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今後のYouTubeとの協議方針をJASRAC渡辺氏に聞く

著作権権利者団体・事業者、3月中にYouTubeに要望書を提出へ

 動画共有サイト「YouTube」上に著作権を侵害するコンテンツが掲載されている件について、テレビ局やレコード会社など24の著作権権利者団体・事業者は、次回のYouTubeとの協議で要請する項目を3月中にYouTubeへ提出する見込みだ。次回協議の日程は、要望書を提出後にYouTubeと相談するという。著作権権利者団体・事業者の一員である日本音楽著作権協会(JASRAC)送信部部長の渡辺聡氏に、前回のYouTubeとの協議の感想と、今後の協議の方針を伺った。

 国内の著作権権利者団体・事業者と米YouTubeの幹部は2月6日、都内で2時間にわたって協議。その結果、YouTube上で違法なアップロードをしないよう日本語で警告文を早急に表示するという約束をとりつけた。しかし、著作権侵害の抜本的な事前防止策については開発に時間がかかるとされ、著作権権利者団体・事業者は今後もYouTubeとの協議を続ける方針を示していた。


番組を丸ごとアップロードする「ディレクターアカウント」が問題

日本音楽著作権協会(JASRAC)送信部部長の渡辺聡氏
――まず、2月6日に開催された協議について、どのような感想をお持ちでしょうか。

渡辺氏:初めて直接的な話し合いが実現したことと、YouTube側が著作権問題を尊重していることを確認できたことは評価しています。日本語による警告文は協議後2週間で実施され、YouTubeの幹部から「対応しました」という旨のメールが送られてきました。ただ、抜本的な対策については、今後も頻繁に協議をする必要があると考えています。

――著作権権利者団体・事業者では、3月9日に次回の協議で要請する項目を話し合ったそうですが。

渡辺氏:YouTubeにおける著作権侵害コンテンツの現状が話題に上りました。ある放送局の担当者は、YouTubeとの協議後、一時的に違法アップロードが減ったと話していました。しかし、大きな問題として、10分を超える動画をアップロードできる「ディレクターアカウント(※)」を使って、テレビ番組を丸ごとアップロードする行為が見られることが挙げられました。この問題は、YouTubeとの前回の協議時には把握していなかったことです。

 ディレクターアカウントを取得するには、個人情報を入力する必要があるのですが、実際には偽名が使われる可能性もあり、違法アップロード対策にはつながっていないように見受けられます。次回のYouTubeとの協議では、この問題に対処してもらうように要請するとともに、著作権侵害の抜本策の詳細と導入時期についても確認します。著作権権利者団体・事業者では、これらの要望をまとめて3月中にYouTubeに提出する予定です。次回の協議については、要望書を提出後にYouTubeと日程を調整します。

※ディレクターアカウントとは、YouTubeで10分以上の動画をアップロードできるアカウント。YouTubeのアカウント申し込みページで、通常のアカウントと同様に、氏名や住所などを入力すれば無料で取得できる(関連記事)。ただし、YouTubeの親会社であるGoogleの日本法人によれば、「違法アップロード対策のために、現在は原則としてディレクターアカウントでも10分以上の動画を投稿できなくなっている」という。


フィンガープリントを使った違法アップロード対策が開発されている

JASRAC本部
――YouTubeは、アップロードされた動画をスキャンすることで、著作権侵害コンテンツかどうかを確認するシステムを開発しているそうですが。

渡辺氏:現状では、違法アップロードをYouTubeに通知する“Notice & Take Down”により報告された動画と全く同じコンテンツを削除しています。ただ、この仕組みでは再生時間が同じ動画しか検出できないため、今後は、再生時間が異なる動画にも対応するとしています。技術的には、コンテンツのハッシュ値による検知に加えて、フィンガープリントを活用するとも話していました。

――フィンガープリントとはどのようなものでしょうか。

渡辺氏:あらかじめコンテンツにデジタル署名を埋め込む「電子透かし」とは異なり、フィンガープリントでは、まずコンテンツの音源の波形を採取します。この波形をYouTube上のコンテンツと照らし合わせることで、違法投稿かどうかを確認するわけです。動画にも音声が付いているので、YouTube上の動画にも応用は可能だと思います。YouTubeは、フィンガープリントを利用するにはコンテンツホルダー側の協力が必要と話していました。この点については、YouTube側がフィンガープリントのデータベースを持つ会社を利用することも可能だと思います。こうした仕組みが整えば、アップロードされた時点で自動的に違法コンテンツをチェックすることが可能になるでしょう。ただし、フィンガープリントを提出するには、「まずはYouTube側が違法アップロードの現状を解消することが前提」というのが著作権を持つ側の考えです。

――著作権侵害の抜本策について、24団体がこのようなシステムを作ってほしいという具体案は提案しているのでしょうか。

渡辺氏:Googleが親会社ということもあり、優秀な技術者も多いと思うので、まずは相手側が技術的な解決策を提示すべきだと考えています。現状ではYouTube側から具体的なシステムが提示されていませんが、詳細がわかれば、そのシステムがどの程度有効に使えるのかなど、こちら側も意見を出すつもりです。

――最近では、はてなの「Rimo」に見られるように、自社サーバーで動画を持たず、YouTubeで公開されている動画を再生するサービスが出てきましたが、こうしたサービスについて、どのようにお考えでしょうか。

渡辺氏:24団体側で特にアクションは起こしていません。問題がある場合は、動画の提供元であるYouTubeに抗議することになるでしょう。最近では、独自サーバーを使って動画を投稿できる「SMILEVIDEO」が開設されましたが、このようなサービスで著作権侵害コンテンツがアップロードされれば、直接削除要請をすることになるでしょう。

――ありがとうございました


関連情報

URL
  日本音楽著作権協会(JASRAC)
  http://www.jasrac.or.jp/
  YouTube(英文)
  http://www.youtube.com/

関連記事
YouTube幹部とJASRACなど23団体が協議、違法投稿について議論(2007/02/06)


( 増田 覚 )
2007/03/22 13:21

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