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ちょっと知りたいページの裏側

第6回:フレッシュアイ

■フレッシュアイ
http://www.fresheye.com/

 「ちょっと知りたいページの裏側」は、皆さんがご存知のさまざまなサービスやコンテンツが、どうやって作られているのかといった、なかなか知る機会がないところをインタビューしようというものです。

 さて第6回目は、最新の更新内容がいち早く検索でき、最新トピック一覧もついた検索サイト「フレッシュアイ」です。フレッシュアイでは、10月に検索式を自動作成するウィザード機能などを強化したばかり。

 今回は、東芝にあるフレッシュアイ編集部にお邪魔し、東芝の赤嶺さん、平野さん、編集を担当する有限会社ぐるーぷ・アレフの草薙さん、高橋さんにお話を伺いました。

●目指しているのはポータルサイト

IW編>>まずはサービスを始められたきっかけを教えて下さい

平野:東芝の研究所がフィルタリング技術を持っていたからです。これを利用して、なにかできないかと考えていました。当初は検索サイトではなくて、ポイントキャストのような形にしようと考えていたんですよ。

赤嶺:最終的に事業化するときに、今更プッシュ型はないだろうということで(笑)。Webのサービスを目指したほうがいいのではないかということになりました。


IW編>>もう少し詳しく教えていただけますか。

平野:私ども東芝の中にアドバンスドアイ事業本部というのがあります。随分と前になりますが、東芝が情報関係を強化しようということで、「I戦略」というのがあったんですよ。それをさらに先に進んだI戦略を、ということで「Advanced-I」というのができたのです。こちらは副社長直属の事業本部になっています。

平野:この「Advanced-I」で、東芝が持ってるコア技術を新しい形の事業化に導けないかという試みがいくつもありました。そこで、フィルタリング技術を何らかの形で事業化しようという検討が始まったとき、世の中は「プッシュ型」と言われていました。フィルタリング技術というのは人手がかなり減らせるものですし、量もこなせます。プッシュ型にフィルタリング技術を結合させて、これで行こうと決まりかけたのですが、そのころになって雲行きがどうもポータルのほうが正しい方向ではないかという意見が上がって来まして。その方向に右習えをして、よしポータルだ! と(笑)。フレッシュアイでは、最終的にはポータルを目指しているんです。

草薙:今後、若干編集を加えていく検索エンジンというスタイルが大きな流れになっていくんじゃないかと見ています。単純なエンジンの性能だけでなくて、そういうサービス機能が必要じゃないかと。

平野:やっぱりユーザーはそんなに能動的じゃないですから。能動的なユーザー相手だと、どうしてもポータルには行けないと思うんですよ。検索エンジンではあっても、エンジンというのは、使いこなす人の労力やスキルや意欲を前提にしていますから。我々は、もうちょっと安楽椅子に座ってぼけーっとしてたい人…というとちょっと語弊がありますが、その人たちが楽しめて初めて、検索エンジンはポータルというもう一つ脱皮した形に行けるのかなと。


IW編:アクセス数はどのくらいですか?

平野:来年春には100万/日ページビューを予定しています。


IW編:フレッシュアイの運営は、どういう構造ですか?

平野:今、広告収入をベースにしたモデルを作っています。ただ、プロモーションは今押さえ気味にしています。システム増強とアクセスの増加は一応我々の事業計画があって、どっちが片方進んでしまってもまずいことになります。今は大体バランスがとれていて我々の計画通り行っています。


IW編:そういえば部屋の入口には「フレッシュアイ編集部」と書かれていましたね。編集部は何人ぐらいいるのですか?

赤嶺:東芝のメンバー3名と編集プロダクションとして参画いただいている「ぐるーぷ・アレフ」のメンバー3名の計6名で活動しています。


IW編:アレフと東芝の関係について教えて下さい。

草薙:東芝の中で、編集のお手伝いをしています。

平野:東芝はメーカーなので、編集スタッフのような人間を用意していません。特にこういった編集色の強い、テレビのチャンネルの代わり…というとちょっと極端ですが、そんなものを出そうとしていましたので。その場合、やはり外部の編集の道で来られた方にお願いしようと。


IW編:具体的にはどういったことを担当しているのですか?

草薙:トピックを担当しています。インターネットで面白いコンテンツがあるかどうか探し回って、探し回った結果を出すというサービスなんです。編集部でテーマを考えて実際に検索をかけ、テーマのコンテンツがあるかどうか探します。インターネットに情報がなければ意味がないですから、あってなおかつ面白いコンテンツが出るという式を毎日試行錯誤して、その中の一部でいけそうなものを出しています。

IW編:INTERNET Watchと似ているサービスですね(笑)

草薙:そうですね。従来の検索サイトでは、いい情報に当たるまでに時間がかかります。TV感覚で使って貰えるように、トピックを企画しました。インプレスさんのほうで関連した式を書いて、そのリンクを貼ると結構楽しいのではないでしょうか(笑)。


IW編:トピックのセレクションの基準や方向性はどうなのでしょう。

草薙:いくつか方向性があるんですが、まず一つは「今」の話題。もう一つはインターネットに存在するコンテンツを探すということです。レギュラー的なものと一時的なもの、この二つを主に探しています。意識的には、コンピュータ1/3、一般的なもの1/3、柔らかいものが1/3ぐらいです。雑誌的な構成を意識しています。

IW編:見たところややマニアックなものもあるようですが。

草薙:今雑誌などで話題になっていますが、「お宝写真」なんかをやったのも非常に早かったんですよ。それがすごいアクセスで。

草薙:ユーザーが作った面白いページが出るところを狙ってはいるんです。例えばYahoo!はみなさんが登録しているので公式ページを探すのに便利なんですが、個人で作っているおもしろいページ、おもしろいコンテンツがやはりちょっと辛いところがある。トピックでは、新製品でもニュースだけでなくて、ユーザーのコメントがたくさん載り出すとオープンするんです。作って暖めているものもあるんですよ。グルメ関係なんかすごく多いんですよ。ラーメン・カレーなど、こだわりものに関する情報は多い。

●重要なのは、長い間培ってきた言語処理技術のノウハウ

IW編:ハードウェア構成について教えてください

平野:ハードウェア構成については、申し訳ないのですが公開していないんです。各エンジンは、東芝が総合開発研究所で独自に開発したロボットを使用しています。内部的には、全文検索エンジンとフィルタリングエンジンと二つのエンジンがあります。


IW編:フィルタリングエンジンというのはどういうものですか?

平野:この事業の起点になるんですが、文章構造などや係り受けの関係など、日本語で書かれたテキストを構造解釈して、自動的に種分けしていくというものです。今のトピックの一番のベースになっている部分ですね。フィルタリングと全文検索エンジンの日本語処理のノウハウの部分では繋がっているところもあります。ただし、フィルタリングエンジンで使っている検索式はちょっと特殊で、ユーザーには見えなくなっています。検索式は検索式なんですが、普通の人が書いたりするのはたぶん不可能です。そのかわり、フリーでやるよりも遙かに確度が高いのです。これがなかったら、我々このサービスを事業化するということはあり得なかったですね。


IW編:なるほど。ほかに他社の検索エンジンとの違いはありますか?

草薙:アメリカ製のものは、向こうの自然言語処理のいろんな重み付けがあります。向こうの自然言語解釈と、それを重みづけして点数化していくしくみというのは、日米を比較すると若干違うなというのがあるんです。やはり、(結果の数が)出ることは出るけれど、それ以外もたくさん出るということが起きやすい。でも、英文を検索するとたぶん的確に出ると思うんです。

IW編:向こうの言葉ですと、単語は単語として決まっていますから、そこら辺のところをベースに検索しているということですね。

草薙:そうです。例えばgooなども検索エンジンそのものはアメリカ製ですね。その辺では若干、うちでは陰でやっている作業があります。そういう点数かとか重み付けとかいうところが若干やっぱり彼らと違う。世界にまれにみる特殊な言語ですから、日本語は(笑)。

平野:言語処理に関する技術は、我々の本当に長い蓄積ですね。それは日本初のワープロや日本初の機械翻訳から始まって、ずっと蓄積してきたノウハウです。それだけは一両日的にできるものじゃないですね。

赤嶺:私どもの事業部長が、ルポを開発した最初の開発者なんです。

平野:開発スタッフに機械翻訳に携わった人物も入っていますね。


IW編:ロボットの回り先はどうなっているんですか?

平野:ac.jpドメインについてはさまざまな事情がありまして、ちょっと控えている状態なんですが、それ以外のjpドメインに関しましては全自動で回っています。それから、comドメイン内の日本語サイト。これはちょっと優先順位がjpドメインに比べて若干落ちますが、こちらも巡回しています。ロボット能力に関しましては、現在いろいろな関係で若干本来の能力をセーブしている部分があります。これにつきましては順次完全解放してまいります。


IW編:それはやっぱり負荷の問題ですか?

平野:増強計画とアクセス数とのバランスなどです。

高橋:フレッシュアイの看板がきちんと立つ前に、あまり頻繁にロボットが行くと、みなさんにご迷惑をかけてしまうのではないかという懸念もありました。

平野:まぁ、ロボットの状況に関しまして我々が今満足しているかというと全然満足していません。まだまだ回り切れていないページが多数ありますし、我々の知らないところで日々更新されているページがありますので。

草薙:意外に多いのが、回ってくれよという要望なんです。見せたい人の方が意欲が強い(笑)。

IW編:逆に検索に出ないようにして欲しいといった要望はないのですか?

一同:ほとんどないですね。

赤嶺:ただ、ロボット型というのがやっぱり分かりにくいようで。何でも出てしまうので、「東芝がこんなページを出していいのか」というご意見はいただきます。

IW編:内容の規制はしていますか?

平野:規制は基本的にはありません。我々はそのページの内容について評価することはいたしません。あくまでも我々がプロファイルとか機械的なツールに基づいてご提供していきます。ご利用にあたりましては、ご利用者の方の良識に任せたいと思っています。

草薙:ただしHotトピックなどを僕らがやる場合、あまりにひどい公序良俗に反する悪いことを勧めるような形のページは、編集の観点からのみマスクをかけることもあります。

高橋:利用者が見たときに、これは楽しいと思うか、気分を害さないかというのはとても重要なことだと思っています。

●新鮮なサイトを探せる証拠

IW編:面白いエピソードや苦労話などがあれば教えて下さい。

赤嶺:目標を達成した暁には笑い話で話せるかもしれないんですが、今はこれ日々修行という感じで(笑)

平野:そういえば、トピックがこんなに出ると思わなかったですね。今までのトピックの中ですごかったのは、お宝もそうでしたけど、ドラえもんの噂ですか。あれもすごかったですね。お色気系がやっぱり強いんですが、これは、お色気系とは無縁なのにすごかったですね。

IW編:やっぱりアダルト系が強いんですか?

草薙:アダルトものってよくURLが動くでしょう。なおかつアダルトものでは、新しいものを求める。もしかすると、他社よりもそういったキーワードの検索が多いかもしれない。でも、我々はそれを喜んでいるんですよ。より新しく追いかけるものが出やすいからそこで定着しているんだろうと。

平野:今、検索のリンクというのはみなさん面白い使い方しているんですよね。自分のホームページの中に、検索エンジンのリンクを貼ったり。ただ、検索窓をみなさんが自分のホームページに貼られるのはとてもいいことだと思うんですが、それだとやっぱりメッセージ性に欠けるところがある。なぜ自分のホームページにその検索窓を貼り付けるのか、見た人は疑問に思うのではないかと思うんですよ。

草薙:フレッシュアイでは、自分で検索式を書いて、URLにしていただければ、そのものがコンテンツになると思うんです。これからそういうプロモーションというか、活動をしていこうと思っています。検索窓をつけるのではなくて、式を書いて下さいと。そうすると例えばディープなコンテンツを作っている人たちが、ほかに世の中にどんなコンテンツがあるのかクリック一つで探せるようになるわけです。自分で式を作ることに関して、こちらではなにも制約をしていませんから、これからそういうふうに自分のコンテンツを飾ってくださいと。

平野:作成機能を使うと、トップページのHotトピックと同じような形で、ブックマークした検索式がパッとリスト形式で出てきます。自分のつけたタイトルに従って裏で読み込まれた式が動いて、検索結果が出てきますので、結構メッセージ性の高い楽しい自分のホームページ作りができるんじゃないかと思います。

IW編:なるほど、自分の好きなしかも最新のリンク集になるわけですね。

平野:今のところ一日何回かデータベースを更新していますから、朝と夜でもきちんと検索結果がちゃんと違ってきます。もちろん、変わらないキーワードもありますよ。インターネットで情報が出てるか出ていないかという問題もありますから。でも、活発な話題ですと、3日も経てば必ず結果のリストが違います。僕は最初の頃「フレッシュアイ」と入れて毎日ひいていたんですよ。そしたら、だんだんリンクが増えてきたな、増えてきたな…と分かってきた(笑)。


IW編:今後の機能強化の予定などがあれば教えてください。

草薙:次の新しい編集タイプに向けて、企画を立てているところです。そんなに革新的なものではないのですが、サービスを順次アップして行きたいと思っています。第一段階が12月、その次が1月か、あと4月。ユーザーにいかに負荷をかけずに知りたいコンテンツをどうやって引き出せるかだと思います。

平野:今はリリース1.1ですが、1月前後に1.2ぐらいを用意しています。春の100万ページビューの時点では、もう少し大きなプレゼントを用意しています。自分のスタイルをあまり変えたくないユーザーさんに対して、検索エンジンをできるだけ分かりやすくくるんで持っていくと。そういう方向で次のものを出していきたいと思っています。あまり言えなくて申し訳ないんですが(笑)。トピックというものを一つ分かりやすい形で出したように、それがベースコンセプトですから。


IW編:ありがとうございました。

【インタビューを終えて】
この記事を公開する直前に、記者会見が行なわれるとの知らせが編集部に入ってきました。内容は、17日号でお伝えした通り「株式会社フレッシュアイ」の設立。このインタビューを行なったのは、記者会見以前だったわけですが、しきりに「まだ先のことは言えなくて…」と答えていたことは、今思うとこの記者会見の話に繋がっていたのかなと感じます。今回のインタビューでも「目指すはポータル」と明言しているとおり、今後は凸版印刷や電通と本格的にポータルサービスを展開していくとのこと。今後が楽しみです。


【編集部より】
この「ちょっと知りたいページの裏側」では、取材先を募集しています。「ぜひこのページをとりあげて欲しい」、といった要望がありましたら、おすすめの理由を添えてinternet-watch-info@impress.co.jpまでお送りください。

('98/11/18)

[Reported by junko@impress.co.jp / masaka@impress.co.jp]


バックナンバー

第1回:検索デスク('98/2/2)

第2回:日本のコンピュータ情報(富士通)('98/3/4)

第3回:goo('98/4/21)

第4回:RADICA('98/7/23)

第5回:東風荘'98/10/15)


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