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「Windows Live」でマイクロソフトが目指すオンラインビジネス戦略


 いよいよ日本でも「Windows Live」のサービスが正式スタートした。ベータ版の公開期間が比較的長かったため、スタート直後からユーザーの認知度は高いサービスといえる。このWindows Liveによって、マイクロソフトはこれまで以上にオンラインサービス事業に注力していく方針を打ち出している。

 Windows Liveの正式スタートによって、マイクロソフトが今後どのようにオンラインビジネスを展開していくのかについて、マイクロソフト オンライン事業部の笹本裕氏と小野田哲也氏に話を伺った。


コミュニケーションだけではないWindows Live

マイクロソフト株式会社 オンラインサービス事業部 事業部長 笹本裕氏
 今回のWindows Liveの正式スタートにあたっては、「Windows Liveメール」「Windows Live Messenger 2008」「Windows Liveフォトギャラリー」「Windows Live Writer」「Windows Liveイベント」「Windows Live Agent」「Windows Live OneCare ファミリーセーフティ」の各ソフトが正式版として公開された。

 また、サービス開始時期は明らかにされていないものの、NTTコミュニケーションズとの協業によって、Windows Live MessengerのVoIP機能から電話網に接続可能となる「Windows Live Call」の提供が発表されている。

 今回提供が開始されたサービスを群をみると、Windows Liveでは「コミュニケーション」の分野に非常に力を入れているように見える。しかし、笹本氏はWindows Liveはコミュニケーションだけではないと主張する。

 「確かにWindows Liveのユーザーは、その大半が“Hotmail”や“Messenger”といったコミュニケーションを目的としています。しかし、われわれはオンラインサービスのロングテール全体を提供していきたいと考えています。“ヘッド”はコミュニケーションなのは確かですが、パートナーとの連携によって“テール”にあたる、よりニッチなサービスを幅広く提供していきます。」(笹本氏)


マイクロソフト株式会社 オンラインサービス事業部 プロダクトマネージメントグループ Windows Liveチーム ディレクター 小野田哲也氏
 また、実際に展開されているサービスや、これから展開が予定されているサービスには、コミュニケーション以外のカテゴリーのサービスも多く含まれているという。これらのサービスについて小野田氏は、「コミュニケーションがサービスの中心であることは理解している」としながらも、それ以外のサービスにも積極的に取り組んでいるという。

 「たとえば“フォトギャラリー”ですが、あれは“PCを何に使っているか”に焦点をあてて開発されたサービスです。多くのユーザーがデジタルカメラやプリンタをPCに接続して利用しているということに注目し、撮影した画像の編集や公開、さらにはプリントというサービスを提供しています。Windows Live Messengerのプレゼンス機能を利用して、オンラインゲームを提供されるパートナーもいらっしゃいます」(小野田氏)

 また、今回の発表ではあまり多くは語られなかったが、セキュリティに関してもマイクロソフトは真剣に取り組んでいる。メールに関しては、迷惑メールやフィッシング詐欺の対策、添付ファイルのウィルススキャンなどの機能が実装されている。フィルタリング機能に関しても、子供がアクセスできる有害サイトをフィルタリングするだけではなく、メッセージングに関しても相手を制限するといったことも可能となっている。


Windows Liveのキーワードは「Software+Services」

 Windows Liveの特長としては、単純にオンラインサービスを提供するのではなく、「Software+Services」をキーワードに、クライアントソフトが提供されることにあると言えるだろう。サービス名称に「Windows」が入るのは、「PCとWeb、あるいはモバイルをシームレスに連携させ、Windowsの機能を強化すると同時に、オンラインサービスの柔軟性や普遍性と統合するため」(笹本氏)であるという。

 マイクロソフトが世界最大のソフトウェアベンダーであることに疑う余地はない。しかし、このブランドイメージはオンラインサービス事業にとっては、大きなメリットであると同時にマイナスの側面も抱えている。「hotmail」「Windows Live Messenger」といったオンラインサービスを展開していることは認知されているものの、多くのユーザーにとって「マイクロソフト」といえば「Windows」や「Office」をはじめとするソフトウェアのベンダーであり、オンラインサービスのプロバイダーとは認識されないということである。

 このマイクロソフトのブランドイメージを、逆に優位性となるように仕向ける戦略こそが「Software+Services」だという。Windows Liveが展開しているサービスは、メール、メッセージング、イベントなど他社でも似たようなサービスが展開されているものが多い。しかし、MicrosoftではWindowsとサービスの親和性や、1つのWindows Live IDですべてのサービスが利用できるという統合性を前面に出すことで、自分たちの優位性をより活かしたリッチなオンラインサービスの展開を模索している。


マイクロソフトのオンラインサービス戦略とは

 Windows Liveのオンラインサービスは無償で提供されるため、収益は広告収入モデルとなる。すでにオンラインサービスのプロバイダーとしてオンライン広告のビジネスモデルを作り上げているGoogleやYahoo!と比較すると、マイクロソフトはやや水を空けられている感は否めない。

 しかし、マイクロソフトでも自社製の広告配信エンジン「adCenter」の展開を始めており、60億を超える巨額な資金を投じてネット広告のaQuantiveを買収するなど、広告収益モデルの確立に本気であることが伺える。また、サーチ分野ではインデックスの強化を行なっており、サーチ分野においてもGoogleに負けないだけの機能を提供できるようにするという。

 「これはアプローチの仕方の問題なのですが、Googleさんはサーチの分野において非常に強みをもっていて、そこに個別のサービスが追加されています。一方、われわれはWindows Liveという統合された大きなプラットフォーム上に、それぞれのサービスを実装しています。そのため、それぞれのサービスは個別のものではなく、すべてのサービスがWindows Live IDで利用できる統合された環境なのです。」(小野田氏)

 もちろん、オンラインサービスを支えるものは、魅力的なサービスである。マイクロソフトでは、Windows Liveという大きなプラットフォームを提供し、その上に実装されるさまざまなサービスを多くのパートナーと展開していく予定だとしている。すでにWindows Liveを利用するためのAPIは用意されており、多くの企業にとっても大きなビジネスチャンスとなる可能性は高いと笹本氏は語る。

 「現在はコミュニケーション分野が注目されていますが、オンラインストレージのSkyDriveなど、パートナーとの協力によって、さまざまな利用シーンが考えられるサービスの展開も予定されています。すでにわれわれの戦略に賛同してくださっているパートナーの皆様はもちろん、今後も多くのパートナーと共に、幅広い分野で協力し、Win-Winの関係を築きたい考えています。これから5年を見ていてください。」(笹本氏)


関連情報

URL
  Windows Live サービス
  http://get.live.com/WL/all
  ニュースリリース
  http://www.microsoft.com/japan/presspass/detail.aspx?newsid=3259

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( 北原静香 )
2007/11/09 16:16

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