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1997年10月27日


HEADLINE 4 articles

電子透かし」技術3題
インターネット広告の急増...その2
プッシュ元年
メディア指向
余談2題:フリークション/宅配ネット


[電子透かし](レベルA'
●「電子透かし」技術3題


 今日の朝刊各紙は、「電子透かし」技術特集の様相を呈している。

 まず日経新聞19面には、ソフト会社のエム研が、電子楽器や通信カラオケの演奏に使うMIDI音源データに、著作権などの情報を人間の耳に分らないよう隠すソフトを開発したという記事が掲載されている。これには「電子透かし技術」(Lucent Mark技術と思われる)を応用しており、音の強さを表すデータと楽器の演奏終了を指示する命令に透かしを埋め込むとしている。そのため、再生した音の波形は原曲と微妙に違うが、聴覚の冗長部であるために、プロの演奏家でも違いは分からないともしている。

 また日経産業新聞5面には日立が、インターネットでやりとりされる画像や音楽などのコンテンツの不正利用などを防ぐ安全性の高い販売システムを開発したという記事が掲載されている。コンテンツの著作権を保護すると同時に、販売業者や購入者が不正を試みた場合にこれを防ぐことができるとしており、コンテンツに隠す電子透かしと本人確認のために使うデジタル署名Keymate/Sign技術と思われる)、通信の機密を守る暗号(楕円暗号)などの技術を組み合わせており、システムには「公開鍵方式」の暗号(暗号ライブラリ「Keymate/Crypto」(キーメイト/クリプト)技術と思われる)を採用したともしている。

 最後に同じく日経産業新聞5面には、奈良先端科学技術大学院大学嵩(かさみ)忠雄教授渡辺創助手らが、電子透かし技術を安全に運用できる技術を開発したという記事が掲載されている。購入者のID情報を利用して透かし情報を作り出すプログラムを使い、複数の購入者が結託してデータを比べて透かし部分を取り除こうとしても、透かしを入れる前の完全なオリジナルの復元はできないとしている。

 この様な電子透かし技術の向上が、電子コンテンツの公正な流通を促進するのは間違いない。今後は、コンテンツ流通の拡大とともに、電子透かし技術自体の使用目的による選別も必要になってくるだろう。エム研などは8月28日のNEWS Watchにもあるように、9月1日から著作権管理サービスも開始しており、音楽、静止画、映像といった著作権の絡んだコンテンツの利権に関わる事業なども、電子透かし技術の普及とともに拡大して行くと思われる。



[インターネット広告][調査](レベルB10月16日のNEWS Watchも参照
●インターネット広告の急増...その2


 今日はもうひとつ、「インターネット広告」についても内外の話題が多い。

 まず日経新聞11面には、インターネット広告の推進団体である米インターネット広告局(IAB)が、バナー広告はクリックされなくても宣伝効果があり、TV-CMに比べて目に止まり安いという記事が掲載されている。6月に実施した全米1万6千7百人からのEメールでの回答をまとめたもの(9月24日に速報あり)で、ブランド・イメージを伝えるには広告表示だけで充分という結果がでたとしている。

 また日経産業新聞2面には、「広告業界、ネット活用に知恵絞る」と題して、広告業界のインターネットを活用したマーケティング事業の展開例を掲載している。
 そこには10月21日のNEWS Watch余談その3でも取り上げた、第一企画のマーケティングシステム「KNOTs(ノッツ)」や、10月17日のNEWS Watchでもインターネットを使ったアジア向けの4カ国語での情報提供サービスで取り上げたエー・アイ・ピー(AIP、博報堂出資のベンチャー)が、日本だけでなくアジア各国で消費者調査を実施できるサービスを提供していく計画が掲載されている。
 また電通が11月1日付で、双方向メディアを使った事業を総合的に展開する「インタラクティブ・ソリューション・センター」(10月27日のINTERNET Watchダイジェスト参照)を設立する件や、旭通信社も消費者の反応を探ったり販売促進策にインターネットを利用するための社内横断的な専門部署「インタラクティブ・コミュニケーション・センター」を設置する件なども報じられ、大手国内広告代理店も各々に独自の取組みをはじめている様子が分る。

 日本の各広告代理店が双方向性(インタラクティブ)というキーワードでインターネット広告活動の事業展開を行おうとしているようだが、米での調査結果が物語るように、企業などのイメージ広告程度なら一方的に見せるだけでも効果があることから、双方向性ばかりでなくあくまで広告の目的別の展開を考えていくべきなのだろう。
(そういった意味では、今月から始まったWatch Web上の横長バナー広告も、適所での広告展開と言えるだろう)




○プッシュ元年9月12日のNEWS Watch余談その2参照)
 26日(日)の日経新聞7面には、住友商事がプッシュ型ソフトの米ウェイフェアラー・コミュニケーションズ(Wayfarer Communications)に資本参加し、同社の配信ソフト「インサイサ」(INCISA)の日本独占販売権を得たという記事が掲載された。

 これで日本には、マリンバやポイントキャスト、バックウェブ・テクノロジーズに並ぶ米4大プッシュ型ソフト全てが出そろうわけで、今年はプッシュ技術導入元年とでも言えそうだ。

○メディア指向
 日経産業新聞26面には、今日から『「メディア企業」めざす』企画のインターネット企業トップへのインタビュー特集が始まっており、その第1回を米エキサイトのジョージ・ベル社長兼CEOが飾っている。彼はその中で、メディア企業を標榜する姿勢を示している。

 検索サイトなどの各々の強みを持った人気サイトがマスメディア指向を強めた場合、既存の新聞や雑誌、TVなどのメディアサイトもコンテンツのみならず、提供するサービスでの差別化も必要となってくるだろう。



余談その1:フリークション
 日経産業新聞3面には、パソコン販売を手がけるロセッティ(福島・いわき市)はインターネット上で、品物を問わずだれでも自由に売買に参加できるオークションのサービス「フリークション」を開始したという記事が掲載された。商品の情報を検索した後、リアルタイ ムで“せり”の状況を見ながら参加できるシステムで、商品を売りたい参加者はまず同社に500円の登録料を払う。買いたい希望者は物件情報ページにアクセスして、入札ページに物件ごとにパスワードとユーザー名を登録してから申込金額を書き込むとなっており、オークション期間は原則1週間ともしている。

 10月22日のPC Watch Webで紹介された日本ゲートウェイ2000の旧モデル機種のホームページ入札販売する「Gateway オークション」は、早くも10月24日のやじうまPC Watchでも指摘されているように落札価格が暴騰しているが、同じ1週間のオークション期間でもフリーマーケットとメーカー主催でのものとは、かなりその様相は違ってくると思われる。

余談その2:宅配ネット
 日経産業新聞2面には、ヤマト運輸の情報子会社のヤマトシステム開発が、企業向けインターネット接続サービスに参入したという記事が掲載された。同社の物流情報サービスとインターネットを活用して宅配便の顧客企業を囲い込むのが狙いで、サービス名は「ネコネット」としている。

 ヤマトシステム開発のリリースでも、昭和57年より「ネコネット手足つきVAN」として企業向けに通信サービスを提供して来たものを、10月1日からバックボーンに1.5MBの回線に増強してインターネット接続や受発注、在庫情報など物流情報とのシステム連携などを提供する、ともしている。

 10月21日のNEWS Watchでは、西濃運輸のEC連動の配送管理システムの様なネット活用事業を取り上げたが、サービス差別化へ向けての宅配業者とインターネット事業との結び付きは今後も強まって行くと思われる。
(ヤマトだけに、いま流行りつつある「ポスト・ペット」メーラーを使うと黒猫が返事を持って来てくれる、という様な細かいサービスなども、差別化につながるかも...(^_^)



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