昨日もお伝えしように、INTERNET Watchは2月1日で創刊4周年を迎えた。4年前というと、ついこの前のような気もするが、“ドッグイヤー”で進んでいるインターネット業界は、状況もすっかり変わってしまっている。そこで今回は、創刊当時の記事を引用しながら、インターネットの4年前を振り返ってみたい。
なお、INTERNET Watchの正式創刊は1996年2月1日だが、実はその2カ月前からプレ創刊という形で配信を行なっていた。ここでは、その期間も含め、1996年1月から3月にかけて配信された記事の中から興味深いニュースをピックアップする。
●パソコン通信からインターネットへ現在では、“オンラインサービス=インターネット”と言ってもいいだろうが、当時はパソコン通信も大きな位置を占めていた。もともとはパソコン通信だった大手オンラインサービスが、インターネットへシフトし始めたのが、ちょうどこの頃だったようだ。その動きを伝える記事がいくつか掲載されていた。
■Apple、eWorldのコンテンツをインターネット上へ移行('96年3月5日号)eWorldというのは、Appleの専用パソコン通信サービスだが、記事掲載時点で「eWorldのベースを独自のシステムから、インターネットに移す方向」にあったという。「独自のプロトコルとクライアントソフトを使用するGUIベースのパソコン通信サービスは、'94年後半から多数登場したが、AOLなどの例外を除いてWWWとの競合に敗れ、縮小やインターネット上のコンテンツへの方向転換を余儀なくされている」時期だったわけだ。
一方、そのAOLは、「AOL内のコンテンツよりも、インターネット関連サービスの比重が増していること、MSNをはじめとする他のネットワークサービスがインターネットベースへ移行しつつあること」を背景に、インターネットへ移行するのではないかという予測が報じられた。同じ記事ではまた、「AOLに抜かれ2位に落ちたCompuServeも、巻き返しの手段としてインターネットアクセスを含む新サービス『WOW!』を用意している」と報じている(なお、CompuServeのパソコン通信サービス部門はその後、'97年9月にAOLに買収された)。
そして、「インターネットベースへ移行しつつある」と説明されていたMSNについても記事を引用すると、「通常のプロバイダーのように、まずMSNクライアントからダイヤルアップでPPP接続を行なう。この段階ですでにインターネットへのアクセスが可能。さらに、独自の通信手段によりTCP/IPプロトコルの上でMSNデータセンターに接続され、従来のMSNサービスが提供される」。何やらワケがわからないが、要するに「MSNの中からシームレスに、WWWなどのインターネットサービスを受けられるようになる。同時に、WWWよるインターネットへのMSNのコンテンツ提供も行う」ということらしい。当時は、さぞかし大きなニュースだったのだろう。
●“ネット端末”の登場ちょうど4年前、INTERNET Watchの創刊と同じ頃に登場したインターネット関連の製品があった。いわば、本誌と同い年とも言えるものだが、それをとり上げた記事が以下である。
■5万円のインターネット専用端末登場か?('96年1月8日号)iBOXはその後、機能面での物足りなさなどを指摘されながらも、現在まで継続して販売されているシリーズだ。「CD-ROMを内蔵し、専用のブラウザーを組み込んだ端末で、価格は5万円」と、その価格に対する驚きが伝えられているのが印象的だ。
一方、同じ頃、鳴り物入りで登場した“ネット端末”があった。むしろ当時は、iBOXよりも話題性が高く、もちろんINTERNET Watchでもとり上げている。「テレビと接続できる4倍速のCD-ROMがついたゲーム機型の家庭用デジタル端末。本体、コントローラ、モデム、CD-ROMソフトのセットで、価格は64,800円」というスペックの製品だが、残念ながら、今では姿を消してしまった。とりあえず、見出しだけ引用しておく。
■バンダイがピピン発売を3月に控え、新会社を設立('96年1月11日号)インターネット業界では、日々、新しい技術やサービスが続々と登場している。この業界のニュースを専門としている本誌記者といえども、中には驚き、感動するようなニュースに出会うこともあった。それが、表現からひしひしと伝わってくる記事をピックアップしてみた。いったい何が“登場”したのか、見出しから想像してみて欲しい。
■Netscapeで文字テロップを流すテクニック登場('96年2月6日号)まず1番目。「Netscape Navigatorのウィンドウの一番下にあるステータス欄で、テロップが流れるのを見たことはないだろうか? たとえば、上記URLのページにアクセスすると、歓迎メッセージのテロップが流れる」という記述を引用すれば、もうおわかりだろう。今ではなんのことはないテクニックだが、当時は「アクセスした人に『おっ』と思わせるテクニック」だったのだそうだ。
2番目は、記事中では「PCN」と表記されているが、URLで言ったほうが通じるだろう。http://www.pointcast.com/である。「グラフィカルな新聞のようなページ(「ChannelViewer」と呼ばれる)が表示される」こと、そして「通常のスクリーンセーバーと同じようにキーボードやマウスに触れないでいると、ChannelViewerと同じような画面でニュースが流れる」ことが特徴だと述べている。なお、この時点では“プッシュ”という用語は影も形もなかった。
さて、以上2つはわかった方もいると思うが、問題は最後である。実はこれ、「WWW上の地図から地域を指定していくと、登録されているお店や企業の場所、電話番号といった情報を得ることができる」サービス。なんのことはない、現在は「Mapion」と呼ばれている地図サイトのことなのだ。「WWW上の地図から現実の街の情報が得られる」という表現、非常に奥が深い。
●4年間変わらぬモノ1996年の2月と言えば、その前年の秋にWindows 95がリリースされ、初心者を巻き込んだパソコンブームが訪れていたときだ。そんな中、Windows 95に関連したマニアック(?)なソフトが本誌記事で紹介された。
■日本アイ・ビー・エム、Windows 95とOS/2を共存させるツールを無料で配布開始('96年2月2日号)記事によると、これは「Just Add OS/2 Warp日本語版」というもので、「Windows 95がインストールされているパソコンにOS/2 Warp V3を追加することにより、2種類の基本ソフトを1台のパソコンに共存させることを可能にするソフトウェアツール」。OS/2というのが時を感じさせるが、驚くことに、掲載されていたURL(http://www.ibm.co.jp/pspjinfo/jaow/)は今でも生きており、ソフトもきちんとダウンロードできるようになっていた。目まぐるしく変わるインターネット業界で、4年間変わらぬモノもあったというわけだ。
(2000/2/2)
[Reported by nagasawa@impress.co.jp]