【実証実験】
JASRACとRIAJ、電子透かしを入れた音楽ファイルの有効性を確認
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左から)田中純一RIAJ事務局長、加藤衛JASRAC常務理事、菅原瑞夫JASRAC送信部長、野方英樹JASARACネットワーク課長 |
社団法人日本音楽著作権協会(JASRAC)と社団法人日本レコード協会(RIAJ)は22日、音楽著作物に埋め込んだ電子透かしの有効性に関する実証実験の結果を報告した。
著作権管理情報を電子透かしの形で音源に組み込むことのメリットとして、音楽著作物の利用動向が把握できるようになるほか、訴訟において楽曲の同一性を立件することが容易になることが挙げられる。従来、電子透かしが音質に与える影響などの検証は行なわれていたが、著作権管理団体とレコード協会が共同で、有効性確認実験を行なったのは世界でも珍しい試みだ。
●MP3化されたファイルでも電子透かしは有効
JASRAC主体の実験では、電子透かしを施したCD音源をMP3化し、URL非公開の2サイト上にアップロードした。次に、JASRACが2000年から運用している違法著作物データ監視システム「J-MUSE」に、電子透かしデコーダーを組み込み、自動巡回によって情報を検出できるかどうかを確認した。2002年12月中に2週間実施された実験の結果、検出率は100%だったという。なお、著作権情報には、著作権協会国際連合(CISAC)で定められた世界共通の作品コード「ISWC」を利用。また、電子透かしには、IBM、エム研、マークエニー・ジャパン、および日本ビクターの技術を、3曲ずつに採用した。
JASRACによると、「J-MUSE」は1カ月あたり540万件の音楽関連ファイル(HTML、JPEG、GIF、MP3、MIDI)をデータベース化している。違法アップロードサイトを6,000件ほど収集しており、そのうちいくつかのサイトについてはISP側に通知し、約4,000ファイルを公開停止させたという。また、歌詞などのテキストデータにも対応するための開発を終えており、今後実装していく方針だ。
JASRACの加藤衛常務理事は、「これで終わりではなく、これからのきっかけになる世界初の実験。今後は、私的複製の範囲について議論する必要があるが、それを超えるような違法行為については、『J-MUSE』で追跡可能という抑止効果が期待される」とコメントした。
●放送電波に乗せられた楽曲でも電子透かしは有効
一方、RIAJ主体の実験では、エフエム東京とエフエム大阪の放送でパワープレイされた6楽曲に電子透かしを埋め込み、受信した音声から電子透かしを読み取ることができるかを検証した。電子透かし情報には固有のIDを振っておき、受信した音声から抽出したIDと著作権管理情報データベースを付き合わせる形で検証が行なわれた。実験には、米Veranceが開発した放送音源把握システム「ConfirMedia」が利用されている。
2002年7月から行なわれた実験の結果、生番組、録音番組ともに100%の透かし検出率を記録した。ただし、1曲だけ該当楽曲にも関わらず電子透かし情報が読み取れないケースがあったが、調査の結果、アーティスト本人が持ち込んだ透かし処理をしていないCDをかけたためだったことが判明した。ラジオ放送では、DJのナレーションが楽曲にかぶったり、トークのBGMとして利用されるケースが多いが、このようなケースでも「満足の得られる結果」(RIAJ田中純一事務局長)だったという。
今回の実験では、受信アンテナ施設から楽曲情報データベースまでの間のネットワークにVPNを利用したが、将来的には通常のインターネットでのセキュアな伝送に対応したいという。
実証実験の |
検出した透かし 情報の流れ |
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(2003/1/22)
[Reported by okada-d@impress.co.jp]