【ソフトウェア】
マイクロソフト、Windows Media 9日本語版を公開
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マイクロソフト バイスプレジデントの古川享氏 |
マイクロソフトは1月29日から提供を開始するWindows Media 9シリーズ日本語版に合わせ、東京の赤坂ACTシアターで製品発表イベント「Windows Media 9シリーズ Digital Media Day」を開催した。基調講演ではマイクロソフトのバイスプレジデントである古川享氏が、Windows Media 9シリーズの商品説明やコンテンツの取り組みなどについて紹介した。
古川氏はまずWindows Media 9の特徴として、メディア再生能力の向上を挙げた。オーディオ機器やテレビなどはボタンを押した瞬間に映像や音楽が始まるのに対し、ネットワークを介したコンテンツは再生までにある程度の時間を要するため、早送りや巻き戻しといった機能を瞬時に利用することはできなかった。Windows Media 9はこの時間を劇的に短縮することで、ネットワークを使用しているかどうかを意識せず、自然な形で音楽や映像を楽しむことができるという。
古川氏はインターネット上で初めて5.1chサラウンドに対応した点もコメント、コンテンツの品質に対して高い意識を持っているユーザーに対しても納得してもらえるレベルであると語った。また、コンテンツ配信側からの利用面でも、試聴期間や対象ユーザーなど、著作権保護機能を自由に設定できるため、安心してコンテンツを配信できるプラットフォームであるという。
マーケティング部 シニアプロダクトマネージャの河野万邦氏 |
続いてマイクロソフト マーケティング担当の河野万邦氏が登場、Windows Media 9シリーズの特徴的な機能について説明した。河野氏によれば、今回もっとも力を入れているのがコンテンツ再生の高速化であり、再生ボタンをクリックした時の起動スピードは従来より30%以上向上しているという。また、再生機能についても楽曲をアルバムごと、アーティストごとに再生できるほか、試聴する頻度の高い楽曲を自動的にお気に入り登録するといった機能も搭載しているという。
Windows Media 9シリーズはナローバンド環境のユーザーに対しても配慮。従来のフレームに擬似フレームを挿入して補完を行なうことで滑らかな画面でコンテンツを再生できるVideo Smoothing機能を紹介した。さらにプレイヤーの中でHTMLやFLASHが表示可能になったため、従来より表現の幅が広がったという。マイクロソフトはこの機能を生かし、Windows Media Player 9のメニュー内から会員制のコンテンツサービスにアクセスできる「プレミアムサービス」を発表。現在のところWOWOW、エイベックス、ショウタイム、スカイパーフェクト・コミュニケーションズの4社がサービスを予定しているという。
コンテンツ提供側向けの機能としては、「Personalized Streaming」を紹介。これはユーザーのプロフィールに合わせてコンテンツの内容を変化させる機能で、イベント会場ではユーザーの性別や年代によって、同じコンテンツを視聴しながらユーザーごとに異なるCMを配信するというデモが行なわれた。
Video Smoothingのデモ。10fpsの画像(左側)に擬似フレームを挿入して比較している | Personalized Streamingのデモ。性別や年代によって同じ番組を視聴しているユーザーにそれぞれ異なるCMを配信 |
スペシャルゲストとして登場した音楽家の久石譲氏(左) |
河野氏の機能説明の後は古川氏が再び登場。今回のWindows Media 9について、「単に映像や音楽を楽しんでもらうだけでなく、映像や音楽のプロに参画してもらいたい」とコメント、米MicroSoftでビル・ゲイツがWindows Media 9 Seriesベータ版について基調講演を行なった際、ゲストとしてジェームズ・キャメロンが登場したという話を披露した。古川氏は「ハリウッドを含めた映像・音楽の第一人者が参加してくれたことは大きな意義である」と述べ、日本語版の公開に合わせたスペシャルゲストとして音楽家の久石譲氏を舞台に招き、対談を行なった。
古川氏の「5.1chサラウンドなど音楽環境が向上したことで作曲側として何か違いがあるか」という質問に対して久石氏は、「音楽でもっとも伝えたいものは現場の空気感」とコメント、ステレオなどでは表現しきれなかったニュアンスが、5.1chなど立体的な音が出せる環境であれば伝えやすくなると語った。
古川氏は久石氏と酒を交わした際に久石氏が「コンサートに来てくれるお客には、“きっとこうだろうな”という予想を上回らなければそこで満足して終わってしまう」と語ったというエピソードを紹介。久石氏の「物を作るということは点ではなく線でなければならない」というコメントを受け、「技術の側からも、プロに“なぜこんなことができないのか?”と言われないように品質を追求していきたい」とし、「(Windows Media)10になるか11になるかはわからないけれど」と冗談めかしながら「プロの指摘を受けながらより素晴らしいものを作っていきたい」と意欲を示した。
Windows Media 9を取り巻くマイクロソフトの取り組みについても古川氏は説明。再生デバイスに合わせてインターフェイスを自由に変化させられるパソコンとAVの共通規格「HighM.A.T.」や、HighM.A.T.に対応した画像作成ソフト「Windows ムービー メーカー 2」などを説明した。また、CDの複製防止技術についても、家電の再生領域とパソコンの再生領域を分割し、パソコンの再生領域ではコピー回数の制限や時間制限などを設定できる「Windows Media Data Session」を紹介。HighM.A.T.と合わせて、「コピーをさせないというプロテクトではなく、条件によっては自由にデータを使ってもらうという姿勢によって、新たなビジネスにつながっていくことを期待している」と語った。
HighM.A.Tのサービスイメージ | Windows Media Data Sessionのサービスイメージ |
最後に古川氏は、「映像や音楽の世界において、“パソコンはまだ稚拙であり、料金を徴収できるレベルのものではない”という雰囲気があったが、今回のWindows Media 9の公開にあたって多くのプロが“ビジネスになる”と判断して参加してもらったことがありがたい」とコメント。「Windows Media 9の公開がさらにハードやブロードバンドの普及につながれば」と今後の意気込みを語った。
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(AV Watch)
(2003/1/29)
[Reported by 甲斐 祐樹]