【業界動向】
~無線タグを埋め込んだマイクロチップによる“次世代バーコード”オートIDセンター日本拠点、慶應SFC内に開設■URL
国際的非営利組織のオートIDセンターは、慶應大学SFC内にアジアで初の研究拠点を設立。22日に発表会を開催した。産官学での協力が必要なサプライチェーンマネージメントでの実用化技術の開発を目指しており、日本国内でも広く参加企業を募っていく。 オートIDセンターは、グローバルなサプライチェーン上における製品の識別とトラッキングを可能にする、国際的なネットワークシステムの開発に向けたインフラ構築と標準化を目的として1999年にマサチューセッツ工科大学(MIT)内に設立された。現在は英国ケンブリッジ大学とオーストラリアのアデレード大学に姉妹研究拠点を持ち、今回日本にアジア初の研究拠点が開設されるもの。今後、中国にも同様の姉妹拠点を置く計画であるという。 日本の研究拠点のリードリサーチャーとして招聘された村井純慶應大学教授は、SCM分野から実証実験などを通じて実用化を勧めていくことになるが「超高齢化社会をこれから迎えることになる日本では、介護などの分野でも有用」として、SCM分野のみでなく、広く実用化が可能な技術であり、ユビキタス・コンピューティングの実現にも活用できると述べた。 オートIDは具体的には、EPC(電子製品コード)を無線タグのマイクロチップに保存する形で供給される。EPCはバーコードのように製造者や製品、バージョン、シリアル番号などを認識する数字に区分されているが、個々の製品の固有な部分を認識するための特別な数字枠を持っている点がバーコードと異なる。マイクロチップに保存されるのはEPC情報のみで、保存情報を限定することで無線タグの低価格化を実現できるという。 SCM(Supply Chain Management)の分野では特にコストが重要となるが、現在チップは1平方ミリあたり4セント、ひとつのマイクロチップが単価10~15セント程度で提供できるところまで来たという。ただし、生産コストは量産されれば下がるため、将来的にいくらになるかは現在の段階では言えないという。また、アルミ缶などのように金属製の製品もあるため、材質と電波特性とを鑑みて、マイクロチップで利用する無線周波数を変える必要があるという。 なお、オートIDでは製品名だけではなく、個別の製品の識別も可能なため、例えばクレジットカードを使ってオートIDの付与された製品を購入した場合には、販売店では、クレジットカードの番号、個人名、購入した製品のシリアル番号など多くの情報を知ることが技術的には可能となる。 個人情報保護という面について、オートIDセンターのエグゼグティブ・ディレクター兼協同設立者のケビン・アシュトン氏は「個人情報の保護は重要な点で、そこをクリアしなければ実用化はできない」とした上で「まず、チップが入っていることが消費者に明示される必要がある。また、どこにチップのリーダーがあり、どの情報を読んでいるかをユーザーが知ることができなくてはならない」と述べ、実用化には運用面でのルール化も必要であることを示した。 また、チップそのものについては「電波が弱く数メートル以上離れると読み取ることは難しく、障害物があっても読み取れない。チップをオフにして切る機能を備えているため、購入後チップを切ることもできる」などの配慮がなされていることを紹介。技術開発中ということもあり、最終的にどういう形で個人情報保護がなされるかは今後の課題でもあが、個人情報の保護と、ネットワークと無線タグを埋め込んだマイクロチップによる利便性の提供は両立できるとの考えを示した。 (2003/1/22) [Reported by 工藤ひろえ] |
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