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中国人とインターネットの関係<後編>

インターネットのキラーサービスの過去と現在

 中国でインターネットが普及した(=PCが普及した)時期は、前編で紹介したように、日本のそれより後となる2000年以降のこと。今回は、中国におけるインターネットの夜明けから現在までの数年間に、次々に登場し、新規インターネットユーザーを増やしたキラーサービスを紹介する。


海賊版コンテンツがインターネット利用目的の1つ?

百度MP3検索

優酷網(Youku)
 中国人に人気がある製品の傾向としては、コストパフォーマンスがよいということが挙げられる。それは中国のメーカーもよく知っており、例えば携帯電話にしてもシリコンプレーヤーにしても、どれだけ多機能であるかを売りにする製品がよく中国のメーカーからリリースされる。

 PCは一度買ってしまえば、インターネットのさまざまなサービスを使えたり、仕事に使えたり、DVDを見たり、ゲームをしたりとたくさんの用途に使える。しかも中国では海賊版ソフトが簡単に手に入り、誰もがそれを利用しているから、海賊版ソフトの導入に対する技術的ないしは道徳的なハードルがない。インターネットにおいて特にキラーサービスがなかったころ、高所得層の若者から徐々にPCを導入し、そのついでにPCでできることをいろいろ試してみようとインターネットを利用し始めた。つまり、初めにPCありきで、それに付随する形でインターネットが利用され始めたと言える。

 海賊版ソフトのファイルがアップされていたことは以前にもあったが、当時はダイヤルアップだけで回線が遅かったこと、そもそも海賊版ソフト屋が大都市ならどこにでもあるので、あえてダウンロードをする必要はなく、海賊版ソフトをダウンロードできることがインターネット普及を牽引したとは言えない。しかし海賊版コンテンツであるMP3ファイルについては、ファイルサイズが大きくないことから、第一の目的ではないものの、目的の1とつとしてインターネットを導入した人も少なくない。その後、百度がリリースした「百度MP3検索」サービスで誰でもできるようになりブレイク。MP3ファイルをダウンロードすることが、インターネット利用者の中で当たり前となる。

 海賊版コンテンツで言えば、ここ2、3年でADSLが急激に普及したことにより、ハリウッド映画や日本のアニメ、韓国のドラマなどの動画のダウンロードや、YouTubeを模した「優酷網(Youku)」などの動画共有サイトでの視聴も活発になった。若者の娯楽場と化しているインターネットカフェでは、動画共有サイトで動画をひたすら見る利用者は少なくない。インターネットカフェに入れば、あちらこちらで動画を眺めている利用者を見ることができる(インターネットカフェのファイルサーバーを利用する人もいるが)。インターネットの用途が増えた現在、「無料で好きな動画を見放題」との理由でPCを買う人は筆者の周りでも見たことはないが、そのためにインターネットカフェを頻繁に利用する人は多い。

 5年くらい前までは、日本を含めた海外の非オンラインゲームが人気だった。ところが、近年は中国が舞台となっている中国製オンラインゲームが海外製オンラインゲーム以上に人気だ。また、プレイ料金が安いことから、オンラインゲームのためにインターネットカフェに足繁く通うインターネット利用者も少なくない。


コミュニケーションツールはメッセンジャーが主流

QQ
 コミュニケーションツールのために、インターネットを利用する若者は多い。これが目的でインターネットを利用し始めた人は、前述の海賊版コンテンツ以上かもしれない。しかし、日本のようにメールが広く普及しているわけではない。中国ではインスタントメッセンジャー、それも「QQ」と呼ばれる中国産ソフトが人気だ。その人気ぶりや、インターネット利用者は必ずQQのアカウントを持ち、会社やショップのオンライン窓口担当がQQのみで利用者とコミュニケーションをとるほどなのだ。

 2000年代に入ると、男性PCユーザーがゲーム目的でPCを購入するのに対し、女性PCユーザーはQQ目的でPCを購入する人が実に多くなったようだ(男女いずれも、学生は親に対しては「勉学目的」と言ってPCを買ってもらうケースが多いのだが、その辺は国を問わずといったところか)。現在、中国におけるQQやWindows Live Messengerなどのインスタントメッセンジャーのアカウント総数は13億3000万件、アクティブアカウント総数は4億2500万件で、そのうちの8割強がQQによるものだという(中国のリサーチ会社「易観国際」調べ、2008年9月)。

 QQに続くコミュニケーションツールとして昔から掲示板が人気だが、それがためにインターネットを始めたいと思うほどの魅力はないようだ。メールもすべての人がアカウントを所有しているわけではなく、農村部の利用者や学歴の高くない層ではアカウント所有率は半数以下となっている。

 また、最近「mixi」が中国に進出すると発表し、ソフトバンクはSNS運営企業を買収したが、かといってSNSが日本のように人気かというと、むしろ今のところはニッチな存在だ。


錬金術としてのオンラインショッピング

淘宝網(Taobao)
 全体的にいえば、日本人よりもお金を稼ぐのに熱心な中国人。今でこそ株バブルは崩壊したが、中国株が好調のときには多くの中高年がオンライントレードのためにインターネットを利用し始め、時を同じくしていくつもの中高年向けのパソコン入門書が書店に並んだ。若者が圧倒的多数を占める中国のインターネット利用者全体でみれば微々たる数だが、ある程度所得のある都市部の中高年にとってはキラーサービスになったといえよう。

 一方、ここ1、2年で利用者が急増しているサービスがオンラインショッピングだ。あらゆるモノが安く買えるというよりも、容易に商売ができ、金儲けができるという意味で人気を博しており、一部の若い社会人にとって最も魅力あるインターネットサービスとなっている。要は転売で、例えば日本で発売しているゲーム機や携帯電話を中国で横流ししたり、上海や北京であればバーゲンで売られた洋服を地方に横流しするといった具合だ。

 中国にはeBayやAmazonの中国版も進出しているが、人気があるのは中国発のサイト「淘宝網(Taobao)」だ。出店費用がかからず、取り引きの段階で不正を行うことができず、利用者が最も多いことから、都市部を中心に多くのインターネット利用者を引き付けている。

 オンラインショッピングが認知されたのは、外を出歩けなかったSARS大流行のころだ。このときは「ショッピングが家の中だけで完結できる」という意味で話題となった。伝統的に中国では商売で騙し合うのが茶飯事で、人々は面と向かわないで商売をするということに猜疑心を持っていたが、じわじわと北京、上海、広東省などの大都市部で普及し、全土の都市部に波及していった。現在は多くの都市部のインターネット利用者が商売をする一方、(詐欺師がいないかどうか購入時に慎重になるものの)日常的にモノを安く買っているインターネット利用者は多い。

 またオンライントレードや、オンラインショッピングのキラーサービス化で、オンラインバンキングや第三者支払いサービスもまた利用されるようになった。


  山谷剛史(やまや・たけし)
中国在住のITライター。中国人とITとの関係について様々な方面から分析した書籍「新しい中国人 ネットで団結する若者たち」(ソフトバンク新書)が発売中。今回紹介したようなテーマをさらに突っ込んで解説しているので、当記事に興味を持っていただけたなら、書店で手にとっていただければ幸い。


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中国人とインターネットの関係<前編>(2008/10/03)


( 山谷剛史 )
2008/10/10 12:17

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