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「ネット安全安心全国推進フォーラム」<前編>
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【 2009/01/22 】
学校・教員用のネットいじめに関する対応マニュアルが必要な理由
[12:01]
【 2008/12/26 】
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トラブル事例から学ぶ、小学生のネット利用で大切なこと
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【 2008/10/23 】
子どもはわからないから問題を起こしているだけ
〜「魔法のiらんど」に聞く<前編>
[16:19]
10代のネット利用を追う

学校・教員用のネットいじめに関する対応マニュアルが必要な理由

文部科学省に聞く

 文部科学省が2008年11月、「『ネット上のいじめ』に関する対応マニュアル・事例集(学校・教員向け)」を作成・公開した。マニュアルを作った経緯や公開した理由について、同省の須原愛記氏(初等中等教育局児童生徒課生徒指導室生徒指導企画係長)に話を聞いた。


具体事例を紹介し、教育現場で役立つ内容に

 まず、このマニュアル・事例集の内容について、簡単に紹介しよう。内容は、マニュアル編と事例編に分かれている。

 マニュアル編は、ネット上のいじめに関する基礎的な知識と参考にすべき資料などが一覧となっており、ネットいじめについて知識のない教員でもおおよそが理解できる入門編的内容となっている。まずはネットいじめを掲示板・ブログ・プロフによるものと、メールによるものとに分けて類型化。ネット上のいじめの典型的な事例を紹介し、掲示板などへの誹謗・中傷に対する削除依頼など、対応の具体的な手順や、児童生徒への指導のポイントを説明している。また、チェーンメールに関する対応のポイントも説明している。

 そのほか、いじめそのものだけでなく、教員向けの情報モラル指導力向上のためのカリキュラムや、保護者への啓発に役立つ講座など、ネットいじめを防ぐために役立つ情報や資料も紹介している。また、相談窓口や団体、法令などに関する資料もそろっている。

 事例編では、全国から集まったネットいじめの事例とその具体的な対応を掲載。まず、ネット上のいじめに関する学校での対応事例を類型に分け、さらに小・中・高の学校種ごとに分けて、15の事例の詳細な内容とポイントを掲載している。実際に似たようなことが起きた時に参考にできるようになっている。


「『ネット上のいじめ』に関する対応マニュアル・事例集(学校・教員向け)」は全部で70ページ近く 「『ネット上のいじめ』に関する対応マニュアル・事例集(学校・教員向け)」の概要

 事例編の中から、事例を1つ紹介しよう。

 「部活動での人間関係のトラブルが原因で、高校3年のA子は、A子が作成したように見せかけたプロフを知らないうちに作成、誹謗・中傷の書き込みをされた。A子の友人が書き込みを発見しA子に伝えた。A子が部活動顧問の教諭に相談したため、学校はこの事案を把握。学校では、プロフの管理者に対して削除要請を行った結果、2日後に書き込みは削除された。また、部活動顧問は部活のミーティングを開き、誹謗・中傷の書き込みがあった事実を知らせ、注意を喚起したところ、A子の後輩のB子が顧問の教諭に書き込んだことを申し出た。学校ではB子を厳重に注意するとともに、A子、B子の保護者にもそれぞれ事情を伝えた。B子の保護者はB子を連れてA子宅に出向き、A子及びその保護者に対して謝罪をした。学校では、全校生徒に対して、安易に行った誹謗・中傷の書き込みが重大な結果をもたらすことを認識させるとともに、様々な機会を捉えて情報モラルの向上を図ったり、ネットの危険性について認識させたりする取組を行うこととしている。」

 事例の後に「事案の概要 - 無断で作成されたプロフィールサイトへの誹謗・中傷の書き込み」「学校が把握したのは - 被害生徒の部活動担当教諭に相談」「学校の対応(特徴) - 管理者への削除要請、部活のミーティングによる注意喚起」「削除の状況 - 管理者に削除要請し、書き込みは削除」「加害児童生徒への対応 - 加害生徒が自ら申し出て特定」とポイントがまとめられているため、重要なところがわかりやすくなっている。


有識者会議からの意見で作成

子ども向け啓発リーフレット「ちょっと待って、ケータイ」1(文部科学省のサイトからPDFで入手可能)
 文部科学省はこれまでにも、子ども向け啓発リーフレット「ちょっと待って、ケータイ」の作成・配布や、フィルタリングの普及促進のための啓発活動、保護者および教職員を対象としてインターネットの安全・安心利用に向けた啓発のための講座「e-ネットキャラバン」の実施など、ネットいじめに対してさまざまな取り組みを行ってきた。

 すでに多くの子どもが携帯電話を持っており、ネットいじめや誹謗・中傷、インターネットや携帯電話を使って犯罪に巻き込まれる事件が増えた。しかし、一部の教職員の中には、携帯電話やネットが身近ではない上、ネット上のいじめは見えないところで起きているということもあり、なかなか認識しづらく対応も難しい。そこで、「先生たちがネットがわかるような資料を作る必要があると考え、マニュアルと事例集を作りました。国としてもできることをして現場をバックアップしたいと考えたのです」(須原氏)。

 2007年9月から開催した、池坊保子元文部科学副大臣主催の「子どもを守り育てる体制づくりのための有識者会議」で、有識者から家庭や地域学校、行政がすべきことについての提言があった。その時に行政に「ネット上の誹謗・中傷等を発見した場合や子ども・保護者等から相談があった場合の学校としての『対応マニュアル(例)を作成・配布する』」ことが必要だという提言がされたのが、作成するそもそものきっかけだったという。

 今回のマニュアル・事例集は、このために作ったワーキンググループ(WG)で検討、案を出してもらい、それをもとに事務局で検討して作成したものだ。WGができたのが7月で、それから3、4カ月ででき上がった。事例集部分は、各都道府県教育委員会から代表的な事例を挙げてもらい、分類・掲載したため、かなり豊富で具体的だ。


地域に合わせた活用を

 神奈川県や北海道など、すでに独自のネットいじめ対応マニュアルを作っているところもある。ところが、それでは他の地域では使えない。「しかし、国で出せば全国で活用してもらえます。これは、あくまで基本的な方針と考えてほしい。細部にわたるようなことまで国が決めて内容を厚くするのではなく、必要最低限知っていてほしいことをまとめました」(須原氏)。

 どの問題が多く起きているのかといったことや、学校と地域の連携がうまくいっているかどうかなど、地域によってトラブルの状況や対応を行うための状況が異なることもある。そこで、「このまま使えたら使ってもらってもいいし、内容を付け加えてもらってもいい」という。あくまで自治体がこれをベースに地域に合わせて充実させることが目的のため、現時点では、今回のマニュアル・事例集のアップデートなどは検討していない。もちろん、新しい技術の登場に伴う問題が出てくれば文部科学省として、何らかの対応を行う可能性はある。


「わからない」ではなく、日頃の関係を大切に

文部科学省の須原愛記氏(初等中等教育局児童生徒課生徒指導室生徒指導企画係長)
 須原氏に、ネットいじめ対応のアドバイスをもらった。ネットいじめは見てもわからないところで起きていて発見が難しいが、発見のポイントは、先生が子どもを見守ることだという。

 「ネット上のいじめだからわからない、難しいではなく、日頃の指導をしていく中で、小さな変化を見逃さないという基本的なことを大切にしてほしい。発見した場合は、誹謗・中傷があったら、削除要請などの手続きなどが大事。先生個人で抱え込むのではなく、学校全体で取り組んだり、無理だったら専門の施設に相談したりして、解決に向かってがんばってほしい。」

 保護者に対しては、「ネット上のいじめは学校の対応だけは不十分。家庭で子どもたちを見守るのが大事」という。例えば、家庭でのルール作りだ。子どもが携帯電話をどのように使っているのかを把握したり、小さな変化でも気付けるような関係を家庭で築くことが大切なのだ。また、携帯電話を持つかどうかは家庭の判断なので、責任を自覚し、子どもを守るために保護者の努力が必要とされる。


啓発活動、情報モラル教育に力を入れたい

 今後、ネット上の違法・有害情報を監視する「ネットパトロール」を行っていくということも考えられる。ただし、ネットパトロールはまだ検討段階で、2009年度の予算案に盛り込まれたところ。「群馬県などは県や学校単位で取り組んでいるものの、文部科学省の予算案に盛り込んでいるものも、全県で実施できる予算ではない。ネットパトロールは費用も時間もかかる。どこが主体となり、どのような方法で行っていくのか検討段階であり、今後の課題」(須原氏)。

 2008年6月には、「青少年が安全に安心してインターネットを利用できる環境の整備等に関する法律」(青少年ネット規制法)も成立した。「国会や関係省庁でも、ネット上の有害情報や、子どもが犯罪に巻き込まれることに対してどう対応していくべきかを話し合っている。フィルタリング技術などをどうするか、各業界の自主的な取り組みを見守りつつ、文部科学省では学校での対応と啓発活動や情報モラル教育などに力を入れていきたい」という。

 ネットいじめは対処が難しい面がある。しかし、このようなマニュアル・事例集を活用すれば、活路も見いだせそうだ。学校や関係者の今後の活躍に期待したい。


関連情報

URL
  「ネット上のいじめ」に関する対応マニュアル・事例集(学校・教員向け)
  http://www.mext.go.jp/b_menu/houdou/20/11/08111701.htm
  10代のネット利用を追う 連載バックナンバー一覧
  http://internet.watch.impress.co.jp/cda/teens_backnumber/


2009/01/22 12:01
高橋暁子(たかはし あきこ)
小学校教員、Web編集者を経てフリーライターに。mixi、SNSに詳しく、「660万人のためのミクシィ活用本」(三笠書房)などの著作が多数ある。PCとケータイを含めたWebサービス、ネットコミュニケーション、ネットと教育、ネットと経営・ビジネスなどの、“人”が関わるネット全般に興味を持っている。

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