【裁判】

Yahoo! BBがイー・アクセスCTO小畑氏を訴える~損害賠償請求3億円
~「訴訟の一番の目的は、誤解を解くことと営業妨害を防ぐため」孫社長

■URL
http://bb.yahoo.co.jp/

「ADSL事業者は、正々堂々と技術で競合すべき」と憤る
孫 正義社長

BBTの訴訟代理人である
牧野 二郎弁護士

 ビー・ビー・テクノロジー株式会社(以下、BBT)は27日、同社に対して営業妨害を行なったとしてイー・アクセス株式会社のCTO小畑至弘氏に対して、損害賠償請求3億円の訴状を東京地方裁判所に提出したと発表した。

 損害賠償請求の主な要因は、小畑氏が二つの不法行為を行なったというもの。この不法行為によって、BBTは営業妨害を受け「106億9,740万円の損害を受けた」としている。この106億のうち、「個人が支払える常識的な額として、3億円を請求する」(BBTの訴訟代理人である牧野二郎弁護士)となっている。

 BBTが示す第一の不法行為は、2001年9月4日に行なわれた社団法人情報通信技術委員会(TTC)が公式に開催した記者説明会において、BBTが採用するAnnex .Aについて「日本では信号の減衰が激しく、利用者には十分な通信速度を提供できない」と発言した点や、TTCでのシミュレーション結果のグラフを「誤用を避けるべき注意書きが書かれているのを故意に削除し、イー・アクセスのWebサイト上に掲載した」(牧野弁護士)など。

 第二の不法行為は、2002年7月12日にイー・アクセスが行なった技術説明会の席上で、BBTが提供するサービスであるAnnex .A.exについて根拠なく攻撃し、その内容を報道関係者に説明した点だという。この点に関して、BBTの孫正義社長は「一ヶ月前に、小畑氏に対して口頭で、先日の発言はちゃんとした調査結果に基づくものなのか、それとも机上のシミュレーションによる結果からくるものなのか、キチンと説明してほしいと言ったのだが、その後も全く改善される気配が無かったので、訴訟となった」と説明している。

 今回の訴訟は、小畑氏が、TTCにおいてDSL事業者が守るべきルール「スペクトル管理標準」の策定などを行なう「SWG(サブワーキンググループ)4-6-5」のリーダーを務めていることに大きく関わっている。訴状では、「被告が、TTCの専門部会のリーダーとしての立場にありながら、その地位を濫用し、権限を逸脱して、一事業者である原告に対して、敵意を剥き出しとし、これを誹謗中傷し、(中略)外部に混乱を招いていることを意味するのである」としている。このように、BBTの敵対的立場にある小畑氏が、ADSLの標準化団体のリーダーであることが、TTCの公正中立な立場を脅かしていると、BBTは主張している。すでにBBTでは、8月19日これらを是正するよう要求する動議をTTCに提出しており、今後議論されることになっている。これらについて孫氏は「TTCは、公正中立な立場であるべきで、現在のように小畑氏が自分の会社が有利になるようなドラフトなどをどんどん推し進める状況には同意しかねる。学識経験者などの第三者を中心に据えて、公平なデータを基にドラフトや標準などを決めるべきだ」と語った。

 また、訴訟に関してイー・アクセスという組織としてではなく、小畑氏個人を訴えた点について牧野弁護士は「今回、最もはっきりとしているのが、小畑氏の言動だ。従って、小畑氏個人として訴えを起こした。しかし、訴訟の過程次第によっては、変更の可能性もある」としている。また、孫氏は「小畑氏の単独な言動であって、組織ぐるみのことだとは考えたくない。今回は、あくまでも小畑氏の営業妨害行為について正当防衛として訴えたまでだ。最も重要なのは、金銭ではなく、一般ユーザーの誤解を解きたいことと、これ以上の営業妨害を止めて頂きたいということだ。我々通信事業者は、お互いの技術で勝負して切磋琢磨していくべき。このような営業妨害は心外である」と語っている。また、和解の可能性については、「小畑氏が謝罪し、営業妨害を止めれば和解するつもりだ」とのこと。

 一方のイー・アクセス側では、BBTが20日に行なった説明会で孫氏が小畑氏に対する訴訟を示唆した発言に対して、Webサイト上で反論している。BBTがいう第一の不法行為に対しては、Annex C規格のADSL機器をAnnex A規格の機器やG.lite Annex C規格の機器と比較した実験であり、その結果ではBBTの社名やサービス名も明記してないので、客観的な実験結果の公表が営業妨害にあたるという主張には、賛成できないとしている。次の第二の不法行為に対して、説明会で小畑氏が指摘したものは、TTC標準に従って計算した結果を客観的に述べたものであって、営業妨害にはあたらないと主張している。また、他事業者への干渉という問題は、実際のサービス運用が開始されてからでは遅く、BBTがサービス開始以前に十分な検証を行なわないで運用を開始したことは、不適当であったと考えているという。

 今回の訴訟では、小畑氏個人が被告として訴えられたが、これに対してイー・アクセスがどのような対応を取るのかが、今後の注目点だろう。また、BBTは訴状の中で小畑氏のTTCの立場についても触れており、TTCが関係してくる可能性もある。何れにせよ、訴訟となった以上、両者の主張から目が離せない状況だ。

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(2002/8/27)

[Reported by otsu-j@impress.co.jp]

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