【業界動向/新技術】
日本テレコム、光制御技術を用いた
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GMPLS波長パスサービスのモデル図 |
従来のIP-VPNなどのサービスでは、ユーザー企業から帯域追加などの依頼があった場合、ネットワークオペレーター(通信会社)がユーザー側の接続先や経路・帯域設定を行ない、周辺機器を提供してサービスを行なってきた。しかしこの方法だと、依頼からサービス開始までに、最低でも1~2週間の時間がかかっていたという。
今回開発したプロトタイプでは、ネットワークオペレーターを介在せずに、ユーザー企業がネットワーク経路・帯域を設定可能にし、またその設定に即座に対応できる波長サービス(光ネットワークサービス)を提供。これにより、常時大容量のネットワーク帯域契約を行なわなくても、必要な時、必要なだけの通信が可能になるという。日本テレコムによれば、こうしたアプローチは世界初の試みという。
この開発で中核となったのは、IETFで標準化が進められている技術「GMPLS」(Generalized Multi-Protocol Label Switchingの略)だ。GMPLSは光ネットワーク上の信号伝達技術で、光信号のままデータのルーティングを行なうことで、ネットワーク性能を損なわずにデータの送受信が可能という。この技術によって、通信機器で自立分散的に最適な経路設定等を行なうことができ、従来のネットワークに比べて、大幅な運用保守コストの低減化が期待できるという。GMPLSはまだ実装機器が出荷されていないため、今回のプロトタイプでは日本テレコムが独自でGMPLSのソフトウェアを開発し、光スイッチなどの機器に搭載して開発を行なったという。
また基幹通信装置として全光型光クロスコネクト(Photonic Cross Connect、光スイッチによる交換機)を利用し、ユーザー側の希望する回線速度やプロトコルへの柔軟な対応が可能になったいう。さらにユーザー側の設定はWebブラウザーから行なえる点に加え、顔の形状や指紋によるバイオメトリクス認証、およびPKI認証を採用することで、セキュリティ強化を図っている。
「GMPLS波長パスサービス」のプロトタイプでは、一定の時間だけ大容量のデータ送受信に対応した帯域を確保する「スケジュールド波長サービス」と、即時の帯域増減に対応する「オンデマンド波長サービス」の2種を利用例として提示した。例えば大容量データのバックアップやCADデータの多地点での相互利用などの用途が考えられるという。
日本テレコムでは、同社の通信事業者としてのノウハウを活かして今回の開発を行なったといい、従来のIP-VPNや広域LANなどではカバーできない部分への新たな高速サービスとして、こうした光を用いたサービスを展開する方向という。なお「GMPLS波長パスサービス」については、ベンダーによる機器への実装や標準化を踏まえた上で、実用化は来年度以降になるとしている。
(2003/3/24)
[Reported by aoki-m@impress.co.jp]