【業界動向】
米NullSoftの暗号化P2Pソフトウェアが流出か?■URL AOLの子会社で「WinAmp」などのソフトウェアで知られる米NullSoftのWebサイトで5月28日、暗号化機能を持つP2Pファイル共有ソフト「WASTE」が公開されていたことが明らかになった。このソフトウェアは今週末にかけてWebサイトから削除され、その後はソフトウェアを入手した人々に対する警告のメッセージが表示されている。 Webサイトに掲示されていた情報と、その後多くのミラーサイトに掲載されている情報によると、WASTEは10~50ノードの小さなグループ間で分散的な通信環境を構築するためのプロトコル/ソフトウェアである。WASTEを使うことで大企業や組織をまたがって簡単にそして安全にコラボレーション環境を構築できる。WASTEにはインスタントメッセージング、グループチャット、ファイルのブラウジングと検索、転送機能が備わっており、リンクをRSAで暗号化するため、WASTEの外部からは通信を傍受できないようになっている。掲載時点では、ソースコードとともにGPL(General Public License)で配布されていた。 ところが現在掲示されているメッセージによると、このソフトウェアとソースコードは不当に掲載されたものだという。NullSoft側は「NullSoftが著作権を持つソフトウェアの許可されていないコピーが、2003年5月28日水曜日頃にこのWebサイトに一時的に掲載されていた」と事実を認めた上で、「このソフトウェアをいかなる方法にせよ複製、配布、展示あるいは他の方法で利用することは不当な行為であり、NullSoftの著作権を侵害し、他の法律に潜在的に違反するものである」と強く警告している。一時的にせよWASTEを掲載したのがNullSoftの意向だったのか、また、これを撤回したのが親会社のAOLの意向だったのかどうかなど、ことの経緯の詳細は明らかになっていない。 厳しい警告にもかかわらず、現実にはすでに多くのサイトがWASTEに関する資料とソフトウェア、ソースコードをミラーしており、これまでの他の先例を考えると早々にプロトコルが解析されクローンが開発されるものと思われる。実際、NullSoftが以前にまったく同じような方法で開発して公開した「Gnutella」はすぐに親会社であるAOLの意向により取り下げられたが、ミラーされたソフトウェアとソースコードによってこのプロトコルはあっと言う間に解析されて世界中にソフトウェアが広まったのは周知の事実である。WASTEはGnutellaのようなファイル交換ソフトではなくコラボレーションソフトであるため、同じような爆発的な広がりを見せるかどうかは定かではないが、グループ内で秘密裏にファイル共有できるということは親会社のAOLの利益に反することは想像に難くなく、今後の開発とレコード業界などの反応に注目が集まりそうだ。 (2003/6/2) [Reported by 青木大我(taiga@scientist.com)] |
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