【インタビュー】
W3Cの技術スタッフに聞くWeb標準化動向(3)Webサイトにおける“国際化”への道のり
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W3Cで国際化活動を担当するMartin Duerst氏(左)。慶応義塾大学藤沢キャンパスで研究していたこともあり、日本語は堪能だ |
「ブラウザーに世界中の文字がきちんと表示できない。言語の問題以前に、まずこれを解決するのが国際化の上で重要なステップです。アフリカやミャンマーなど長い間戦禍に巻き込まれた地域では、現地の文字がブラウザーに表示できません。日本でも、インターネットを使う上で“文字化け”という現象にしばしば出くわします。これらを解決するためには、やはりUnicodeが必要でしょう。UTF-8(Universal character set Transformation Format-8)をまずは普及させたい。日本で需要の高い縦書きや波線、破線など、バリエーション豊かなアンダーラインをスペックに盛り込むことにも取り組んでいます。その後に来る言語の問題においては自動翻訳の技術が有望ですが、現状の機械翻訳の精度ではまだまだですね。」
●Web上のサービスでも国際化は必然ショッピング、オークション、ネットワークストレージ、ASPなど、多様化するWeb上のサービスも標準化と国際化の重要なターゲットだ。ドル、円、ユーロ、ポンドといった通貨の表示形式の問題や、日付の書式などさまざまな問題がある。W3Cは、このような問題について、記述言語に機能を実装する方法と、ガイドラインのようなものでわかりやすい表記を一般化する方法の両面で取り組んでいく方針だ。
「もはや『コンピュータ同士が問題なく通信できればいい』という時代ではありません。コンピュータは人間が使うものです。日付の書き方にしても、『2003年4月5日』を表わすのに『03/04/05』や『05/04/03』など国によって違います。インターネットにつながるさまざまな端末が認識できる日付の書式を、どのようにしてわかりやすい書式へ変換するか。通貨の単位でも同じです。こういったことについてガイドラインもしくは仕様側でなんらかの機能の追加は必要でしょう。世界中どこででもWebページは読めます。月の表記を数字ではなく名称で書いたり、表現に冗長性を持たせようとする動きは必然だと思います。」
●CSSの運用は国際化の側面からも重要現状のHTMLおよびWebページデザインに起こっている変化も、同氏は指摘する。国際化には、アラビア語やヘブライ語など右から左へと記述する言語への対応も必要だ。これらを正確に表現するためにはCSSが大きな役割を担うことになる。
だが、ここでWebデザイナーの中でも議論になっている問題が浮き彫りになる。HTMLとは本来、文章を構造化するために作られた言語であり、ページをレイアウトするためのものではない。しかし、これまでブラウザーにおけるCSSへの対応状況があまり追いついておらず、OSやブラウザーのバージョンによって見た目が変わってしまうケースがしばしばあった。デザイナーはこれを嫌い、CSSを使用せず、本来は表組みのために使うテーブルをレイアウトに流用するテクニックが一般的になっている現状がある。
正しい使い方として、デザインのために定義されたCSSを積極的に運用するのか、それとも多くのWebサイトがそうしているように、HTMLを応用したレイアウトにするのか。国際化と多言語対応の側面から見ても重要な問題だ。
「以前はそういった議論さえもありませんでした。ここに来て『正しい使い方とは何か』という議論がされている分、CSSへの理解も深まったのではないでしょうか。ブラウザーもCSSへのサポートを強化していますので、今は大きな変わり目でしょう。環境がほぼ整った今、デザイナー側が対応しはじめれば、HTMLとCSSの本来の使い方になっていくと考えています。CSSの運用は、国際化にとっても重要なことでしょう。」
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(2003/5/2)
[Reported by 伊藤大地]