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「Windows Live」最新版で目指す“壁のない世界”


 マイクロソフトは、「Windows Live」次期バージョンの正式版を12月から公開する。まずWebサービス、次にクライアントソフトの順で段階的に正式版へ移行していく予定だ。マイクロソフトの社内用語で「Wave3」と呼ばれる次期バージョンでは、ソーシャル機能の強化を特徴としている。

 新しく追加したサービスや、機能強化ポイントについて、マイクロソフトの安藤浩二シニアマネージャー、泉宏和プロダクトマネージャー、吉井直子プロダクトマネージャー(ともにコンシューマー&オンラインマーケティング統括本部オンラインマーケティング本部Windows Live/Mobileグループ)に話を伺った。

 また、マイクロソフトの新しい「Windows」ブランドコンセプトや、「Windows 7」「Live Mesh」などに対するWindows Live最新版の考えについて、マイクロソフトの笹本裕執行役常務(コンシューマー&オンライン事業部コンシューマー&オンラインマーケティング統括本部長)、小野田哲也ディレクター(コンシューマー&オンラインマーケティング統括本部オンラインマーケティング本部Windows Live/Mobileグループ)にも話を伺った。


12月より正式版に順次移行 Windowsの一機能としてのLive

Windows Liveですべての情報を統合・整理したい

マイクロソフト コンシューマー&オンラインマーケティング統括本部オンラインマーケティング本部Windows Live/Mobileグループ泉宏和プロダクトマネージャー
 泉氏は、「2007年に公開したWindows Live日本語版(Weve2)では、HotmailやMessengerなど、個々で長年提供してきたサービスの集合体というイメージだった。最新版ではWindows Live自体が1つのサービス群として位置づけられている」と話す。

 Windows Liveという大きな括りがあり、その中から必要に応じたソフトやサービスを利用する考えだ。「Officeをイメージしてもらうとわかりやすい。昔はWordやExcelなど、単体製品としての認識が強かったが、今では多くの人がOfficeとして覚えており、その中から目的に合ったソフトを利用している」(泉氏)。

 最新版では、写真共有サービス「Windows Live フォト」の追加と、オンラインストレージサービス「Windows Live SkyDrive」の保存容量を25GBまで拡大したことが大きな特徴という。また、ソフト/サービス別に存在したアドレス帳の一元管理や、複数メールアカウントの管理、他のWebサービスとの連携などにより、Windows Liveがすべての情報を統合・整理することを目指す。

 「Windows Liveが、すべてのコミュニケーションのハブになることを目指している。Webメール、ブログ、SNSなど、Web上のさまざまなサービスを使い分けているユーザーが多いが、毎日それらを見に行くのは手間がかかる。新しいWindows Liveでは、ホームにすべてを集約し、メールからソーシャル系サービスのアップデートまで確認できるダッシュボード的な使い方をしてもらえる存在になりたい。」(泉氏)


SkyDriveがWindows Liveサービスのバックボーンを担う

マイクロソフト コンシューマー&オンラインマーケティング統括本部オンラインマーケティング本部Windows Live/Mobileグループ吉井直子プロダクトマネージャー
 吉井氏はLive フォトについて、「既存の写真共有サービスと違うのは、『つながり』に登録しているユーザーの更新情報が一覧で表示されるところ」と説明。Windows Live最新版では、写真共有を軸にした展開を考えているようだ。現状、ユーザーがSkyDriveにアップロードしているファイルの中で画像が多いことや、画像はオンライン上で共有するというマイクロソフトのメッセージでもあるという。

 Live フォトにアップロードした画像は、SkyDriveに保存される。SkyDriveの容量は従来の5GBから25GBに拡大する。「Windows Liveユーザーは世界に4億6000万人いるが、全員に無料で25GBを提供する」と説明。また、Hotmailの容量は別であり、それも拡大する方向であることから、「これらのサービスを見れば、マイクロソフトではストレージの増強にかなりの投資をしていることがわかると思う」(安藤氏)。

 「社内の議論では、容量無制限にする話もあったが、それはそれでリスクもある。今回はとりあえず25GBにした。数字に特別な意味はない」(泉氏)。現状の5GBでも、フルに使っている人は世界中で1%前後だという。それよりも、ベータ版のフィードバックで多かったのが「保存先が一元化されたので、写真がどこにあるのかわかりやすくて良い」との意見だった。容量は25GBに拡大したが、アップロードできるファイルサイズ(50MB)に変更はない。ファイルサイズの制限を拡大する検討もしていくが、当面はこのままのようだ。

 このほか、Windows Vista用のLive フォトガジェットも日本独自でリリースする。指定したアルバム内の画像をテスクトップ上で閲覧できる。同ガジェットの技術を応用して、Windows Mobile向けのLive フォトアプリケーションも開発する。これにより、携帯電話で撮影した写真をワンクリックでLive フォトにアップロード可能となる。さらに、同ガジェットのスライドショーの技術をデジタルフォトフレームなどに転用できる。例えば、自分のPCでアップロードした写真を遠方の実家のデジタルフォトフレームで表示させるといった利用も可能になるという。


Windows Liveは知人とのつながりをサポートするツール

マイクロソフト コンシューマー&オンラインマーケティング統括本部オンラインマーケティング本部Windows Live/Mobileグループ安藤浩二シニアマネージャー
 Windows Liveのホームページもリニューアルする。これまでは、Liveが提供するサービスのリンク集のようだったが、そこにソーシャルの要素が加わってくる。新バージョンでは、Live フォトのアルバム表示、「つながり」登録者のプロフィール更新情報などを確認できる。吉井氏は、「インターネット上のホームにしてもらい、必要な情報をチェックしてもらいたい」と話す。

 ユーザーのプロフィールを公開するページも設けた。自己紹介はもちろん、Live フォトやブログなどの更新情報、あしあと登録、簡易的なメッセージ送信機能を備える。「つながり」登録をしている相手の情報は、ユーザーのアイコン「タイル」から参照できる。タイルは、Messengerのプレゼンスに応じて色が変わる。Windows Live各サービスページの上部メニューにある「知り合い」は、「つながり」登録者の一覧ページとなる。

 Windows Liveの「つながり」登録の考えとしては、見ず知らずの人と友達になるのではなく、「家族や普段会っている知人など、見知った人を登録してもらい、その人たちと情報を共有するイメージ」だという。また、新たにコミュニティ機能「グループ」を追加したが、これも「趣味のコミュニティを作って何千人も集めるのではなく、数人規模の小さいコミュニティで情報を共有することを想定」。いずれも、リアルなつながりにオンラインを加味することで、生活を便利に楽しくする考えだ。

 このほか、FlickrやPhotobucket、Facebook、Twitter、WordPressなどのソーシャル系サービスと連携できる。提携企業は世界50社以上に上る。対応サービスは「アクティビティの管理」画面に表示され、そこから使っているサービスを登録しておくことで、更新情報を「つながり」登録者に伝えることが可能となる。なお、正式版の開始当初は米国のサービスが中心。今後は、日本のサービスも登録できるよう話を進めるという。「対応サービスが増えることで、ユーザーがWindows Liveにアクセスする機会も増えるため、提携企業は積極的に増やしたい」(吉井氏)。

 Windows Live最新版では、各サービスのサイトにおいて、更新情報を表示する部分を「ダッシュボード」と呼んでいる。安藤氏は、「どのサービスを使っていても『つながり』という横串を通しているため、誰が何を更新したのかを常に確認できる」と説明。例えば、Live フォトでは、知り合いの画像に関する更新情報がダッシュボードでわかり、SkyDriveでは、知り合いが何のファイルをアップロードしたのかをダッシュボードで確認できる。「Windows Liveを使っていると、人とつながっている感覚がわかるようにすることも、最新版の大きな目的。写真共有を軸にしているのも、写真が更新されれば、目に付きやすく、その先のサービスを使ってもらえるから。そういった“気付き”も提供したい」(安藤氏)。


写真共有を軸にした展開 Windows Live フォトの概略

ダッシュボードの役割 プロフィールページ

Windows Live最新版はLive Meshへの大きなステップ

 マイクロソフトは、9月末から開催された「CEATEC JAPAN 2008」において、Windowsの新しいブランドコンセプト「Windows Life Without Walls(壁のない世界へ)」を発表した。Windows Vista、Windows Live、Windows Mobileといった製品の上位概念となるプラットフォームとして「Windows」を位置づけ、Windowsブランドを再定義する考えだ。

 具体的には、「さまざまなデバイスが連携することで、ユーザーに新しいデジタルライフを提供する」ことを示す。小野田氏は、「個々の機能を訴求するよりも、連携することで実現できる利用シーンを紹介すると、結構驚かれると同時に、知らない人が多いことを実感する」と話す。「Windows Liveが新しくなることで、また新しいシナリオも訴求できる」。

 “壁のない世界”を実現する技術として、米Microsoftは「Live Mesh」を開発中だ。Live Meshは、デスクトップPCやノートPC、携帯電話など、さまざまなデバイス間でデータを共有するためのプラットフォーム。現在、テクノロジープレビュー版を公開し、テストしている。10月末より日本からもサインイン可能になった。笹本氏はWindows Live最新版について、「クラウド上でデータを共有するというLive Meshに向けての大きなステップ」と語る。

 データ共有のプラットフォームとして、Windows Liveを展開するにあたり、ストレージの増強は重要になる。そこで、まずSkyDriveを25GBに拡大した。小野氏は、「最新版により、マイクロソフトがストレージに投資をしていく方向性が明らかになった。データをクラウドに置くことで、初めて可能になることの1つが共有。それがユーザーに求められていること」と話す。また、共有している情報が更新されたことをわかりやすくするため、各サービスやMessengerに通知機能も設けた。


Hotmail以外のサービス訴求・誘導で広告収益増大へ

 Windows Liveでは、Hotmailしか使っていない(知らない)ユーザーも多い。そこで、他のサービスの訴求も課題になっていたという。最新版では、「Hotmail含めすべてのLiveサービスに共通のメニュー(コモンヘッダー)が表示されるので、他のサービスへアクセスすることも簡単になる」(小野田氏)。

 また、「今年、社内の組織変更を行ったことで、Windowsのいろいろなソフト/サービスの連携、およびMSNとの連携が可能になった。そういった部分は今後随時改善されていく」(笹本氏)という。「以前は組織が分散していたことで、自らのプロダクトに深く関わることはできたが、これを横串にすることにより、ユーザーにシームレスなデジタル環境を提供できる。CEATECで発表したことやLiveで考えていることが実現しやすくなる」。

 このほか、他社のソーシャル系サービスとの連携について小野田氏は、「昨今は1人が複数のソーシャルグラフに参加しているのが実態。それぞれのサイトにアクセスしないと更新情報がわからないというよりは、1つのホームで複数の更新情報がわかった方が、エンドユーザーには便利だと思う」と話す。Hotmailで複数メールアカウントを管理できるようになることも同じ理由だ。

 加えて、Windows Liveへのアクセス機会を増やし、「広告のビューを上げることも大きな目的」(笹本氏)という。「1つのWindows Liveサービスから、他のサービスにもアクセスしやすくなることで、他のサービスでも広告のビューが増える。最終的には広告の収益につなげたい」(笹本氏)との考えを示した。


OSはWindows 7、サービスはWindows Live

 次期OS「Windows 7」に対するWindows Liveのアプローチとしては、「Windows 7では『Software+Services』をより明確にしている。プラットフォームを7で、サービスをLiveで提供していく考え。7は、ブートアップの点が目立っているが、機能面ではよりLiveに寄せるかたちになって来る」(小野田氏)。

 また笹本氏は、「PCの立ち位置、求められているものが変わってきている。クライアントに求められる機能はソフトでサポートしていき、どこでもアクセスできたり、共有したい部分はLiveでサポートしていく」と話す。OSは7、アプリケーションとオンラインサービスはLiveにまとめるイメージだ。メールやメッセンジャー、ムービーメーカーがLiveとして提供されるのもその現れという。

 なお、「Windows Live ムービー メーカー」については、「オンライン連携による機能アップを図る」とのこと。「OSにバンドルされているものは、OSが新しくならないと機能追加されないが、Liveになることで、OSのバージョンに関係なく、新しい機能を随時追加して出せる。Live フォトギャラリーが良い例。ムービーメーカーについても同じようにしていく考え」(小野田氏)。


ネットブックなりのオンラインサービスを訴求

マイクロソフト執行役常務コンシューマー&オンライン事業部コンシューマー&オンラインマーケティング統括本部長 笹本裕氏
 ネットブック/UMPC市場に対するWindows Liveの考えとしては、笹本氏が「多くのネットブックには、Liveをプリインストールしてもらっているので、重要な市場になっている」と話す。

 「ただ、まだまだネットブックの存在自体がプライマリーユースではなく、セカンダリーユースであることが大きい。そこを上手く活用することで、より多くのユーザーにリーチできればと思う」とのこと。

 加えて、「ネットブックなりのオンラインサービスを訴求していく。携帯電話、ネットブック、高機能PCをすべてLiveでつなげていくことが、ユーザーを増やしていくことになる。それぞれにオンラインサービスの入り口ができることが重要」だと述べた。


「シェアリングをするならWindows Live」が目標

マイクロソフト コンシューマー&オンラインマーケティング統括本部オンラインマーケティング本部Windows Live/Mobileグループ ディレクター小野田哲也氏
 Windows Liveは、1年周期で大きなアップデートを図る予定だ。今後の展開について笹本氏は、「シェアリングの強化をしていく」とコメント。「写真の共有をはじめ、複数のソーシャル系サービスの更新情報がわかったり、複数メールアカウントの管理もシェアリングだと考えている」とのこと。

 「ワンストップソリューションになるようにサービスを築き上げ、さらに、いろいろなデバイスと連携させることで、PCだけで完結していたものが、携帯電話やデジタルフォトフレーム、テレビと連携するようなサービスを展開していきたい。この1年で『シェアリングをするならWindows Live』と言われるような環境に持って行きたい」とアピールした。

 また小野田氏は、「クラウドコンピューティングは、いろいろなデバイスからのアクセスを可能にすること。Windows LiveはまだまだPCユーザーがメインではあるが、今後はWindows Mobileで携帯電話ともつながるし、デジタルフォトフレームなど以前はPCと関係なかったデバイスともつながるようになる。1年後にはPC関連以外のパートナーとも連携できるようになっていたい」と述べた。


関連情報

URL
  Windows Live プロモーションサイト
  http://go.windowslive.jp/new/

関連記事
「Windows Live」次期バージョンを発表、12月アップデート開始(2008/11/13)


( 野津 誠 )
2008/11/14 20:22

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