【業界動向】
ジャーナリストの携帯・ネット「監視」可能 ~独連邦憲法裁判所判決■URL 独連邦憲法裁判所は12日(独時間)、重い犯罪に関連すると見なされる場合、ジャーナリストの携帯電話の通信記録を当局が入手することは合法であると判示していたことが明らかになった。この裁判は、独大手放送局のZDFおよび大手メディアのSternの労働者団体が当局に対して提訴していたもの。ただし、通信記録を入手する権限は、当局に対して包括的に与えられるのではなく、個々の案件毎に判断された後にデータ入手を行なうことができるとされた。 問題となったジャーナリストの行為は、ある重要犯罪の容疑者との電話によるコンタクト行為。ZDFの2人のジャーナリストと、Sternの1人のジャーナリストが犯罪容疑者とコンタクトを取っていたということを当局が察知し、そのコンタクトに関する通信記録等のデータを電話会社に照会し、データを得ていた。テレビ放送が主のZDFの場合、人気番組Frontalの中で、あるクレジット詐欺犯罪で10億ユーロ単位の損害を与えている容疑者(後に米国で逮捕)とのコンタクトや、他の経済犯罪について放映されており、当局がその取材活動から情報を得ようとしたもの。もう一方の事件は、テロ事件の取材に関連するもので、いずれのケースでも、当局は「捜査活動に必要」と主張した。 裁判では、報道の自由あるいはジャーナリストの保護と、捜査活動との均衡が考慮された。対象となった事件の場合、テロ事件は死亡者が出ており、経済関連の事件も損害額が莫大であったことが、ジャーナリストの保護に勝ると判示された理由のようだ。ただし、対象となる犯罪の重要度についての定義はなされなかったため、今後個々のケースにゆだねられることになる。いずれにせよ、重大な殺人事件や巨額の損害を与えている案件などでは対象になることが十分にあるという判決となった。判決で入手が認められた情報としては、携帯電話の通信開始・終了時間、電話番号、持ち主の一般情報など、個人の特定が可能な情報も含まれている。 社会のデジタル化に伴う影響についても裁判で少し触れられた。携帯電話での通信はデジタル化しているため、通信の外観的情報(通信開始・終了時間)だけでなく、通話内容も記録・入手が容易だ。また、インターネットを経由して取材活動をすることが現在では日常茶飯事となっている。こうした中で今回の判決は、携帯電話の通信記録のみならず、ネット自体の「監視」をも認めかねない内容だとして、ジャーナリストの間では一定の歯止めをかけるべきとの反応が出ている。 (2003/3/18) [Reported by Gana Hiyoshi] |
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