ウォッチャー金丸のNEWS Watch
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1997年5月28日版


HEADLINE 4 articles

米でインターネット投資熱冷める?
セキュリティーソフト製品の相次ぐ発売
インターネットワーキング技術・コンソーシアム設立
野村総研の特許情報サービス「NRIサイバーパテントデスク」
余談2題:日本IBMのDVD-ROM搭載PC/セガ・バンダイの結末


[インターネット投資](レベルA)
●米でインターネット投資熱冷める?


 日経新聞17面には、米国のベンチャーキャピタル(VC)が投資先の選別を強め、インターネット関連企業への投資が減少するという記事が掲載されている。米VCはここ1~2年、インターネット関連企業に広く投資してきたが、NASDAC(米店頭株式市場)での新規公開株人気の陰りでイントラ/エクストラネット用などの法人向けソフト開発を手掛けるような、株価の早期値上がりが見込める企業に投資を絞り込む動きが広がっているようだ。米インターネット関連企業が昨年1年間でVCから調達した資金は、19億ドルを超えたが、97年1~3月期では2.3億ドルに過ぎなかったというデータも出ているらしい。
 投資熱が冷めてきた理由としては、インターネット・サービスで収益を上げているベンチャー企業にYahoo!Amazon.comなど数々あるのだが、収益性が高いものは数少ないという現状が上げられ、この新聞記事にもあるように、投資してもなかなか利益が上がらないということがVCにもハッキリ分ってきたというのが、その際たるものだろう。
 インターネットという大きな実験場の上で、あれも出来るこれも出来るといった騒ぎ(熱)に、投資家達も巻き込まれて、若干30歳にして億万長者になれるというアメリカン・ドリームを実現してきたわけが、それも終わりつつあるというところなのだろう。インターネット・バブルは崩壊し、今後は企業や組織向けの地道な開発で、着実に収益を集めるベンチャー企業の資金収集力が上がってくる傾向はますます強まりそうだ。
 これまでの「こんなベンチャーがインターネットでこんな新しい(面白い)事を始めた」などという、わくわくするようなインターネット創世期の時代から、人々の生活にしっかり定着したインターネットをどの様に活用するかという、成長期から安定期へと米国は移行している事の現れの一つとも考えられる。
 さて日本では、と振り返って見ると、インターネット・ベンチャー企業を数多く創設出来ずにインターネット創世期の楽しみを知らないまま、いきなり安定成長期を迎えられるかどうかは、いささか疑問に感じられる。

 



[セキュリティー][ソフト](レベルA')
●セキュリティーソフト製品の相次ぐ発売について


 日経産業新聞2面には、コンピューター周辺機器の輸入・販売のヴァートが7月から、米ファイアウオールソフト大手のSECURECOMPUTING社のフィルタリングソフト「スマートフィルター」を販売する記事が掲載されている。インターネット接続用サーバーに組み込んで使用するもので、受信を遮断したいホームページのリストを27分野に分類し、受信者のニーズや方針に合わせて遮断するホームページを選択できるようだ。
 また、日刊工業新聞7面には、ヴァートと日本サントレンドマイクロの3社が27日、インターネット用セキュリティー関連ソフトの販売で提携する発表を行った記事も掲載されている。具体的には前記のヴァートの「スマートフィルター」や、日本サンが不正侵入防止用ソフト「ソルスタイスファイアーウオール-1V3.0」を発売する事のようだ。
 加えて、同じく日経産業新聞2面には、ネットワーク機器の開発と販売のマクニカは7月上旬から、カナダMilkeywayNetworks社のセキュリティー製品「セキュアアイティーシリーズ」の内、サーバーとPC間の伝達情報を暗号化するソフトの「アクセス」と、社外とデータ(メールも含む)をやり取りするときにサーバー情報漏れをチェックするソフト「オーディット」を販売する記事も掲載されている。
 上記の例を持ち出すまでもなく、このところ日本でのセキュリティーやファイヤーウォール、ウィルス対策などの事業に関する各社の取組みが、急を告げて来ているようだ。トレンドマイクロやソフトバンクが参画した「ワクチンバンク」の設立(5月14日のNEWSWatch余談その3参照)なども、その好例といえる。それもこれも、大阪・朝日放送のホームページがクラッカーによってわいせつ画像に書き換えられた事件(internetWatch5月20日記事及び5月26日記事参照)や、農水省のページに怪しげな音楽が張り付けられたケース(5月27日のinternetWatch記事参照)のようなことがこのところ頻発しており、インターネット・ユーザーのセキュリティーに関する意識がかなり高まって来ているのが、主要因だろう。
 現実の(ぎすぎすした)社会がネット世界に反映されていると簡単には言えようが、5月27日のinternetWatch記事にもある、ニフティらに対し名誉棄損への賠償命令が出された件でも明らかなように、ネット社会ではよりダイレクトに、そして手軽に甚大な被害を各方面に与えられるようになってきている。しかし、自分の家を守るには、塀も要れば屋根や壁も必要なように、ヴァーチャル・ワールドでも便利な中にも必要とされるセキュリティーの手間(作業)を厭ってはいられなくなりつつあるのは確かだ。
 上記のスマートフィルターのようにユーザーがサーバーによってセキュリティー管理されるようになるのか、それともその他のファイヤーウォール製品のようにユーザー自らセキュリティー管理をするようになるか、どちらになるにしろ、”防波堤”の中で”サーフィン”をするしか仕方がないくらいに、外洋(インターネット世界)の波浪は高くなってきているのかもしれない。



[ネット協議会][相互接続](レベルA')
●「インターネットワーキング技術・コンソーシアム」設立に関して


 日経産業新聞9面には、岡山県に高速地域インターネット網を築く「岡山情報ハイウェイ構想」の一環で、産官学の技術協議会「インターネットワーキング技術・コンソーシアム」が27日に発足し、村井・慶応大教授が代表に就任して挨拶を行ったという記事が掲載されている。また、昨日の日経産業新聞1面には、IIJNEC富士通など約20社がこの構想に参画して、年内にもインターネットの相互接続点を岡山県下に設ける記事も掲載され、まずIIJと東京インターネットが相互接続を果たす見込みということにもなっているようだ。
 5月26日のNEWSWatchでも、IIJ(AIH)の日本-アジア間のインターネット回線強化や、東京インターネットの新サーバー運用管理サービスについて、日本の2大プロバイダーの各々の取組みを取り上げたのだが、こういった行政サイドからのインフラ整備要請は、プロバイダーにとっては自らの回線強化につながるので、まさに渡りに船といった感じだろう。
 岡山情報ハイウェイ構想を推進している岡山県高度情報化実験推進協議会のページの中には、「実現に向けて」として、このハイウェイ構想は「いわば情報の道路づくり」と記述している事からも、上記以外の企業(NTT日立等)や、国や地方の行政(通産省郵政省建設省等)が、通常の高速道路づくりようなピッグプロジェクトの如く、こぞって参加している事も頷ける。
 相互接続ということで言えば、同じく昨日の日経産業新聞2面に、東京通信ネットワーク(TTNet)が26日、地域系新電電9社のほか三井物産、三菱商事、住友商事、KDDなど合計14社の共同出資でプロバイダー相互接続事業を業務とする新会社「メディアエクスチェンジ」を設立(4月21日のNEWSWatch及び、TTNetの4月21日のリリース参照)したと発表した記事も掲載され、またKDDも独自に相互接続会社「日本インターネットエクスチェンジ(仮称)」を設立する(5月8日のNEWSWatch記事参照)ということもあって、今回のように地方自治体が主導したり、プロバイダーを含めた通信業者や企業などが自らの情報インフラを活かすべく、ネットワークのより有機的な結び付きを求めた「相互接続」という事業そのものが、今年は相次ぐのだろう。



[特許サービス](レベルB)
野村総研はインターネット特許情報サービス「NRIサイバーパテントデスク」を開始

 日刊工業新聞7面には、野村総研(NRI)が、6月2日からインターネットによる特許情報サービス「NRIサイバーパテントデスク」を開始する記事が掲載された。特許庁が発行する公開公報をDB化して、その全文を図面付きで、簡単に検索・閲覧出来るようにしたようだ。
 既に4月28日から、6月2日の正式サービススタートのアナウンスがされており、6月20日までに利用を申し込むと入会金(1ユーザーで2万円)が無料になるキャンペーンも行っている。料金体系も固定制(ポイント制)と従量制(利用件数などによる)があるが、まずは無料デモ版ID発行を受けて、試してみるのが一番だろう。
 しかし、(財)日本特許情報機構(JAPIO)のイントラネット的特許情報サービス「パトリス・ウェブ」も4月から始まっており(4月4日のNEWSWatch記事参照)、また特許庁自体も、特許情報の要約をインターネットを通じて無料で公開する方針を固めた事からも(5月14日のNEWSWatch余談その1参照)、競合するサービスとの差別化を計らなければ、サービスを先行させたメリットを活かしきれなくなる可能性もあるだろう。
 情報自体に付加価値があるうちは、サービス競争の勝者に与えられるものは大きいが、特許情報自体を公開して使えるようにするのがこれからのトレンドのようなので、今後はより付加価値を求められる市場になりそうだ。



余談その1:
 日刊工業新聞8面には、日本IBMはDVD-ROM搭載のPCを今夏に発売するという記事が掲載された。外資系PCメーカーのDVD搭載機としては初で、デスクトップPCの「アプティバ」シリーズに搭載し、既存モデルと比べて約10万円ほど高くなる予定らしい。
 PCWatchの「この夏のボーナスでほしいもの」アンケート(6月3日締切)に、このIBMブランド機も入ることが出来るかどうかは、DVD自体の量と質のコンテンツ充実度に依るところが大きいだろう。

余談その2:5月26日のNEWSWatch余談その3の結末)
 日経新聞1面&日経産業新聞28面日刊工業新聞1面トップには、バンダイセガ・エンタープライゼスとの合併が解消になったという記事が掲載されている。また、日経新聞3面の詳細記事でも、この事態の裏側の経緯とバンダイ社内の確執を解説しており、何故急展開を見せたのか、参考になるだろう。
 NEWSWatchでの予想通り、日本のM&Aの難しさを示す例となってしまったが、これは人の結婚話と同じで、婚約(M&A)解消すれば、どちらかが一方的に申し込んだとしても、双方に傷跡(影響)を残すという教訓も残してしまった。(山科バンダイ社長引責の記事及び、大川CSK会長が関係会社であるセガの代表権のある会長に就任する記事参照)
 セガの合併解消の発表文も公表され、離縁状を曝してしまう結末となり、セガ・バンダイもプリ・ごっちも霧消してしまった...



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