【業界動向/モバイル】
KDDI、地上波デジタル放送向けのプロトタイプ端末を開発■URL
地上波デジタル放送は、今年12月に東京、大阪、名古屋で開始予定のデジタル圧縮技術を用いたテレビ放送。これまでのアナログ放送より映像や音声の品質が向上するほか、チャンネル数が4~5倍に増大し、データ放送にによりテレビのマルチメディア化が進むと言われている。同放送の特長として携帯端末による放送受信が挙げられるが、今回発表されたプロトタイプの端末は、データ通信と放送受信を可能にするための検証用端末となる。 「TVMobile」と仮称されたプロトタイプ端末では、QVGAサイズの液晶が搭載され、QCIFサイズの映像とインターネット網を使ったデータ放送を同時に見ることができる。開発用プラットフォーム「T-Engine」に日立製のCPU「SH-4」が搭載されており、OSには超漢字が採用されている。映像の受信はMPEG-4、音声はMPEG-2、データ放送にはHTML4.0の各形式で行なわれる。プロトタイプ版には携帯電話による通話機能は搭載されていない。 デモンストレーションは、映像の受信を無線LAN、データ通信をAirH"のCF型データ通信カードを使って行なわれた。なおプロトタイプ版は、放送波を無線LANでエミレーションする方式が採られており、OFDMやアンテナは搭載されていない。またデータ通信は、埼玉県上福岡市にあるKDDI研究所に通信サーバーを設置して行なわれた。 デモンストレーションではまず、大河ドラマ「武蔵」の放送を受信しながら、ドラマの登場人物を調べるようなデータ放送を活用したコンテンツや、地震など緊急の場合に番組が自動的に緊急放送に切り替わる場面などが紹介された。また、緊急放送のコンテンツは、地震など災害だけでなく、ユーザーが野球中継の得点シーンを設定しておけば、他の放送を見ていても得点した際にチャンネルが切り替わるような使い方も示された。 このほか、e-ラーニングコンテンツとして、英会話などの放送を見ながら放送に連動したコンテンツを通信サーバーから吸い上げて、さらに深く勉強できるような使い方や、スポーツコンテンツとして、サッカー中継を見ながらチャットを行なうなどの利用方法も紹介された。
発表では、KDDIの執行役員 技術開発本部長の村上仁己氏が「キャリアと放送が融合されて、様々な可能性が出てくる。今年秋には端末を発表したい」と述べた。また、同社の技術開発部 ITS開発部 部長の中村博行氏は、「商品のイメージはまだ固まっていない。今回の検証用端末のノウハウを活かして検討していきたい」としており、携帯電話に内蔵するものや、PDA端末のようなもの、また腕時計型などと利用形態に即した端末を考えていくという。 このほかKDDI研究所の取締役 松本修一氏は、今回のプロトタイプ端末をNHKの研究所と半年間かけて開発したことを明らかにし、「小型・軽量とはいかないが、一応PDAサイズに収めた。今後、この端末を使ってサービスや技術の検証を行ない、今年秋にもう少し小型化して提供したい」と語った。同氏によれば、「秋にはCDMA2000 1xEV-DOを視野に入れた端末も考えられる」という。 ただし、地上波デジタル放送の携帯端末向け受信では、NHKや民放連などの放送局側とMPEG-4を管理する団体MPEG LAとの間で、ライセンスに関して依然として合意がもたれていない。KDDIでは、MPEG-4の方が圧縮率など優位な点もあるが、「仕様に従って対応したい」としており、H.264も視野に入れて検証していくことを明らかにした。また、今回の端末では、「サイズを小さくすることにこだわらなかった」としており、あくまで検証用の端末であるということを強調。秋の段階で、どういう形で発表するのか現在検討中だという。メーカーと連動して端末を発表することも「充分考えられる」としており、一般ユーザーをモニターにした実験サービスも検討しているという。
◎関連記事 (2003/5/19) [Reported by 津田啓夢] |
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