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“3Dインターネット”は、Web 2.0の次のパラダイム

ngi groupの新会社「3Di」が手がけるメタバース事業とは

 ngi group(旧ネットエイジグループ)子会社の3Diとngi mediaが17日、「Second Life」をはじめとするメタバース(3Dバーチャルワールド)に関する情報を専門的に扱うポータルサイト「THE SECOND TIMES」をオープンした。3Diは、その名の通り“3Dインターネット”事業のための会社として、ngi groupが6月に設立した会社だ。THE SECOND TIMESの開設に至る経緯なども踏まえながら、ngi groupにおけるメタバース事業の位置付けについて、3Di代表取締役社長の小川剛氏と代表取締役副社長CTOの竺振宇氏に話をうかがった。


“Web 2.0”の次に来る“3Dインターネット”を中核事業に

3Di代表取締役社長の小川剛氏(右)と、代表取締役副社長CTOの竺振宇氏(左)
──まずは、社名の由来ともなっている3Dインターネットの位置付けを教えてください。

小川氏:ngi groupでは、“Web 2.0”の次に来るものは何かを検討し、それは3Dインターネットだという結論を出しました。3Dインターネットは、まさにngi groupの中核事業の柱として動き始めました。

──3Dインターネットとメタバースとは違うものなのでしょうか。

小川氏:我々の中では、3Dインターネットという大きな事業の中に、「メタバース」「Web3D」「ネットワークゲーム」という3つの分野を設定しています。THE SECOND TIMESは、このうちメタバースをテーマとしたサイトです。また、これら3つは、PCだけではなく、モバイルやゲームなどさまざまなネットワークのプラットフォームに乗ってくるものと考えています。我々はこれらを、3Dインターネットも包含して「Next Generation Internet」と呼んでおり、これがngi groupという新しい社名の由来でもあります。

──ngi groupの事業は今後、Web 2.0から3Dインターネットにシフトしていくと?

小川氏:我々としては、Web 2.0と3Dインターネット、さらには旧来のメディアも含めて全体を横断的にインテグレーションしていくビジネスがやはり求められるだろうという発想です。


すべてのeビジネスを“vビジネス”に

──ngi groupが手がける3Dインターネット事業の内容を教えてください。

小川氏:ビジネスモデル的には、「バーチャルサービス(v-service) 」「バーチャルビジネス(v-business)」「バーチャルプラットフォーム(v-platform)」「バーチャルテクノロジー(v-technology)」「バーチャルインテグレーション(v-integration)」という5つの事業があります。

 v-serviceとは、Second Lifeであれば、その中にオブジェクトを作ったりアバターを作るというクリエイティブの世界です。ただし、これは遅かれ早かれ過当競争になり、それほど儲かるものではないはずです。

 そうなると、v-business以降が重要になります。これは、リアルビジネスがeビジネスになっていったように、次はすべてがバーチャルビジネスに置き換わっていくという考えに基づいています。eビジネスではngi groupも相当の強みを持っています。これをバーチャルビジネスに変換していく事業をやっていきます。

──メタバース内に出店することがバーチャルビジネスなのでしょうか。

小川氏:出店することだけでなく、その中で課金・決済の仕組みを作ったり、ポイントサービスの展開、全体のマーケティングデータの提供など、eビジネスのバックエンドやパッケージソフトが実現していたような機能を、メタバースに進出する企業向けに提供していくことです。また、eビジネスで提供しているコールセンターについても、アバターが対応する“バーチャルコールセンター”に置き換えられます。メタバース内の人材派遣もニーズがあります。


日本人向けに独自開発のメタバースも展開へ

小川氏:v-platformは、メタバースのプラットフォームの独自開発を目指すものです。

──独自開発したとして、Second Lifeのようなメタバースは、日本でも普及するのでしょうか?

竺氏:たとえるなら、米国発のSNSは日本で受けないが、mixiは普及したということです。

小川氏:ngi groupは、Web 2.0の世界でミクシィという企業を育てました。mixiで学んだことを3Dインターネットでも実現しようと考えています。我々は日本人向けのメタバースのプラットフォームを作りたい。今話せるのはそこまでです。

──たとえば、mixiと何らかの連携をとることも考えられるのでしょうか。

竺氏:mixiだけではなく、テレビや映画などの既存メディアと横断する可能性はあります。さらに言うと、10年後にはもしかすると3Dインターネットがメインになっているかもしれません。逆に、(既存のサービスやメディアが)その中の一部になっているという考え方もあります。

──Second Lifeには高スペックのPCが要求されますが、日本ではノートPCが主流です。一方で日本では携帯電話がカギになると思いますが、まだメタバースを楽しめるほど高機能ではありません。独自開発するメタバースの携帯電話での展開は?

小川氏:限界があるからこそ仕掛けを考えているのであり、技術的なことで解決できるところまで来ています。現行の携帯電話で対応できるもので、年内には発表するでしょう。すでにプロトタイプは出来上がっています。


メタバース上をクロールする検索エンジンを開発

「THE SECOND TIMES」で提供するイエローページコーナー「Second Life ワールドディレクトリ」
小川氏:次に、v-technologyとは、THE SECOND TIMESのイエローページでも活用しているメタバースの検索技術など、いろいろな要素技術をプラットフォームなりサービスなりにからめて提供していくものです。テクノロジーの部分では、海外から提携の打診もあり、海外の技術をローカライズして提供していくこともあります。

──メタバースの検索技術とはどのような仕組みなのでしょうか。

小川氏:これは、ある技術を知らなければ、他社では実現できないものと言えます。この技術はグローバルで見ても、他に類を見ないようです。コロンブスの卵的な部分もありますが、メタバースの検索エンジンは世界初のサービス提供になるのではないでしょうか。

竺氏:まだ詳細は言えませんが、我々が開発している検索エンジン技術を使って、Second Lifeだけでなく、これからて出てくる他のメタバースも対象とした検索エンジンも展開することになると思います。THE SECOND TIMESで提供するイエローページは、その第1弾という位置付けです。

──イエローページでは、Web検索のように、キーワードで検索できるのでしょうか。

小川氏:将来的にはそうなります。イエローページと表現しているのは、最初から完全に検索エンジン機能を持たせることは難しいためです。

竺氏:イエローページの具体的な内容としては、島の位置や島の所有者、その島にどういう人が何人いるのかといった情報を示して、ユーザーがどこの島に行けばいいのか判断するための材料として提供します。今は、こういった基礎データをほとんどのユーザーは意識していないようですが。

──イエローページといっても、人力でデータを収集しているのではなく、メタバースをロボットのようなものがクロールしているということでしょうか。

竺氏:そうです。

──Webページであればクロールするというイメージはわかりやすいのですが、メタバース上をクロールする技術とは、いったいどういう仕組みなのでしょうか。

小川氏:そこは企業秘密です。話してしまうと、ピンと来る人はわかってしまいます。コロンブスの卵的とだけ言っておきます。

──それでは、インデックス化しているデータ量を教えてください。

小川氏:初期段階は、日本人向けにどの島がいいのかという情報に限定しているため、今は全部で約12,000島です。これにオブジェクトなど含めると膨大な数になりますが、まずユーザーが知りたいのはどこに行ったらいいのかという点です。そのため、このデータを数値化するのに力を注ぎます。

竺氏:ただし、12,000島のうち、どのくらいが有効なデータかという意味では、はっきり言って多くの島は住人がゼロなのではないでしょうか。これは推測ではなく、実際にデータをとってみて約半分はゼロです。誰もいません。したがって最初にイエローページで見せられるのは、約200島です。

 こういった基礎データがはっきりしていないうちは、各種サービスを提供できません。また、マーケティングモデルも作れません。我々はこの基礎データをマーケティングモデルのためのデータとしても使いますし、企業向けに提供もしていきます。


3Dインターネット事業は、旧来のWebとの連携がカギ

小川氏:最後のv-integrationは、これらの各事業を横断してインテグレーションしていくものです。Second Lifeと他のプラットフォームでデータの互換性がないことを考えると、さまざまなデータをいったん抽出した上で集計していく必要があります。こういった、Webとのクロスメディアやクロスコミュニケーション的なサービスは今後、需要が出てくるでしょう。

竺氏:今回開設したTHE SECOND TIMESも、3Dインターネット上のデータを抽出して従来のWebサイト上で検索エンジンとして展開するサービスですので、クロスメディアで展開したということになります。

──現在、日本人の住人があまり存在しない中で、日本企業がSecond Lifeフィーバーとも言えるような動きを見せています。参入企業は勝算があってやっているのでしょうか。

竺氏:おそらく、ビジネスモデルをはっきりと見据えた上で参入しているところはないのではないでしょうか。

小川氏:宣伝効果が大きいと判断して参入している企業が多いでしょう。1案件で1億円もかかるようなものではないので、予算内で取り組みやすく注目されやすいという考えです。インターネット業界にいる我々でさえ、「Web 2.0の次は何だろう?」というタイムラグがあったと思います。多分、企業のマーケッターや経営者の感覚からすると、Web 2.0の次にどういうメディア技術の潮流が来るのだろうと探していたときに、なんとなくSecond Lifeがタイミングが合っていたのではないでしょうか。

──Second Lifeへの参入が、広告効果だけでなく、売上の上がる事業となる時期はいつぐらいとお考えですか。

竺氏:Second Lifeについては、今年から来年にかけてみなさん考え直すのではないでしょうか。その後に、新の意味のビジネスが出てくると思います。

小川氏:2007年はSecond Lifeの年になると思いますが、多分、年内には、効果がないとか言われて叩かれ始めるでしょう。しかし、そこに複数のプラットフォーム、たとえばトランスコスモスさんやSBIホールディングスさんなど、Second Life以外の選択肢が出てくる中で、2008年にはメタバースで実現できることの幅が広がってきます。そうなれば、旧来のWebとのデータのやりとりやモバイルとのデータのやりとりが発生してきます。メタバースだけの技術を持っているような企業や、Web技術だけの企業は対応できません。我々は、単にSecond Lifeのオブジェクトを作る会社ではなく、最初からクロステクノロジー、クロスメディア、クロスコミュニケーションを狙っていることで他社との差別化を図っています。

──ありがとうございました。


関連情報

URL
  3Di株式会社
  http://3di.jp/
  3Di株式会社設立についてのニュースリリース(PDF)
  http://www.ngigroup.com/jp/press/release/files/07061902.pdf
  THE SECOND TIMES
  http://www.secondtimes.net/

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( 聞き手:永沢 茂 )
2007/07/19 15:53

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