【NetWorld+Interop 2002 TOKYOレポート】

世界中の技術者をどこでも使える無線LANで迎える
~プロトコルの標準化会議「IETF」が14日より横浜で開催

■URL
http://www.ietf.org/meetings/IETF-54.html


左から、慶應義塾大学環境情報学部教授の村井純氏、 東京大学大学院情報理工学系研究科助教授の江崎浩氏、慶應義塾大学環境情報学部助教授の中村修氏

 3日の最後のプログラムとして、7月14日から横浜で開催されるインターネット技術の標準化会議「IETF横浜会議」に関する特別セッションが行なわれた。このセッションでは、IETF横浜会議における意義やトピックスについて、Wideプロジェクトのメンバーより説明があった。

 まず東京大学大学院情報理工学系研究科助教授の江崎浩氏から「IETF(the Internet Engineering Task Force)」の説明があった。IETFは、インターネット技術の標準化や、プロトコルの開発や選定を行なっている機関だ。標準化の案は、まずIETFに提出して、議論や動作検証を重ねた後、「RFC」としてドキュメントが公開される。メンバーは全てボランティアとなり、所属組織や肩書きに束縛されない個人としての参加となる。普段はメーリングリストによって議論を行なっているが、1年に3回、会議が開催され、メーリングリストに参加しているメンバーに対して、集う場を提供するのが最大の目的だ。1年の会議のうち2回は米国での開催となるが、1回はそれ以外の国での開催となり、今回の横浜会議はアジアで初めてという。

 江崎氏からは、会議の様子も合わせて紹介された。参加者はラフな服装をしており、例えば夏に開催される会議では、Tシャツ、半ズボン、サンダルが多いという。また、各会議に配付資料はなく、各自がIETFのサイトからダウンロードする必要があったり、メーリングリストのアーカイブを参照するため、ノートパソコンとIEEE802.11bのカードは必須だとしている。会議の休憩時間は、廊下に座り込んでノートパソコンを拡げた参加者同士が、熱い議論を交わしている光景が見られるという。

 次に、慶應義塾大学環境情報学部助教授の中村修氏が、世界中から来日するIETFメンバーへの“もてなし”として、横浜で用意する予定の充実したインターネット接続環境を紹介した。IETF横浜会議の会場であるパシフィコ横浜は、Wideプロジェクトと富士通が共同でネットワークを構築し、パシフィコ横浜とNTTコムの大手町ビルはギガビットイーサネットを2本使用するという。会場内は、ほとんどの場所で無線LANが利用できるようにアクセスポイントを設置して、ノートパソコンで利用するためのコンセントについては「2メートル間隔で設置するくらいの意気込み」とのこと。さらに、Wideプロジェクトが協力をしている特急列車「成田エクスプレス」で利用できる無線LANは、「IETFメンバーに利用してもらうことも1つの目的として設置した」という。ほか、パシフィコ横浜の隣にある「インターコンチネンタルホテル」の客室やロビーにも無線LANを導入する計画があるとして、「とりあえずIEEE802.11bの電波を探してみてください。きっとすぐにつながりますよ」と自信をみせた。また「日本ならでは」の試みとして、ほとんどの無線LAN接続でIPv6を提供することを挙げた。

 最後に慶應義塾大学環境情報学部教授の村井純氏が、IETF会議を日本に誘致した経緯を語った。村井氏が参加し始めたころのIETF会議は米国のみの開催だったが、そのうちに米国以外の国でも開催しようという動きが出てきたという。エンジニアがたくさんいる国が候補となるが、そのころは日本人が主導でRFCを作ったことがなかったため、「IETFに参加して、日本から標準化を出そう」と国内の研究者に呼びかけたという。それに賛同するように、IPv6関連を中心に日本からの標準化案が数多く採用され、今では採用された標準化の数は世界で3位になった。また、IETF会議は毎回2,000人程度の参加があるが、そのうち日本人は100人を越えるようになったとしている。

 「IETF横浜会議」は、神奈川県横浜市のパシフィコ横浜を会場に7月14日から19日まで開催される。なお、当日の参加も受け付けており、参加費はUS$600だ。

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(2002/7/4)

[Reported by adachi@impress.co.jp]

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