ウォッチャー金丸のNEWS Watch
リンクがすでに消滅していることもありますが、予めご了承ください。
・NEWS Watchとは
・about 金丸さん
・NEWS Watchバックナンバー

1997年7月3日版


HEADLINE 2 articles

米政府の包括的EC振興策についての各方面から反響
建設省の「情報通信ネットワークビジョン」
余談5題:デジカメDPE/アイリスパス/Javaバナー広告募金/やっぱり待ちきれない!/お知らせ


[EC][政策](レベルA)
米政府のインターネット電子商取引についての包括的な振興策について、各方面から反響が(7月1日及び、7月2日のinternetWatch記事を参照)


 
7月1日にクリントン米大統領が正式発表したインターネット上の電子商取引についての包括的な振興策について、各方面からの反響が出始めている。
 
日経新聞3面には、21世紀をにらんだ米国の情報通信戦略が鮮明になってきたとして、米大統領は国の役割を関連税制の整備や著作権保護の仕組み作りなどに限定し、安全や倫理基準などのルール作りは民間にゆだねる考えを示したという記事が掲載されている。同じく3面には、この包括策を打ち出した背景について、インターネットの広がりを考慮して「デジタル流通市場」の形成を米企業主導で進めるとともに、国防産業に代わる新たな米国の輸出産業を育てようという狙いがあるという解説も掲載されている。このあたりは、6月30日のNEWSWatchで書いたように、アメリカがソフト大国であるが故の強さを背景にして世界に政策を広めようとしていることについての論評となっている。
 また同紙9面にも、米ハイテク業界がこの構想を受けて、EC関連の開発・販売が加速化されるという記事もあり、ビル・ゲイツMS会長やアンドリュー・グローブIntel会長らが一様にこの政策を歓迎するコメントを発表したということで、ますますソフト業界を含めた米ハイテク産業の勢いがついてくる気配だ。
 これに対する日本サイドの動きとして、日刊工業新聞1&3面には、国内のEC関係者が一部注文がありながらも、この政策を好意的に受け止めているという記事も掲載されている。また日経産業新聞32面のビジネスTODAY欄では、国内のEC関連業界がこの政策内の著作権保護徹底の項目に関心を示しているという記事もあり、特にネットワーク送信に関する著作権料が、日本では基本料+収益の10%弱で、アメリカでは収益の2%弱であることから、通信カラオケ業界からサーバーをアメリカ(ハワイなど)に移転しようとする意見なども出てきているということも書かれている。
 こうした動きは、インターネット・サーバーを海外に設置する企業がここ数年で急増している事態が、通信カラオケなどの、より一般的な通信サービスまで広がりを見せ始めようとしている前兆として受け止められそうだ。現に
日刊工業新聞8面にも、日本電子計算(JIP)が、日米間の時差と米国の信頼性の高い高速ネットワーク回線を利用したプロバイダーサービスを始めた(6月26日のJIPのニュースリリースを参照)という事項などは、ネットの混み具合を利用する以外にも、このアメリカの政策が大きな追い風となりそうなサービスと考えられる。
 しかし、上記のような日米の蜜月な関係を離れて世界の反応を見てみると、
今日の日経新聞夕刊の2面では、フランス政府が2日夕に、外国政府としてこの政策に初めて慎重な姿勢を表明したという記事も掲載されている。ネット上の消費者保護や倫理的な問題に関するルール作りに国家や政府が介入せず、民間の自主的な取り組みに任せることには問題が多いと指摘しているらしい。
 フランス以外の欧州勢もこの政策については「総論は賛成、各論については反対(異論あり)」という立場を取ることが考えられ、アメリカが国際会議あたりで提案してきた場合にも、共同宣言などに盛り込む等の調整が難航しそうな気配である。
 とにかく色々な意味で『アメリカらしく』提案されたこのEC政策に対しては、その他の世界が受け入れる(又は拒否する)までの経緯にはその国々の事情が強く反映されるのは間違いないところで、ECが外交問題のトップにまでのぼる時代が来たのだと実感せざるを得ない。


 




[通信インフラストラクチャー][政策](レベルA')
建設省が近くまとめる「情報通信ネットワークビジョン」


 
日経新聞7面には、建設省が近くまとめる「情報通信ネットワークビジョン」の内容が明らかになり、新電電など民間通信事業者と協力して光ファイバー網を2010年までに30万km整備するという記事が掲載されている。整備目標では2001年までに4.5万kmを整備となっているが、2010年では道路で15万km、河川堤防で5万km、下水道に残り10万kmに国が簡易型の収容空間(情報ボックス)を設置するようだ。道路下の共同溝(電話線や電力線、ガス管などを収用)整備には1kmあたり30~40億円の費用がかかるが、情報ボックスでは1千万円程度で済むようなので、民間通信業者にとっては設備費の大幅な軽減ともなるだろう。
 運輸省としては、高度道路交通システム(ITS:Intelligent TransportSystems)での画像伝送などに使う用途を考えての政策だろうが、総延長30万kmでほぼ全国9割の市町村をカバーするだけに、協力する電力系新電電(NCC、
東京通信ネットワーク(TTNet)ほか)などにとっては、一般通信網への利用も見込める事業と位置付けていることだろう。NCCはKDDの日本列島を光ファイバー海底ケーブルで囲うJIH(Japan InformationHighway)計画にも参画(2月7日のNEWSWatchを参照)しており、この計画と合わせて、日本の巨大な通信インフラが出現する可能性も秘めている。
 NTTが推進するFTTH(ファイバー・トゥ・ザ・ホーム)への対抗馬が、意外なところから出て来たと言えるかもしれない。





余談その1:
   
日経新聞21面には、ベンチャー企業のデジタルプリントが、オムロンカルチュアコンビニエンスクラブ(CCC)伊藤忠テクノサイエンスの出資を得て、共同でデジカメのDPE店の多店舗化や画像送受信システムの構築に乗りだすという記事が掲載された。
 新たな企業連合の誕生だが、デジカメDPE市場も、確固とした消費者流通経路を構築して商売が成り立つまで成熟しつつあるということなのだろう。
 
余談その2:
 
日刊工業新聞9面と日経産業新聞11面には、沖電気工業が2日、人間の目の虹彩(アイリス)による個人識別装置「アイリスパス」を開発したと発表したという記事が掲載された。遠方から写真撮影することでデータ採取でき、指紋採取のような煩わしさを伴わないのが特徴で、照合時間は2秒、誤認率は10万分の1以下で、照合に必要なデータ長は512bitということらしい。
 通常の入出のセキュリティーチェックに使われるは当然だが、512bitの本人のキーとしてアイリス情報を使うことを考えれば、先日アメリカ政府より一部輸出承認された128bit暗号鍵(
6月24日及び、6月25日のinternetWatch記事を参照)などよりもっと強固なセキュリティー・システムを構築することが可能になると考えられるので、量産化などによる早期の価格低減が望まれそうだ。

余談その3:
   
日経産業新聞7面には、米最大級の保健関連団体のユナイテッド・セリーブラル・パルジー(UCP)がJavaで書いた決済ソフトを組み込んだバナー広告を使った募金運動を始めるという記事が掲載された。ユーザーがその場で5~20ドルまで献金でき、検索サービスのアルタ・ビスタなどで広告を流す予定らしい。
 今のインタ-ネット・トレンドと異なり、ダイレクト電子メール等による押し(Push)の強い広告より、Web上の(Pull)広告の方が、こういった活動には向いているようで...
 
余談その4:
 日経産業新聞2面には、
住友金属工業がホームページを見ている際にリンクの張られたページをあらかじめ先読みする、米ソフト開発ベンチャーのIMSIが開発した「インターネットアクセラレータ」(Windows95対応)を発売したという記事が掲載された。「ネットサーフィンの際、時間がかかるイライラを解消します」ということらしい。
 6月30日のNEWSWatch余談その1でも3種類のブラウジング・スピード・アップの方法を紹介したのだが、やはり日米共にインターネット・ユーザーは”待ちきれない!”

お知らせ:
 明日と月曜日のNEWSWatchはWatch及び新聞休刊により、休刊日とさせていただきます。m(__)mその間、若干のリニューアルを目指して準備致しますので、ご期待の程を。




INTERNET Watch


(C)1996 Impress Corporation. All Rights Reserved.

internet-watch-info@impress.co.jp