【実証実験】
コンシューマー市場からIPv6の普及を狙うSCN「コクーン」で“プッシュ配信”ビジネスの可能性を検証■URL
最近ではIPv6によるインターネット接続サービスを提供するISPも珍しくなくなったが、まだまだネットワーク開発者向けの特殊なサービスの意味あいが大きい。そんななか、ソニーとソニーコミュニケーションネットワーク(SCN)が取り組むIPv6接続の実証実験は、コンシューマー市場でIPv6によるビジネスモデルを確立しようという狙いがある。 すでに本誌でもお伝えしたが、この実験は、ソニーの「コクーン・チャンネルサーバーCSV-E77」とSCNの「ブロードバンドAVルータHN-RT1」を利用し、インターネット経由で配信した映像コンテンツを家庭用テレビなどで視聴できるようにするものだ。SCNの運営するISP「So-net」のADSL接続会員から100名のモニターを募集し、今年5月から2カ月間にわたって行なわれる。 コクーンにはもともと、あらかじめキーワードを設定しておくことで、地上波テレビ放送やBS放送の番組から関連するものを自動的に録画してくれるパーソナライズ機能が搭載されているが、実験ではこれに加えて、インターネット経由で映像コンテンツを“プッシュ配信”してくれるわけだ。数百種類のコンテンツをSo-netの実験用FTPサーバーに用意し、モニター登録時に設定した嗜好ジャンルに応じて、この中から毎日、数種類のコンテンツを配信するという。 配信・蓄積されたコンテンツは、同じくコクーンに録画されているテレビ番組と同列にリスト表示され、インフラの違いを意識することなく視聴できる。FTPサーバーに用意されるデータは実際にコクーンでエンコードされたMPEG-2 TS形式のもので、コンテンツにより3Mbps、6Mbps、9Mbpsのビットレートで提供。コクーンに録画されたテレビ番組の映像と同等のクオリティになるわけだ。 モニターに貸し出されるCSV-E77とHN-RT1は、IPv6を実装した特別仕様。実際にそれぞれIPv6のグローバルアドレスが割り当てられ、実験用のIPv6ネットワークとトンネリング接続される。実験では、これらネットワークや端末などの技術的な検証ももちろん含まれるが、「IPv6のネットワークを通じてワントゥーワンでコンテンツをプッシュ配信した場合に、ユーザーがどういうふるまいをするか?」(SCNビジネス開発&グループアライアンス担当執行役員の平林信隆氏)を探ることも大きな目的だ。 例えば、IPv6のグローバルアドレスにより端末が特定できるということで、ハードディスクに蓄積されたコンテンツのオンデマンド視聴率も把握できるはずだ。また、実験には電通がコンテンツ提供で参加することになっており、CM映像の配信も行なうという。例えば、「モー娘。」が好きなユーザーに彼女たちが出演しているポッキーのCMを配信すれば、コンテンツとしても受け入れられるのではないかとしている。CMが飛ばされる傾向にあるというハードディスクレコーダーで、CMビジネスの可能性を検証する。 また、今回の実験では著作権管理や課金などのシステムについては検証対象となっていないものの、「IPv6の非常にセキュアなネット」(平林氏)で配信することで、不正コピーへの懸念からネット配信に消極的な映像コンテンツフォルダーの取り込みも期待できるかもしれない。そうなれば、「視聴者のふるまい」が把握できるIPv6によるコンテンツ配信は、ビジネスにつながる可能性は大きい。 SCNでは、「IPv6が普及しないのは、家電に実装されていないことや、コンシューマー系のISPが対応しないのが原因。SCNとソニーが組んで実証実験を行なうことで、IPv6を実装したビジネスモデルを作りたい」としている。
◎関連記事 (2003/3/20) [Reported by nagasawa@impress.co.jp] |
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