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【レポート】

国際化ドメイン名が本格化するヨーロッパ~RIPE meetingから

■URL
http://www.ripe.net/ripe/meetings/ripe-45/

5月15日に開催されたDNS WGのパネルセッションの風景。右側左からJim Reid氏(Nominum/DNS WG Chair)、Patrik Faltstrom氏(Cisco/IAB)、Ed Lewis氏(ARIN)、Andrei Robachevsky氏 (RIPE NCC)、Stephane D'Alu氏(AFNIC)、George Michaelson氏(APNIC)

 現在、ヨーロッパにおけるレジストリの間でもっとも大きな盛り上がりを見せているのは、間違いなく国際化ドメイン名(IDN)関連の話題だ。スペインのバルセロナにおいて先ごろ開催された「RIPE 45 General Meeting」でも注目度は高く、非常に活発な情報交換が行なわれた。

 RIPE Meetingは、広域ネットワークに関する非営利フォーラムとして活動している「RIPE(Reseaux IP Europeens)」の定例ミーティングとして年3回の割合で開催されているもの。ヨーロッパ地域のRIR(Regional Internet Registry)である「RIPE NCC(Network Coordination Centre)」の統括的ポリシーの決定や、広域ネットワークの管理運用に関する技術研究およびそれに付随する調整事項についての議論を行なうことを目的としている。

 RIPE Meetingの参加者には、IETFなど他の国際会議と比較して、TLDレジストリやISP、実際のネットワークを運用管理しているオペレーターの比率が高い。そのため、よりインターネットの管理・運用に直接関連する実務的な話題が多いことが特徴だ。今回もさまざまなテーマが議論されたが、本レポートではヨーロッパにおける最新のドメイン動向として、IDNやDNSなどに関するセッションを中心に報告する。

●約半数のccTLDで年内にもIDNを開始する計画

CENTRのメンバーに対して行なった調査の結果が報告された
 「DNR Forum(Domain Name Registration Forum)」のセッションでは、RIPE Meetingに先立って行なわれた「CENTR(Council of European National Top-level Domain Registries:ヨーロッパ地域のccTLD連合体)IDN Workshop」の報告があった。それによると、CENTRに所属するヨーロッパ地域のccTLDレジストリのうち約半数が、年内にIDNのサービスを開始する計画を有しているという。

 WHOISをどうするかといった部分は残っているものの、技術的課題はほぼ片付いたと考えており、あとは運用ポリシーなどの面からいくつかの課題が片付けばIDNを始められるというのが彼らの認識だ。たとえば、登録可能な文字種、バリアント(異体字)テーブル、登録規則、予約ドメイン名といったものがこれに該当する。

 また、ヨーロッパ地域における事情として、ひとつの国で複数の言語が使用されていたり、逆にひとつの言語が複数の地域で使用されている場合がある。その場合の言語間の登録規則の整合性や異体字に関する問題(たとえば、スウェーデン語とノルウェー語の間にもいわゆるバリアントテーブルの問題があるという)なども考慮する必要があるようだ。

 今後、ヨーロッパ地域におけるIDNの普及と合意形成に関しては、CENTRがその場を担うことになるとしている。その上で、ヨーロッパの各ccTLDによる実際のサービス開始に向けた活動が行なわれることになるだろう。

 当日のセッションではあまりにも多くのテーマが議論されたため、予定されていたプレゼンテーションの半分しか発表ができなかったことも、IDNに関する機運の高まりを端的に示していると言える(そのため、近日中に再度ディスカッションの機会を持ちたいということだった)。

●DNSの実装の違いがパフォーマンスに影響

 DNSに関しては、DNSサーバーの実装に関する調査報告と、ccTLDとRIRで行なわれているDNSデータベースのクリーンアップに関する話題が注目を集めた。

 前者については「EOF(European Operators Forum)」で発表され、代表的なDNSキャッシュサーバーの実装による振る舞いの違いと、それによるDNSのパフォーマンスへの影響を考察した発表が目を引いた。調査対象となった実装は「BIND 9(9.2.0)」「BIND 8(8.3.3)」「Microsoft Windows 2000 Server(5.00.2195)」「Cisco Network Registrar(CNR、5.5.1)」の4つで、たとえばルートサーバーの選択に関してBIND 8やCNRではいくつかのルートサーバーにアクセスが分散されるのに対して、BIND 9やMicrosoftの実装では特定のルートサーバーへ100%集中してしまう場合があるなど、興味深い結果が報告された。

 また、この報告の中では1台のルートサーバーしか動いていない場合の動作や、パケットロスの大きい環境での動作についても触れている。すべてのルートサーバーに到達できなくなると、おおよそ48時間ですべてのTLDのキャッシュが無くなり、到達性も無くなるなど、あらためて確認できたことも多い。また、実装の違いによる動作の違いやネットワークの品質が悪いときの動作などを知る手がかりになるなど、技術的にも興味深い内容となっている。発表内容の詳細についてはII-Stiftelsen(IIS)のWebサイトで情報が公開されているので、興味を持たれた方は参照されたい。

 後者のDNSデータベースのクリーンアップは、一部のccTLDやRIRで最近行なわれている動き。具体的には、各々のレジストリにDNSサーバーホストとして登録されているサーバーの設定内容を定期的にチェックし、もし登録されているDNSサーバーの設定が正しくない場合、該当するデータの登録者に各種手段(電子メール、電話、郵便など)で連絡をとることにより設定改善を図る。もし連絡がつかなかったり、一定期間が経過した後もDNSサーバーの設定に改善が見られなかった場合、DNSサーバーホストの設定自体を消去する。

 このように各レジストリが管理しているDNSサーバーの設定内容をきれいにすることで、DNSを円滑に動作させようというものである。日本でもJPNIC、WIDEプロジェクト、JPRSの3者が共同で「DNS運用健全化タスクフォース」を設立し活動しているが、これらも含め、レジストリにおけるDNSサーバーの設定内容を向上させることにより、インターネット上でのDNS全体の動作をより円滑にしようという試みが現在全世界的に進められようとしている。

■II-Stiftelsen
http://www.iis.se/meta/english.shtml

●ヨーロッパで先行する「ENUM」

 IDNとDNS以外の大きなトピックスとして、DNSの仕組みを利用して電話番号からサービスへの名前解決を提供するサービス「ENUM」があった。

 今回のRIPE Meetingでは、RIPE NCCのENUMに関する取り組みの現状報告と、ヨーロッパ地域でENUMについて特に先進的な研究を行なっているオーストリアのInternet Privatstiftung Austria(IPA)から、現在取り組んでいる技術的課題についての報告があった。具体的には、該当する番号の保持者(ホルダー)がENUMデータベースに接続先や接続方法を登録する際に、それらの接続サービスを提供しているプロバイダーに対して、サービス利用の正当性をどのように確認するかという問題である。

 ENUMについては、ITU-Tの本部に近いヨーロッパ地域で実証実験の準備が先行して進められたという背景がある。また、ENUM実証実験用のドメインである「e164.arpa」は、IABからの委託を受け、RIPE NCCが管理運用を行なっている。このような背景から、RIPE NCCの場ではENUMに関する技術的な議論が以前から行なわれている。ENUMについては、今後もRIPE NCCにおける活動状況を注視しておく必要があるだろう。

■Internet Privatstiftung Austria
http://www.nic.at/ipa/

(2003/6/11)

[Reported by 森下泰宏(JPRS)]

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