マネックス証券は、2月1日付で世界的に著名な投資家であるGeorge Soros氏のファンドなど4社に対し第3者割り当て増資を行なう。
主な投資家は、Soros Fund management、Tudor Proprietary Trading、JWM Partners Investmentsのヘッジファンド3社と、米国大手投資銀行・証券会社のGoldman Sachs。今回の調達資金は31億円で、増資後の資本金は35億5,000万円となる。各社の出資金額や比率は非公開だが、4社で今回の増資の約4分の3を占めるという。
なお、Tudorの日本代表は明神茂氏。明神氏は、米国大手証券会社旧ソロモン・ブラザーズ時代、凄腕のトレーダーとして知られかなりの収益を稼いだが退社。その後、しばらく金融界から去り休養状態が続いたらしいが、その後Tudorの日本代表となった。JWMは、ロシア危機、アジア危機などにより1998年に破綻したヘッジファンドLTCM(Long-Term Capital Management)が負債を清算し、新たに開始されたファンド。
マネックス証券の増資前の資本金は14億1,332万5,000円、株主は代表取締役社長の松本大氏、ソニー、IIJ、J.P.モルガン、KGI Limited、リクルートとなっていた。増資後の各株主の出資比率も非公開となっている。
今回の増資の目的は、システムの大幅増強とマザーズを中心とした引受業務を行なうための東証会員権の取得。主幹事証券会社となるためには、証券会社の資本金が30億円以上なければならず、今回の増資でこの条件をクリアする。今後、速やかに東証の会員権取得と引受業務認可の申請を行なっていく。
ソフトバンク・ファイナンスグループのEトレードも引受業務に注力していくため、1月26日付けで資本金を15億100万円から30億100万円に増資している。オンライントレード業界は、これまでの手数料や口座数争いなどから引受競争のステップに入ったようだ。
このほか、マネックス証券は本人名義の現物株券の入庫を開始し、第1四半期中には日計り取引、出合い注文、マネックスネット(電話回線だけあればマネックスに接続可能)を開始する予定。
気になるのは、マザーズ銘柄の引受業務を今後行なうということだが、現在マネックスは値嵩株の取引を行なっていない。これをクリアしないと、引受はしても取引が行なえないなんてことも起こってしまうため、まず早急に値嵩株の取引を可能にしなければならないだろう。
また、今回の増資をヘッジファンドが引き受けたのは大変興味深い。日本のインターネット業界、もしくは日本の金融業界に対し高成長期待を持ったとするならば(ヘッジファンドの場合私募形式なので情報公開の義務がく確認しようが無い)、マネックスへの投資をきっかけに今後続々と同様の投資が行なわれる可能性も考えられる。
しかし、基本的にヘッジファンドは短期投資でサヤを取るのが投資手法だ。そのヘッジファンドが、未公開企業に、しかも長期投資(マネックス証券の場合は株式公開するようなアナウンスは一度も行なったことが無い)するようなかまえと受け取れる行動をとるのは少し納得がいかない部分ともいえる。さらに、3社同時で投資するのも珍しいが、ヘッジファンドの動きがこれほどまでタイムリーに分かることも珍しい。
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(2000/1/31)
[Reported by betsui@impress.co.jp]