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「ネットで薬が買えなくなる?」〜厚労省に聞く改正薬事法問題


厚生労働省は霞ヶ関の中央合同庁舎第5号館にある
 本誌では2月に、医薬品ネット販売規制の問題について、改正薬事法問題での焦点や我々消費者が被る影響などについて、オンラインドラッグ協会会長を務めるケンコーコム後藤玄利社長にお聞きした。今回は、省令を出した側の厚生労働省に、省令が公布された経緯や今後についてお伺いした。

 担当の同省医薬食品局総務課加藤雄一郎氏は29歳で、入省して忙しくなるまでは窓の杜やVectorなどもよく利用していたという。「厚生労働省はコンピュータやインターネットをよく知らないで偏見を持っている」という批判は少なくとも加藤氏にはあてはまらないようだ。加藤氏に、今回の改正薬事法に関するさまざまな疑問や意見をぶつけてみた。


ネットは円滑な意思疎通が困難

改正薬事法では、「正しい情報提供や指導には“対面”であることが必要」との考えが根本にある(イラストは厚生労働省のパンフレット「知っておきたい薬の知識」より)
 「6月に施行される改正薬事法では確かにネット販売については触れていないが、情報提供の義務を課している」というのが厚労省のスタンスだ。情報提供の義務とは、消費者に尋ねられたら医薬品に関する正しい情報を提供しなければならないという義務のことだ。「そもそも医薬品には必ず副作用がある。正しい情報をもとに服用しないと毒にもなるので、注意事項を伝えて渡すのが望ましい」という考えからだ。

 この情報提供の義務を販売者に課すにあたり、医薬品ネット販売規制に関する議論の焦点となっているのが「対面」の問題だ。厚労省には、「正しい情報提供や指導には“対面”であることが必要」との考えが根本にある。

 ネットを含めた通信販売は「“対面”ではなく十分な情報提供ができないおそれがあり危険」だから、第3類以外の医薬品をネットを含む通信販売で売ってはいけないという省令につながっている。しかし、オンラインドラッグ協会らが「ネットでも情報提供はできる」と主張し、また通販で医薬品を買いたいという消費者の意見も多く寄せられたことから、検討会を開くことになったというわけだ。

 「ネットでは、円滑な意志疎通ができない。医薬品の販売に関しては、ネットは十分なコミュニケーション手段ではない。即時性がないし、対面の方が意思疎通の面では優れている」と加藤氏は言う。

 「わたしたちは日常でさまざまなコミュニケーション方法をTPOで使い分けている。メールで間に合わないなら電話、重要な話なら直接面談で、というようにその場合によってコミュニケーション方法を選択している。たとえば、ネットですべてが可能なら、この取材もメールや電話で可能なはずです。今日、こうして来ていただいているのは、電話だけではなく対面が重要だというひとつの証拠でしょう」。

 もちろん、メールや電話でも環境整備次第で対面と同様にコミュニケーションできる可能性はあるので、今後、検討会次第で変わる可能性はある。

 しかし、「ネットでの情報のやりとりは、ある程度の知識を持っている人ならそれで足りる場合もあるが、適切な薬を選ぶために、何を聞いたらいいかわからない、というような人には難しい可能性がある。対面なら相手の顔色も見えるし、手振り身振りでどこが痛いなどの情報も伝えられる。こうした言語以外の情報も拾い上げる対面に近いインターフェイスは、現状では難しいのではないか」と加藤氏は危惧する。


6月までに結論が出なければ必ず施行される

厚生労働省が2月6日に「薬事法施行規則等の一部を改正する省令」を公布。公布された以上、再改正がない限り、6月1日には必ず施行される
 厚生労働省が2月6日に公布した「薬事法施行規則等の一部を改正する省令」自体が憲法違反ではないかという意見もある。これに対しては、「それまでの国会審議で、今後そういう決定がされることを前提に話されており、それを受けて決まったこと。省としては、委任を受けた範囲内であると考えている。ただし、パブリックコメントで多くの意見が寄せられたことも受けて、検討会を開くことになった」という。

 省令が出た経緯については、「国はもともと行政指導という形で、医薬品は対面で意志疎通をして販売すべしと言っていた。ただし、それは法規的措置ではないので、今回改めて省令という形で出したもの」。この点は従来から一貫しているという。

 ネット医薬品販売に関わる事業者らが署名を集めるなど世論に訴えようと活動しているのは、改正薬事法が6月施行と決まっており、施行までに時間がないことも理由の1つだ。

 これに対して、「検討会は、6月までに結論を出すということにはこだわらず、あくまで合意を目指している。検討会における結論次第で再改正される可能性はある」というのが厚労省の見解だ。ただし、「省令はすでに公布されており、6月までに再改正がなければ必ず施行される」。

 施行されれば、ネットや通販での第3類を除く医薬品販売は、6月1日から規制されることになる。検討会で早期に結論が出れば、変更される可能性は残されているが、まだ検討会は始まったばかり。6月1日の施行前に省令を改正することは時間的に非常に難しいと見られる。


厚生労働省がサイトで公開している改正薬事法に関する一般向けリーフレットの一部。リスクによって医薬品を3つに分類する 同じリーフレットの一部。販売にあたっては必ず対面で専門家が説明することが義務化される

「パブコメ97%反対」の影響は

 省令案に対して厚生労働省は、2008年9月17日から10月16日までパブリックコメントを募集した。寄せられた意見2353件のうち、約97%である2303件が反対意見だったという。これについては、「パブコメの97%が反対意見だったにも関わらず、省令で強引に決めてしまった」という批判の声がある。

 「97%が反対という数字は、もともと厚労省がいただいた問い合わせにお答えした数字なので、反対が多いことは間違いない」と加藤氏は言う。「また、パブコメは普通100くれば多い方。2000以上来た今回は非常に多かったと言える」。

 ただし、「もちろん数は1つの判断材料になる。しかし、パブコメは署名運動ではないので、数だけで判断するものではない」ともいう。単純に多数決で決めるのでは、特定のグループが大量に送るといったことをすれば、結果を左右できてしまうことにもなる。また、そもそもパブコメは賛成の人はあまり送らず、反対の人が送ってくる傾向があるので、それだけでは決められないからだ。

 今回の省令ではパブコメのネット規制反対の声は反映されなかったが、「少ない数の意見でも取り上げられることもある」。具体的には、医薬品への表示義務ができ、店舗販売にしか使えないものは『配置不可』と表示する案を考えていたが、「この表記では、配置できないものを店舗に置くのか、という誤解を招く」という意見が寄せられて、『店舗専用』と改めた例がある。


リアル店舗には資格者の配置や説明などの義務が課せられる

 改正薬事法の変更点の1つに、コンビニなどでも登録販売者がいれば医薬品が販売できるというものがある。実は、改正薬事法が施行されていない現在でも、薬剤師がいればコンビニでも医薬品は販売できる。しかし、薬剤師を確保するのは給与面での負担が大きく、現実的ではないのが実状だった。

 今後、薬剤師に変わる登録販売者がいれば、第2類と第3類の医薬品がコンビニでも売れるようになる。これに対して、「ネットでは第3類の医薬品しか売れなくなるのに、バイトしかいないことも多いコンビニで第3類よりリスクの高い第2類も扱えるのはおかしいのではないか」という意見がある。

 ネットでの販売規制ばかり注目を集めているが、実は今回の改正薬事法では、実店舗における販売に相当の義務が科せられるようになる。

 「薬局の店頭でもきちんとした説明はなされていないという批判は、改正前の状態についてのもの。新薬事法施行後は店頭販売において説明の義務をきちんと果たしてもらう。医薬品販売では、対面での説明が義務づけされた状態を前提として考えて、ネット販売が現状のまま継続でいいのかという点を考えてほしい」。

 たとえば現在、ドラッグストアなどでも薬剤師が不在なのに医薬品が販売されていることがある。また、薬剤師がいても、長い行列ができていて聞くのがはばかられる状態などもある。しかし、今後は薬剤師が居なかったり、相談が受けられるようでなければ、薬事法違反で処分の対象となる。もちろん、コンビニも処罰の対象だ。

 その他、「行政監視もあるし、消費者モニターで消費者の声が寄せられたら厚生労働省が乗り出すことも考えている」という。「もっと改正薬事法本体を取り上げてほしい。我々も国民のひとりだし、厚労省は立場的にはどちら寄りということはなく、あくまでフラット」。

 実際、ドラッグストア側からは、「お客に一々説明を求められるのは大変」と言われたが、国民の安全を重要視して実施を決めたという。


周知不足の指摘には今後改善も

医薬品関連の情報をまとめた、厚生労働省サイト内のコーナー「おくすりe情報」。内容的には厚労省の公式文書が多く読みやすいとは言い難いが、医薬品関連情報が探しやすくまとめてある
 審議は平成16年から公開で行っており、平成17年には報告書がまとまっている。その頃から、「ネットの医薬品販売は第3類までが妥当」とされていた。

 それが今頃になって騒ぎとなっているのは、今回初めて知ったという人が多いからだ。厚労省としては、「これまでも政府公報などを行い、周知は図ってきたつもり。しかし、6月の施行に向けて一層の努力をしていく」。

 「ただし、医薬品は商品としては一般の商品とは性質が違う。薬は毒にもなり得るので、食品などを売るのとは訳が違う」とする。医薬品には必ず副作用があり、副作用のない医薬品はない。店頭で販売される医薬品は、医師が処方する処方薬に比べて作用は概しておだやかとはいえ、まったく説明もなしに販売するのは危険を伴う。

 「こうした状態、きちんとした説明もなしに販売されていることが少なくない現状を解消するのが今回の薬事法改正の目的の1つ。現状で比較されると『店舗でも説明はされない』という意見が出てくるのは当然だが、改正後にはきちんと店頭説明がなされる。もしも説明がなかったら、ぜひ厚生労働省に通報してほしい。そうしたことがあれば、薬事法違反で処分の対象となる。」


 すでに市販の医薬品では、第1類、第2類、第3類という新しい分類が外箱に表示されている。また、周知のため新制度の概要も店舗に掲示することになる。形式は店舗によって自由だが、ホワイトボードなどに、類などの説明や相談の必要性などを書かねばならない。

 「医薬品はドラッグストアで相談しながら買ってください」という周知を広めるためのポスター類も現在作っているところだ。その他、相談窓口を都道府県に設置して、薬剤師がいないなどの事態があれば通報してもらうことになる」。

 今後は、ガスター10のような医療用の成分が含まれる医薬品が一般用として手に入りやすくなる。アクセスがしやすくなり利便性が高まるが、物が物だけに利便性だけが高まるのは危険だと加藤氏は指摘する。たとえば、女性用の頻尿・残尿感改善薬には「男性は服用禁止」とある。前立腺肥大の人が飲むと排尿困難になるなどの副作用があるからだ。

 「そういった副作用や、他に服用している薬と併用した場合に起こりうる作用などは聞かないとわからない。医薬品購入にあたって、とくにリスクの高い医薬品については、情報を得ることが必須と考えている。こうした対策を講じることで、医薬品を正しく選んでもらいたいというのが願いだ」。


前の検討会参加者は聞く耳を持たない?

 「第1回目の検討会では、ネット系参加者の話がまったく取り上げられなかった」という話がある。これに対して加藤氏は、「検討会では、すべての方に等しく発言の機会をもってもらうことが重要と考えている。今後、楽天やオンラインドラッグ協会の方にお話いただく機会は当然ある」という。1人だけが偏って発表すると他の方から不満が出るので、今後は1人ずつ順番に発表することを考えている。

 前の検討会にも参加していた参加者から、『なぜまた検討会を開く必要があるのか』というような発言があったという話も出ており、また人数的にネット医薬品販売に反対のメンバーが圧倒的に多いという指摘もある。

 この点について加藤氏は、あくまで厚生労働省のスタンスはフラットだという。「個人的には、検討会に出たなら話し合ってほしいと思う。我々厚労省はとくに誰に与するということはなく、あくまで目的は国民が正しく医薬品を購入できるようにすること。ネット業界関係者が少ないという話もあるが、多数決で決めるわけではない。多数決で決めるだけなら、検討会を開く意味がない」。

 「6月に施行ならもっと早いタイミングで検討会を作るべきだった」という指摘もある。しかし、「通常であれば検討会を作るのも、かなり時間がかかっていた。今回は、かなり早いタイミングで対応して検討会を作ったと考えている。制度改正は、ネットで新サービスを始めるようなスピードでは進まないし、ある程度時間はかけるべきものだと考えている」。


規制する面では、ネットにはリアル店舗にない難しさが

 「ネット販売のせいでこれだけの薬害被害者が出た」というデータはない。ただ、新聞報道によれば、睡眠薬をネットでまとめて買い、実店舗で4つくらい買って、買い集めた全量を一度に服用して自殺を図り、重い後遺症が出た例などがある。実店舗では販売は1人1つまでと決められている薬だったという。

 もちろん、リアルなら問題がないというわけではなく、問題は当然ある。リアルとのネットの違いは「取り締まりやすさの違い」だという。ネットは取り締まりが難しく、現時点では、現実にネットで違法販売が行われている。処方箋がないと買えない医薬品を、なしでも売っているところもある。

 「ネットが悪いと言っているわけではなくて、あくまでネットは扱いが難しいということ。玉石混交の状態であり、その結果、死に至ったり犯罪の温床になっている一面は否定できない」と加藤氏は言う。「実店舗なら販売方法についても規制しやすい。しかし、ネットは実態を把握するのが難しい。医薬品販売の許可証の情報が載っていたとしても、それが事実であるかどうかわからないし、住所が掲載されていてもそこに薬局があるのかどうか、行ってみないとわからない」。

 「とにかく、まずは安全性を最優先させていったんこういう措置をとった。6月から、店頭販売では説明の義務が課せられる中で、ネットは医薬品の説明があるところもあるがないところもある、といった現状のままではまずいということ。ネット業界の人たちの反発は、心情的にはわかるのだが、ネットに偏見があるからとか既存団体の利益を優先しているというようなことはない」。

 ネットでの医薬品販売の市場はここ何年かで急成長している。それについては、どういったルールが必要になるか、あるいはどういう運用が可能なのかを含め、検討会でこれから煮詰めていくしかないというわけだ。

 「たとえば、このマークがついているサイトならOKというようなやり方を考えたとしても、デジタル画像などでは簡単にコピーができてしまう。逆に簡単にコピーができないようなものだと、利用者に認知させることが難しい。ネットには規制をする面でそういう難しさがある。そういった技術や方法についても、考えていただけたらと思う」。


正しく安全に使うために話し合いを

2007年に報告された、かぜ薬など一般用医薬品によると考えられる副作用の例(厚生労働省の啓蒙パンフレットより)。「起きてしまってからでは遅い。利便性か安全性となれば、まず安全性をとる」というのが厚生労働省の考えだという
 金融庁による通信販売の支払い方法である「代金引き換え決済(代引き)」の規制導入など、ネット規制の話が続いているが、「それだけネットが浸透してきたからこそだろう」と加藤氏は考える。「誰もが利用するようになれば、利用者保護の観点からルール作りが必要になってくる。」

 「ネット業界の方たちには、焦らずにと言いたい」。検討会では、これから順に話を聞いていく予定だ。簡単に結論を出したら、今のネット業界関係者からと同様に、薬害被害者などからも不満が出るだろう。「大きな事故は10万人に1人かもしれない。しかし、人命にも関わることだけに起きてしまってからでは遅い。医薬品は雑貨などの商品とは違う。安全性を第一に考える必要がある」。

 「あくまで制度なので、今後みんなの希望を実現するためにどうするかを考えていく。ただ、正しく安全に使うことが一番優先されるので、利便性と安全性のどちらを取るかという選択になったら、まず安全性をとる。すべては検討会で話し合い、一番良い方法を前向きにみんなで決めていきたいと考えている」。


関連情報

URL
  おくすりe情報(厚生労働省)
  http://www.mhlw.go.jp/bunya/iyakuhin/okusuri/index.html
  薬事法施行規則等の一部を改正する省令の概要(厚生労働省、PDF)
  http://www.mhlw.go.jp/bunya/iyakuhin/ippanyou/pdf/gaiyou.pdf
  一般用医薬品販売制度ホームページ(厚生労働省)
  http://www.mhlw.go.jp/bunya/iyakuhin/ippanyou/index.html
  医薬品の販売等に係る体制及び環境整備に関する検討会報告書(厚生労働省)
  http://www.mhlw.go.jp/shingi/2008/07/s0704-14.html

関連記事
「6月から医薬品がネットで買えなくなる?」(2009/02/25)
「6月から医薬品がネットで買えなくなる?」(2009/02/26)


( 取材・執筆:高橋暁子 )
2009/04/07 11:06

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