【N+I2003 レポート】
「“自律ノード時代”にはIPv6とセキュリティが必要」~村井教授基調講演
「NetWorld+Interop 2003 Tokyo」では2日、村井純慶應義塾大学環境情報学部教授の「インターネットへの夢と現実:これからの10年」と題した基調講演が行なわれた。会場には30分前から長蛇の列ができるほど盛況だった。 村井教授はまず、PCやサーバーなど従来よりある媒体だけではなく、家電や自動車などあらゆるものがIPネットワークにつながる“自律ノード時代”が近づきつつあることを強調した。自律ノード時代には、個別のノードが自由に通信するためのグローバルIPアドレス(IPv6)が必要であり、さらにユビキタスを実現するための無線ネットワークも重要であるという。 その例として、名古屋のタクシーのワイパーやウィンカーなどあらゆるパーツにグローバルアドレスを振り、その動きから渋滞や降雨などを計測する実験を例に出した。この実験を村井教授は「長年の夢でもあったこの実験をついに実現し、ユビキタスへの大きな一歩になった」と語っている。実験では、ウィンカーを出している方向から「右折車が対向車を待っているために起きている渋滞」している場所などが分析可能になったという。この実験のように、移動体や外出先では無線技術が必須であり、シチュエーション別に携帯電話やPHS、ETCでも使われている「DSRC」などさまざまな規格を上手く使い合わせることが大事だと説明した。 自律ノード時代では、より自由にネットワークに接続するためにIPv6のグローバルIPアドレスを利用するが、このためにはセキュリティ強化も必要だという。村井教授は、「現在、企業内はファイアウォールで守られており、NAT変換で各PCはプライベートIPを利用している“厳重に守られた箱入り娘”状態だが、IPv6になると裸で晒されるようなものだ」という例を示し、グローバルアドレスを持ちつつセキュリティをしっかり保てる“ポストファイアウォール”的な機能や攻撃元IPを逆探知する「IPトレースバック」技術などの開発が必要だと語った。 村井教授によると、“ポストファイアウォール”の実験的な意味合いを含めて、N+Iのネットワーク実験システム「ShowNet」では、ファイアウォールを設置していないのだという。このため、「ShowNet」に繋がっている出展企業のアプライアンスの中には、「普段、企業のファイアウォール内に設置しているため、油断してパッチをあてていないマシンもあったりするが、そのようなマシンはもの凄い攻撃にさらされる」(村井教授)ケースもあるという。しかし、N+I側ではセキュリティ対策チームSOC(Security OperationCenter)を設置し、ファイアウォールが無い環境下でも安全な環境作りを行なっている。 最後に村井教授は、IEEE802.11bを利用したIP無線電話によるデモで米国と会話した後、「IPv6と無線の普及によりユビキタスが実現する下地ができつつあり、これによってリモート医療などが発展し、インターネットが人と社会に貢献できるはず」と締めくくった。
(2003/7/2) [Reported by otsu-j@impress.co.jp] |
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