ワイヤレス・ジャパン2002
■URL
http://www.ric.co.jp/expo/wj2002/
17日、ワイヤレスやモバイル製品およびサービスを一同に集めたイベント「ワイヤレス・ジャパン2002」が、東京ビッグサイトで開幕した。約180社が出展し、3万人以上の来場者を見込んでいる。会期は19日まで。
今年で7回目を向かえる今回のテーマは「世界より一歩早く、モバイル&ワイヤレスブロードバンドの技術とビジネス」。会場では、第三世代携帯電話や無線LAN、Bluetoothなどの各種製品のほか、ホットスポットサービスやインターネットITSなどの展示も行なわれている。
最初の講演には慶応大学の村井純教授が登場し、「ワイヤレスインターネット」と題する講演を行なった。同氏は、現在横浜で開催されているIETFカンファレンスについて言及し、「外国人に日本のインターネット技術を見せつけるべく環境づくりを行なった。そのために、『インターネットがなくなると窒息してしまう』という心積もりで環境を構築した」と語った。
成田空港や横浜の会場には、すでにホットスポット環境が準備されているが、問題となったのは電車の中だった。従来は携帯電話やPHSによるインターネット接続が主流だったが、「これでは不十分だ。ワイヤレスLANでつなぎたいと思った」という。そこで、成田エクスプレスのグリーン車内に無線LAN設備を設置した。村井氏は、「特に宣伝をしていないが利用者には好評だ。切符を購入する際には、ぜひグリーン車か、もしくは電波の漏れてくるグリーン車に近い座席を希望して欲しい」と語り会場を沸かした。
村井純教授 | 成田エクスプレス |
---|
次に、人間とコンピューターのあり方について言及した。かつてはコンピューターが中心にあって、その周りに人間が存在していたという。村井氏は、「今後は、人間が中心にいて、その周りに道具としてのコンピューターが存在しなくてはならない。そのためには、ワイヤレス環境が必須になる」と語った。そして、「インターネットの世界は、人間の視点から見通さなくてはならない。われわれには、インターネットにつながる権利があると考えるべきだ」という。
さらに村井氏は、「本当の意味でのインターネットとは何か」を改めて定義する。それは汎用のデジタル情報基盤、つまり「デジタル情報を運ぶためのルーティングというインタフェース」こそがインターネットだとしている。同氏は、インターネットインフラには、その時に使える技術の中から都合のよいものを選べばいいとし、その上にのるアプリケーションには「無限の可能性がある。自由な発想で生み出せる」ともいう。例えば、1995年にはHTTPのトラフィックがFTPのそれを上回った。しかし「インターネット=Webでもなければ、メールでもない」という。2000年頃からは、HTTPのトラフィックが減少し始め、かわりにP2Pトラフィックが増加してきているからだ。
村井氏は、阪神大震災以来、自動車インターネット(インターネットITS)に取り組んでいる。「神戸の地震の時にわかったことだが、インターネットは電源がなくなると全滅する。そこで目をつけたのが移動手段として成り立たなくなった自動車のバッテリーだった」という。名古屋で行なった2000台規模の実験では、ワイパーの動作状況を集計することで、気象庁のデータよりも細かく降雨を感知できたという。村井氏は「これからは、個人が集めたデータを売るといったビジネスモデルが考えられる」と語った。また、現在の問題点として「GPSによる位置情報のエラーが確実に起こる。この時、怒りの対象はGPSをさえぎるビルになる」として、「これからは日照権と同じように、『位置を知る権利』を求めてもいいのではないか。GPSをさえぎる構造物には、代替手段となるスードライトの設置を求めたい」と語った。
インターネットITSのブースに展示されていた世界初の車載サーバー搭載車 |
---|
◎関連記事
■「ワイパーの稼働状況も集めればビジネスになる」 村井純氏
■“インターネット自動車”でドライバーの脈拍データを収集すると……
■名古屋では5台に1台が“インターネットタクシー”
(2002/7/17)
[Reported by okada-d@impress.co.jp]