【eラーニング】
東大他、eラーニング実験の成果発表
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exCampusで利用できる機能 |
「iii Online」は東京大学初のeラーニングサイトで、2002年4月に4教科の講義を対象とした実用実験を開始。情報学環の大学院生に加え、一般からの講義視聴も可能な形で展開した。2月20日までに107万ヒット、のべ4万6,347人の利用(うち93%は学外からのアクセス)と、5474時間の映像配信を行なったという。実験では特に社会人大学院生から高い評価を得たほか、講師にとっても、授業内容やスタイルの再考を図る機会になったという。その一方で、ある意味で通常の講義よりも持続しにくい面をフォローするノウハウや、掲示板を用いた共同研究の効果的な方法などを研究していく必要があるとしている。
原島博情報学環長は「iii Onlineにはeラーニングで学問をオープンにしていこうという発想がある。eラーニングによって講義の特徴があぶり出される面があり、講義スタイルや内容の見直しなど、講義の本質に与える影響も大きい」と、今回の実験を振り返った。実験そのものは今後も継続する方向で、2003年度も数本の講義をiii Onlineで展開する予定という。なお東大のeラーニング対応については、「国立大の法人化の動きを含めて、どういう展開をするかはまだ決まっていない部分が大きい」(原島氏)としている。
この「iii Online」で利用していたeラーニングシステムは、メディア教育開発センターで開発・運用していたもので、他にも国立大3大学、13授業で利用している。同センターでは、今回、このシステムを「exCampus」と名づけ、ソースコードの無償公開を行なうことを表明した。これまで同システムはWindowsで運用していたが、ソースコード公開のために今回Linux用に書き直したという。
「exCampus」を用いることで、大学側は講義の履修登録や配信、掲示板機能、レポート提出などの機能を提供できる。基本的には講義の配信と管理を主体とし、教材を作成するオーサリング機能は持っていない。また大学向けのeラーニングシステムではあるが、大学以外が利用しても差し支えはなく、再配布や営利目的の利用も可能としている。
「exCampus」プロジェクトを推進したメディア教育開発センターの中原淳氏は、「iii Onlineの経験から、なるべくシンプルで、大学の状況などに合わせて自由にカスタマイズできること、また講義の登録や履修管理などの管理操作はすべてWebブラウザーからできることをコンセプトに開発しなおした。Linux上で稼動し、最低限マシン1台から実行できるのが特徴」と、特長を説明した。配布はサイト「exCampus.org」より4月1日から開始する予定だ。サイトではソースコード配布に加え、iii Onlineを始めとする活用事例や構築例などを紹介。同システムを使ったeラーニング運用ノウハウなども伝えることで、eラーニングの活性化を図る。
メディア教育開発センター所長の坂元昂氏は、「国の費用で研究しているもので、かつ教育に大いに役立つという観点から、ソースコードの無償公開となった。コンテンツ作成については、今後eラーニング教材のオーサリングツールの無償公開や、教育素材のデータベース化を推進するといったことでの支援を検討しているほか、大学間で共通の教材を作るといった動きもある。また富山県などで活発な“市民塾”という、市民発信型の講座があるが、こうしたものを今後eラーニングに対応させることも考えている」と語った。
東京大学の原島情報学環長 | メディア教育開発センターの坂元所長 |
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(2003/2/21)
[Reported by aoki-m@impress.co.jp]