金庫モデル」、家庭内ネットワークの入口となるゲートウェイのみにセキュリティ環境を構築、ログイン後は自由となる玄関モデル」という2種類のモデルを説明。リコーの西田氏が「デバイス提供側からするとすべての機器にセキュリティ環境が必要になる金庫モデルは厳しい」とコメントすると、「どちらのサービスも一長一短であり、最終的には両者を合わせたハイブリッドモデルになるのではないか」との考えを示した。 さらにリコーの西田氏が「忘年会の写真だけを同僚に見せたいなどという場合、鍵情報などのやり取りが必要になると思うが、どういう形で実現できるのか?」と質問。マイクロソフトの及川氏は「すべてをネットワークやIPv6で考える必要はなく、サービスやアプリケーションで認証する方法もある」とコメントし、NTTコムの山崎氏は、「知人同士ならネットワーク以外にも(例えば名刺交換のように)物理的な鍵情報交換というやり方もあるのではないか」との考えを披露した。 パネリスト全員のプレゼンテーションが終了したのち、IIJの山本氏は、「デバイスをネットワークにつなげるということは、面白そうだしメリットもありそうだという空気ができつつある」と現状をまとめ、「鍵交換などセキュリティ面をしっかりと考えていけばIPv6も明るい未来が待っているだろう」とパネルディスカッションを締めくくった。 (2002/12/19) [Reported by 甲斐 祐樹] |
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