【業界動向】
“決定版TRON”開発を目指す「TOPPERSプロジェクト」■URL
TRONは東京大学の坂村健教授が中心となって開発されたOS。サブプロジェクトである「ITRON」は、組み込み用リアルタイムOSとして日本で最も広く普及している。 坂村教授は“産業の基盤となるソフトウェアは技術を公開し、幅広く普及させるべき”という考えのもと、TRONの仕様を公開。その仕様を用いて誰でもTRONの実装や製品版の開発を行なうことが可能となった。しかし、結果として多くの企業が独自に開発やツール・部品の作成を進めたことで、TRONの機能が多様化すると同時に分散化。一見同じTRONでも、対応するツールや移植性などで問題が生じることが少なくなかったという。 現状のTRONが抱えるこうした問題を解消するために、分散かつ多様化したTRONを、ひとつの“決定版TRON”に置き換えることが「TOPPERSプロジェクト」の目的だ。決定版TRONによって、TRONの周辺環境や技術が集約され、開発ツールやミドルウェア部分の選択肢が増えるほか、経験ある技術者の増加が見込めるという。またこれまでTRON開発を行なってきた企業が開発から解放されることで、先端的部品やツール開発に注力でき、特に機器メーカーや組み込み製品ベンダーにとって大きなメリットになるとしている。 この“決定版TRON”として、現名古屋大学教授の高田広章氏がリーダーで開発を行なってきたOS「TOPPERS」(Toyohashi OPen Platform for Embedded Real-time Systems)を利用する。「TOPPERS」はμITRON仕様のリアルタイムカーネルなど技術的に成熟したソフトウェアをフリー公開することで、多くの企業による重複開発の問題を解決しようという発想で展開してきたもので、これまでに「TOPPERS/JSPカーネル」、「TOPPERS/IIMPカーネル」、「TOPPERS/IDLカーネル」が開発されている。これら製品をベースに、未対応プロセッサへの移植やソフトウェア開発環境、組み込みシステム向けのコンパクトなTCP/IPプロトコルスタックなどを開発することで、オープンな組み込みOSとしての実用化を目指していく。 また開発するOSの公式リリースは、プロジェクト会員のみで開発し、開発する会員には“著作権侵害のない開発”を義務付けることで、安全、安心なオープンソースOSの開発を行なっていく。さらにライセンスについては、使用事実の報告のみを制約として、GNUなどより自由に使用できる条件にする方向という。 「TOPPERSプロジェクト」の会長は高田氏が務め、名古屋大学、豊橋技術科学大学、宮城県産業技術総合センター、エーアイコーポレーション、日立システムアンドサービス、富士デバイス、リコーなど、現在十数の企業・組織が参加を表明している。同プロジェクトでは本年度中に100企業・組織の会員参加を目標にするほか、半導体メーカーや機器メーカーに、独自ITRONからTOPPERSへの乗換えを働きかけていく。これにより、2年後に全ITRONプロジェクト中で50%のシェア、4年後に80%のシェアを目標としている。
(2003/6/24) [Reported by aoki-m@impress.co.jp] |
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