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【不定期連載】

使ってみました!インターネットショッピング決済技術

第6回「CyberCash(サイバーキャッシュ)」

 昨年から本格的に始動したエレクトロニックコマースだが、そのほとんどが実験的なもので、実際に使えるところは少なかった。しかし今年になってようやく私たちにも利用できるものが増えてきた。一口にエレクトロニックコマースや電子決済と言っても、クレジットカードを使った支払いから、カラオケを一曲歌ったときにわずかな金額を支払うといったような使い方まで幅広い。このシリーズでは、WWWサイトのセキュリティの信頼性や「本当にお金を払ってまで使う価値があるの?」といった不安要素を検証し、さまざまな支払い方法(決済技術)を体験レポートする。

 さて、6回目は米国CyberCash社のクレジット決済手段「CyberCash」とプリペイド型の小口決済手段「CyberCoin」を紹介する。

CyberCashとCyberCoin

 CyberCash社が提供している決済サービスには「CyberCash」と「CyberCoin」の2種類がある。名前が似ている上、2つのサービスが「CyberCash Wallet」と呼ばれる1つの専用決済ソフトウェアで行なわれているため、少々違いが分かりにくい。

 CyberCashは通常の通信販売向けのクレジットカード決済だ。10ドル以上の商品販売に利用される。一方のCyberCoinは、0.25ドル~10ドル程度の小額決済向けで、ニュースや画像など、ネットワーク上で取引きが完了するデジタルコンテンツの決済に使われる。利用するには、あらかじめCyberCoinを購入して、決済ソフトに価値を溜めておく。購入する際には、クレジットカードで支払いをする。

考えられているが日本人には使いにくい専用決済ソフト

 CyberCashおよびCyberCoinは、専用の決済ソフトを利用して支払いを行なう。現在は英語版しかリリースされていないため、表示が英語であることや、決済通貨がUSドルになるといった点が少々使いにくい。また、CyberCoinは、Windows版でしかサポートされていないほか、現在のところシステム的な問題から、ほとんどの日本人はCyberCoinを購入できない(「ソフトウェアのインストールからCyberCoin購入」で後述)。

 決済ソフトは財布のような役割で、支払いはもちろんのこと、残高照会や購入履歴
なども決済ソフトで確認できるなど、利用者にとって使いやすく考えられている。

 取引情報も、暗号化には強力な1,024bitのRSA公開鍵と56bitのDES共通鍵が採用されているので、現在のSSLよりも強力なものとなっている。また、決済に関しては、CyberCash社の専用決済センターとユーザーが直接やりとりをするので、商店側へクレジットカード番号などの決済情報が行くことはない。逆に、何を購入したかという情報は決済センターへは行かないようになっている。

 なお、決済ソフトはCyberCash社のWWWサイトより無料で配付されており、'97年10月末現在、Windows版ではCyberCashとCyberCoinともに対応。Macintosh版は、CyberCashのみとなっている。CyberCashは決済ソフトをダウンロードした人はすでに100万人以上、取引件数も1日当たり1,000件を越えているという。

 CyberCashは世界的な広がりをみせており、本誌10月3日号の記事にもあるが、'97年12月中旬から日本語版のCyberCash実験も開始される予定だ。今後、日本での広がりが注目される。

全てオンラインで登録!

登録までの大まかな流れ

 1.ソフトのダウンロード
 2.ソフトのインストール
 3.ユーザー登録
 4.クレジットカード登録
 5.CyberCoin購入(Windows 95版のみ)

■まずソフトをダウンロード

 CyberCash社のWWWサイトにアクセスしよう。決済ソフトは「Shopper」コーナーより「Download Wallet」を選択し、利用しているOS、Name、Emailを入力後「DOWNLOAD WALLET HERE」を押すと、ファイルの転送が開始される。ファイルのサイズは、Windows版が1,760KByte、Macintosh版が992KByteと少々大きく、ダイアルアップ接続の方は時間がかかるので注意が必要だ。

■ソフトウェアのインストールからCyberCoin購入まで

 ソフトウェアのインストールは、インストーラーに従って進めていく。通常のソフトのインストールをしたことがある人なら、特に問題はないだろう。またユーザー登録はオンラインで行なえるが、Windows 95の方は「CyberCoin」の分だけ設定項目が多く、Macintoshとは登録手順に違いがあるので、それぞれ分けて紹介する。

-Windows 95の場合-

 ダウンロードしたプログラムを実行し、ソフトウェアのインストールを行なう。ファイルのインストール先を確認すると、あっという間に処理が終わり、続けて自動的にユーザー登録が始まる。CyberCashに関する3種類の利用許諾を確認し、「I Agree」を押して先に進むと、ユーザー情報の入力画面が表示される。

 まずは「Wallet ID」の入力で、好きな名前を入力する。ただし、入力した名称がすでに使われている場合は、末尾に数字が付加された値が自動的に提示される。ほかに、企業ユーザーや学生などは、決済ソフトにProxyの設定をする必要があるかもしれない。その後、E-mail、Password、Verification ID、Language、通貨の順で入力すると、ネットワーク経由でユーザー登録がされ、先ほど入力した「Wallet ID」にランダムな数字が付加された「Wallet ID」が表示される。

 この「Wallet ID」や暗号鍵などをパソコンのトラブルといったことからの紛失を防ぐために、フロッピーディスクに登録情報を保存することができる。なお、この保存は後からでもできる。

 続いてクレジットカードの登録作業に進んで行く。作業を一時中断したい場合は「Pause」を押せば、実際に必要になる時まで登録する必要はない。登録できるカードがある場合は、クレジットカード情報や住所、連絡先などを入力すると、10秒程度で登録は終了する。利用できるカードはVISA、Master、American Express、Discover、Internet Shopping Networkの5社だ。

 さらにCyberCoinの購入画面に移る。こちらも先ほどと同様に「Pause」を押すと一時中断できる。

 先ほど「ほとんどの日本人はCyberCoinを購入できない」と書いたが、実は試してみた当初はそれがわからなかった。購入を試みたところ、いつまでたっても処理が終わらず、数分後にTimeOutになってしまう。サーバが混み合っているのかと思い、何度かチャレンジしてみたがまったく変わらない。どうしてもうまく行かないので、日本CyberCash社へ問い合わせてみたところ、米国で発行されたクレジットカード以外は登録できないとの返事だった。

 話によると、CyberCoinを購入するときは、より安全性を高めるためにクレジットカード番号などのほかに、入力された住所や連絡先とクレジットカード会社にある住所や連絡先とを確認しているという。しかし、現段階では日本で発行されたクレジットカードでは、住所や連絡先の確認処理ができず、結果としてCyberCoinを購入できないとのことだ。また将来的には一度購入したCyberCoinを現金に払い戻しできることも考えて画面設計されているようだが、現在は対応していない。

 ちなみに購入する時は、20ドル~1,000ドルまでの範囲で、10ドル単位のCyberCoinを購入できる。

-Macintoshの場合-

 Macintosh版はダウンロードが終了すると、インストールプログラムが自動的にできあがる。これを起動させるとインストールが始まり、使用許諾の確認が表示されるのでこれに同意すると、自動的にインストールができた。

 さっそく決済ソフトを起動すると「New Wallet」ボタンが表示される。「New Wallet」を押すと、新規のCyberCash口座の登録が始まるので、画面の指示通りWallet ID、Email、Languageの順に入力して行く。すると、Windows 95版と同様に入力したWallet IDにランダムな数字が付加されたWallet IDが表示される。なお、企業ユーザーや学生などは、決済ソフトにProxyの設定をする必要があるかもしれない。

 ユーザー登録が終わるとメニュー画面が表示される。CyberCashを使うためにはクレジットカードの登録が必須なので、「Accounts」ボタンを押し、「Add Card...」を選択する。これでクレジットカードの登録ができる。Windows 95版と同様に利用できるカードを登録すれば準備は完了だ。

支払決定は決済ソフトの「Pay」ボタンを押すだけ

利用までの大まかな流れ

 1.購入する商品を選ぶ
 2.支払方法でCyberCash指定
 3.決済ソフトから料金の支払い指示

■注文はWWW画面から

 さて、BARBECUE SOURCEよりバーベキューソースを買ってみよう。バーベキューソースのギフトセットを選び、商品の内容確認の画面が表示されるので、商品、金額ともに良ければ「CheckOut」を押す。3通りの支払い方法が選べるが、ここでは「payw/Cybercash」を選択する。再度確認のために取り引き内容が表示され、商品の届け先を入力する。すべて間違いなければ「Pay」ボタンを押せば終了だ。

 注文が終了すると、先にインストールした決済ソフトが自動的に起動される。ただし初回だけWWWブラウザーの設定上、パソコンのどこに決済ソフトがインストールされているかを指定しなければならない。どこにも注意書きなどが見当たらなかったので、初心者には分かりづらいところだ。

■CyberCashはどうだった?

 起動されたプログラムは自分以外が利用できないように、パスワード入力待ちになっている。パスワードを入力すると即座に購入金額や購入先情報が表示され、これを確認して「Pay」を押すことで最終的な購入が確定する。

 さすがに専用の決済ソフトだけあり、購入履歴やどんな操作を行なったかといった通信履歴が記録されている。特に、購入時に商店の住所、連絡先などが確認できるところに好感を持った。

 多くのWWWサイトでは、購入した店鋪の連絡先がどこに書いてあるかが統一されていないが、CyberCashでは決済ソフトで購入情報や購入先が確認できる。何か作業をするたびに通信記録として記録が残っている点も、ネットワーク上の通帳のような役割をするので安心だ。特にお金を払うということが明確に分かる点が良い。また本文中には書かなかったが、一台のパソコンで複数の利用者を登録して使うこともできた。

 反面、決済ソフトへの設定も多く、初心者の方には分かりにくいだろう。初めてCyberCashを使って支払いをする時は、WWWブラウザーの「Helpers」設定をしなければならず、利用する時に警告メッセージが表示され、いきなり設定作業をするところも分かりにくい。特に予想外だったのは、専用ソフトなのでインターネットに接続しないでも過去の取り引き情報が確認できると思っていたが、パスワードを入力すると個人認証の為にネットワーク経由で照会されてしまい、オフラインでは確認できない点だ。パソコンの設定によっては自動的に接続されてしまうので、注意が必要なところだ。

 またCyberCoinが米国以外から発行されたクレジットカードでは、利用できないという話は初耳であった。

 世界規模に広がりを見せているCyberCashは、その仕組みは良く考えられているが、米国の決済方式なので、加盟している店舗はほぼすべて海外のものだ。どうしても言葉の問題や通貨の扱いにくさがあるが、海外からの個人輸入を考えると、見ず知らずのWWWサイトから買い物をするよりは、はるかに安心して利用できるだろう。また年内には日本でもCyberCashの実験が始まる予定なので、大いに期待したい。

CyberCash & CyberCoin スペック

●入会にあたって

 入会条件:電子メールを利用できる人
      クレジットカードを持っている方

●利用にあたって

プラットフォーム:SSL対応ブラウザー
         CyberCoinを使う場合はWindows 95環境及び
         米国で発行されたクレジットカードを持っている
費用:
入会金、年会費共に無し
利用技術:
専用ソフトにRSA暗号をはじめ各種技術


◎評価基準(三段階評価)

 設定の簡便 :☆☆
   ○専用ソフトやWWWの設定などが面倒。
 安全性の配慮:★★★
   ○1,024bitのRSA公開鍵及び56bitのDES共通鍵という強力な暗号技術が
    使われている安易なユーザーIDを登録しても、下桁にランダムな番
    号をつける事により、ユーザーIDが全く同じとある事を避けられている。
 利用金額  :★★★
   ○クレジットカードと同じレベルの利用限度額を利用する事ができる。

('97/12/8)

[Reported by Watcher小林(chibiayu@sag.bekkoame.or.jp) ]




第1回「TSM(トッパン・セキュア・モール)」
/www/article/970509/ec.htm

第2回「BitCash」
/www/shopping/bitcash.htm

第3回「アコシス」
/www/shopping/acosis.htm

第4回「First Virtual Internet Payment System(ファーストバーチャル)」
/www/shopping/fv.htm

第5回「QQQ Members Commerce System(サンキューシステム)」
/www/shopping/qqq.htm

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