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WinnyやYouTubeにおける著作権侵害、ACCS久保田専務理事が考える対抗手段

米eEyeのWinnyノード検索ツール「Winnybot」は現在検証中

ACCS専務理事の久保田裕氏
 ファイル交換ソフト「Winny」のネットワーク上で流通している著作権侵害ファイルへの対策として、コンピュータソフトウェア著作権協会(ACCS)は6月、特定のファイルを保有するノードを検索できるツールを試験導入する方針であることを明らかにした。

 このツールは、米eEye Digital Securityのシニアソフトウェアエンジニアである鵜飼裕司氏が開発した「Winnybot」のこと。ファイル名またはハッシュ値で検索することで、該当するファイルを保有するノードのIPアドレスのほか、出現時間、ファイルに付けられたトリップなどの情報を参照できる。

 ACCSではWinnybotの本格運用をいつから開始するのか、またこのツールで得られた情報をもとにどうような活動を行なうのか、ACCS専務理事の久保田裕氏に話をうかがった。さらにインタビューでは、Winnyに加えて、「YouTube」などのようなサーバー型サービスにおける著作権侵害への対策にも話は及んだ。


著作権侵害ファイルを保有しているユーザーに警告メッセージ

「Winnybot」の検索インターフェイス画面(写真提供:eEye Digital Security)
──このようなツールを導入したいという意向は以前からあったのか?

久保田氏:私個人の意見だが、「WinMX」の時代は、「公衆送信」や「送信可能化」ということがどういうことかわからないユーザーがたくさんいたと思う。しかも(P2Pソフトでは)個々のユーザーがつながっているイメージのため、違法性が認識しにくかった。そこで、「あなたがやっている行為は著作権侵害ですよ」「もしかしたら著作権侵害の可能性が高いですよ」ということを教える必要があった。インスタントメッセンジャー機能を使って「あなたの行為は著作権侵害の恐れがあるので、警告します」と、ACCSの担当者が手動で行なっていた。

 ところが、Winnyにはそういう機能がなかった。前提として、誰が使っているのかわからなければ警告もできないため、そういう意味では、鵜飼氏の開発したツールが言葉通りの機能を持っているのであれば、非常にありがたい。

── 一部報道では、著作権侵害ファイルを公開しているユーザーを特定して摘発に乗り出すなどと報じていたが。

久保田氏:ユーザーが特定できても、最初から刑事手続きを取ったり、厳しい警告を出すのではなく、「あなたの行為は、少なくとも著作権侵害の違法行為に荷担していますよ」と伝えることが、ACCSの立ち位置からすると非常に重要。それを何回繰り返しても止めない確信犯に対しては、法の執行まで話は進むだろう。

 私はユーザーに対して、「そういうことをやると誰が困るのか? いずれは自分の首をしめちゃいますよ」という話をしていくことは、広報・啓発としてやっていきたいし、その前段階としてユーザーにメッセージを送ることが可能ならば、最初は自動送信で繰り返し警告することがあってもいいと思う。

──IPアドレスがわかっても、警告メッセージを自動送信するとなると、ISPと連携・協力が必要になる。

 久保田氏:海賊版の削除要請などを行なうようになって、いろいろな所でISPと情報交換できるようになった。特に警察庁の下で開催している「総合セキュリティ対策会議」では、ISPとも席を並べている。みんなが協力して有害情報や違法情報を排除していこうとする中で、信頼関係は出来てくる。

 法律上は「通信の秘密」ということはあるが、公益性のある活動は、民間のガイドラインの中で、法律ともバランスのいい所でお互いに理解しあって進めていこうという動きがある。その流れから言えば、ACCSが警告を出すためにISPの力を借りることは可能だと思う。


Winnyを利用すること自体が著作権侵害に荷担しているというのは言い過ぎ

──意図せずに、たまたまキャッシュとして著作権侵害ファイルを保有していたユーザーにも警告メッセージを送ることになるのか?

久保田氏:段階はあるだろう。中が何のファイルかはわからず、誰かにその領域を貸しているというぐらいの認識しかないかもしれない。ただ、著作権侵害を助長する技術に基づくネットワークに参加して、自分の(ハードディスクの)領域を貸すということの意味をどう評価するかがポイント。

 確かに、ユーザーの中には、著作権の切れたものをWinnyという非常に便利な技術を使ってやりとりするんだという人もいる。しかし、実態調査の結果(※1)から見れば、著作権侵害を前提としてしまう、もしくは専ら著作権侵害に利用されている技術に対して、自分のPCを共有機能の中に貸すというか、自分もその領域にユニットとして入るという行為は、私としてはかなり問題があるだろうと思っている。

──そうであれば、Winnyのネットワークに参加していること自体、違法行為に荷担していることだと訴えていく方法もあるのではないか?

久保田氏:技術のフェイズと言えばいいのか、それには非常に微妙な問題がある。(Winnyを開発した)金子勇氏の言葉を信じるとすれば、Winnyはセキュアなものに移行していく中で実験的に公開されていたという。それが過渡期に広まってしまったことは本当に不幸。もっと実験的に行なうことによって、セキュアな領域に発展させていくつもりだったというのであれば、私は全部を過去に逆上って否定したくはない。したがって、「あなたの参加している行為は蓋然性から言って違法行為に荷担している」というのは、ちょっと乱暴かもしれない。

※1 「2006年ファイル交換ソフト利用実態調査」によると、音楽ファイルの91.1%、映像ファイルの86.2%、ソフトウェアの58.2%が、著作権などの権利の対象で、かつ権利者の許諾がないものと推定されている。


Winnybotの試験運用に入る前に法的な検証が必要

「Winnybot」の検索結果画面(写真提供:eEye Digital Security)
──6月の時点で試験導入と報じられたが、本格的な導入はいつからの予定か?

久保田氏:稼働させてみなければ、技術に穴があるかどうかわからない。例えば、故意ではなくても、法律的に不正アクセスにあたることをプログラムがやってしまうと、「そこまで読んでなかった」では済まされない。

 我々からすると、Winnyを使っているユーザーのIPアドレスを集めてくる機能があると説明を受けただけでは、とても心配。実際、パイロットケースで2カ月か3カ月やってみて、懸念されている問題がないということでなければならない。ただ、現在どこまで調査が進み、評価がいつ出せるかということは、まだお伝えするような状況ではない。

──試験導入ではなく、まだ検証の段階ということ?

久保田氏:検証中です。正直なところ、6月に鵜飼氏が説明に来て、NHKに取材された時点からそれほど状況は変わっていない。検証がいつ頃終わるかということのめども立っていない。

 別の案件だが、Winnyの通信規制を予定していたISPに総務省が待ったをかけた例もある。ACCSも(Winnybotの導入について)監督官庁や他の官庁から電気通信事業法上問題あるのではないかと指摘されてしまうと、法律を守ることを呼びかけている団体としては非常に厳しい。そういうリスクなどが本当にヘッジできている状況にならなければ、具体的な情報を公表することは難しい。

──不正アクセスに該当しないかといった点のほかに、具体的な検証項目は?

久保田氏:他の法律違反の懸念がある動作をしないのかという観点がある。例えば、そのユーザーがどんなファイルを保有しているかといった情報までサーチしてくるような機能があるとすれば、他人の家に上がり込んで書棚を見て歩くようなもの。憲法における思想・信条の自由に関連して問題を指摘される可能性がある。そういう機能はないと聞いているが、検証の必要がある。(※2)

※2 法的な検証の必要性については、Winnybotを開発した鵜飼氏自身も強調している。「Winnybotの利用については、事前にしっかりとした法的な検証が必要であると考えている。技術提供を行なう立場として、現在、ACCSを含め各関係機関と意見交換を行なっている。法的な懸念事項がクリアになり、権利者団体にWinnybotを利用してもらうことができれば、Winnyの利用者を減少させ、情報流出の問題、脆弱性の問題に対する有効な一手になるのではないかと期待している」(鵜飼氏)。


海賊版流通はファイル交換ソフトによるものが一番脅威

──ファイル交換ソフトによる海賊版コンテンツ流通の被害規模はどれぐらいあると見積もっているのか?

久保田氏:付加価値の高いビジネスソフトがインターネット上にアップロードされること自体どういう被害があるのか、それを把握・計算するのは難しい。しかし、可能性という意味では、アップロードされた時点で世界中のパソコンにダウンロードされる危険がある。それほどの脅威があると考えていいのではないか。被害額と言うと、その定義から始めなければならない。アップロードされた時点で、ソフトの財産的な価値はものすごく下がるという言い方しかできない。

──インターネットオークションや露天売りによる海賊版流通と比較するとどうか?

久保田氏:インターネットオークションの悪用によるものもかなり多いが、ファイル交換ソフトが一番危険だろう。P2P技術を使っていることで、私的な領域と思って当人も意識をせずに「繁殖」していくような面があると、結果としてファイル交換ソフトは脅威だ。


さらに「YouTube」の著作権侵害コンテンツ対策も自動化?

コンテンツの違法コピーの問題は、著作権侵害による損失だけでなく、情報の信憑性の低下も招くと指摘する
 著作権侵害ファイルを保有するユーザーのIPアドレスが特定できたとしても、WinnyのようなP2Pのファイル共有ネットワークの場合は、ISP経由で警告メッセージを送るといった活動までしか行なえない。しかし「YouTube」などのようなサーバー型のサービスにおける著作権侵害に対しては、久保田氏は、より踏み込んだシステムを頭に描いている──

久保田氏:ACCSの会員会社が持つコンテンツのデータベースがあれば、(著作権侵害ファイルにあたるものを)自動で瞬時に削除していくことは、私は法的にはトラブルにはなりにくいと思う。権利の保護期間内にあり、著作権者が明確なコンテンツの情報をデータベースとして持っていて、これを基にプロバイダーに削除してもらうというのはそんなに難しいことではないと思う。

──ISPが名誉毀損にあたる情報の削除依頼に対応する場合のようなプロセスは必要ない?

久保田氏:著作物の場合はない。プロバイダー責任制限法では、人権侵害の問題と、著作権侵害のように一目瞭然の問題を並列に扱ってしまった。名誉毀損のような表現の自由と公共の福祉がぶつかり合うような問題と、著作権は違う。

 (自動削除するシステムに)仮に問題があるとすれば、同じようなタイトルのコンテンツがあって、それを間違って削除してしまうことだ。しかし、いったん削除してしまったとしても、すぐに復活できる仕組みがあれば、それで誰かが大きな損害を受けるということではないだろう。間違って公開され続けるよりは、ずっと損害は少ない。

 私は、日本が率先して進めれば、YouTubeでもいいし、アメリカや世界に導入を求めていくことができる。もしかしたら、この方法がデファクトスタンダードになるかもしれない。そうなると、鵜飼氏の開発した今回の技術も、DRM技術や削除技術と組み合わせることによって、世界の標準作りみたいなことにならないだろうか。ACCSは、会員会社の持っているこういった技術をプログラム化したものを著作権で保護している団体だから、電子技術というものに重きを置いている。

 私が必ず言うのは、“法”“電子技術”“教育”の3つからアプローチしていかなければ、もう高度情報化社会は担保できないということ。その中で電子技術は、自動削除技術のようなものが非常に重要になる。ただ一方で、法にも救済規定がなければいけない。人間だからミスをすることもあるし、逆に機械だからミスをすることもある。法がこれをうまく救済してくれるようなバランスを考えたシステムがあれば、それほど大きなデメリットはない。

──ありがとうございました。


関連情報

URL
  コンピュータソフトウェア著作権協会
  http://www2.accsjp.or.jp/
  関連記事:「ファイル交換の状況は監視しています」〜ACCSが活動内容を報告
  http://internet.watch.impress.co.jp/www/article/2002/0528/hotline.htm

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( 聞き手:永沢 茂 )
2006/09/06 18:40

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