【イベントレポート】
VoIP推進協議会講演「IP電話を利用した新しいビジネスと課題」■URL
IP.net JAPAN 2003のコンファレンス「IP電話市場の最新トレンド」では、VoIP推進協議会の品質WG主査を務める三菱電機情報ネットワークの大庭雅敦電話サービス部長が、「050ビジネス -IP電話を利用した新しいビジネスと課題-」と題して講演を行なった。 VoIP推進協議会は2001年4月23日に設立され、年に4回開催される全体会合、月1回の企画会議を中心とし、具体的な検討事項についてはワーキンググループ(WG)を設けて活動を進めている。現在のところはVoIPの品質における課題を検討する品質WG、VoIP機器の相互接続性を検討する相互接続WGといったWGを設置しており、そのほか必要な課題の解決にはアドホック検討WGを設けて活動している。 講演を行なった大庭氏が主査を務める品質WGでは、さらにテーマごとにサブワーキンググループ(SWG)を設置している。「IP電話の総合品質とIP電話番号取得のためのガイドライン作成SWG」では、2002年9月にガイドラインを策定。第一種電気通信事業者とは違い、総務省への申請手続きなどに不慣れな第二種電気通信事業者を対象とし、申請書のひな型というレベルから細かく品質基準や手続きについて解説しており、事業者からも高い評価を得ているという。このSWGは2002年10月に活動を終了、て2002年11月には「ネットワーク相互接続SWG」を設置し、VoIPネットワークを相互接続する際の技術的問題や制度的問題について検討を重ねている。 IP電話サービスの今後の展望について大庭氏は、2003年1月に総務省委託調査として実施したIP電話の動向に関するアンケート結果を紹介した。この調査はVoIP推進協議会に参加する企業のうち、通信事業者、機器メーカーなどを中心とした70社を対象として実施されたもので、講演で紹介する資料は4月の全体会議で発表予定の資料から抜粋した速報値だという。この調査では2004年度におけるIP電話関連ビジネスの全売上高は約2.8倍まで伸びると予測されており、中でもIP電話サービス自体は約6倍近い伸びを期待されているという。大庭氏は情報通信ネットワーク産業協会が行なったVoIP機器市場の中期予測を紹介、この調査でも2年後に3.1倍の伸びを予測していることから、「IP電話ビジネスは業界全体が期待している分野である」と位置づけた。
しかしながら「050」番号を利用したIP電話サービスにも様々な課題があるという。国内一律で通話できる料金制度は現在のIP電話サービスのメリットの1つだが、これを実現するためには都道府県を中心として全国約50カ所に用意されたNTTのZC(ゾーンセンター)へ接続するネットワークを自前で構築する必要がある。もちろん1カ所のZCに接続するだけでも一般加入電話への通話サービスは提供できるものの、遠距離への通話にはNTTの接続料が発生するため、全国一律料金制というサービスが難しくなるという。 また、自前でIP電話網を構築、一般加入電話についてはすでにNTTのZCへのネットワークを構築している他社のIP電話ネットワークに接続するという方法も考えられるが、大庭氏はコスト面ではメリットが大きい一方で、接続すべきIP電話網がオープンでなければならない、NTT交換網への接続料の清算方法が確立されなければならないという問題点を指摘した。その点では再販されるIP電話サービスを利用するのが一番手軽ではあるが、こちらもVoIPネットワークを持つ事業者の判断に左右される側面があると指摘した。 VoIP推進協議会が今後取り組んでいく課題としては、「第一種電気通信事業者との相互接続協議」が第1の優先事項として挙げられるという。また、IP電話の品質基準となるR値の測定方法、ユーザーへの品質表示方法の具体化なども取り組みつつ、IP電話サービスのビジネスモデルのビジョン策定なども行なっていくとした。 (2003/2/26) [Reported by 甲斐 祐樹] |
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