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腕時計単体でオフライン地図表示&登山道でのナビもOK、GARMINの“全部入り”GPSウォッチ「fenix 5X」を試してみた
2017年6月8日 06:00
今年4月、オフラインで地図表示可能なGPSウォッチ「WSD-F20」をカシオ計算機が発売したが、同時期に、GPS機器のメーカーとして長い歴史を持つGARMIN(ガーミン)もオフライン地図が利用可能なマルチスポーツ用GPSウォッチ「fenix 5X」を発売している。今回は、ガーミンのこの新製品について詳しくレポートする。
オフラインで使える登山地図と道路地図をインストール済み
携帯用GPS端末やGPSウォッチなど、さまざまなGPS機器を提供するガーミン。その製品ラインアップの中でも、登山やランニング、サイクリング、スイミング、ゴルフなどさまざまなスポーツに対応するとともに、ライフログ機能も搭載しマルチな用途に対応するGPSウォッチが「fenix」シリーズだ。
その最新モデルとして今春リリースされた「fenix 5」は、スタンダードモデルの「fenix 5 Sapphire」、コンパクトな「fenix 5S White」および「fenix 5S Gray」、そして最上位モデルの「fenix 5X Sapphire」の3モデル・4製品のラインアップとなっている。
今回紹介する最上位モデルのfenix 5X Sapphire(以降、「fenix 5X」と表記)は、衛星測位機能はGPS/GLONASS/みちびきに対応するほか、センサーは3軸コンパス、ジャイロスコープ、気圧高度計を搭載。さらにApple Watchと同様に光学式心拍計も搭載しており、アウトドア用ウォッチとフィットネス用ウォッチを兼ね備えた充実したスペックとなっている。
もう1つの大きな特徴が、ディスプレイ上でオフライン地図を見られることだ。スマートフォンと連携して地図データを随時ダウンロードするのではなく、最初から内蔵ストレージに地図データがインストールされた状態で手に入る。ナビゲーション機能も搭載されていて、施設名称を検索して目的地を指定し、案内を行える。
プリインストールされている地図は、登山用の「日本登山地形図(TOPO10MPlus V4)」と「日本詳細道路地図(シティナビゲーターPlus)」の2種類。等高線が入った登山向けの日本登山地形図(TOPO10MPlus V4)は、昭文社の「山と高原地図」をベースに、国土地理院の2万5千分の1地形図からの送電線や三角点、堰、植生記号などの情報を追加したものだ。
もちろん、山と高原地図に収録されている水場や山小屋、休憩所、コースタイムなどの情報も収録されており、カーソルを合わせてボタンを押すことでこれらの情報を確認できる。ちなみに山と高原地図は、全国各地の主要な山岳エリアに限って提供されている地図ではあるが、それ以外のエリアについても、昭文社が整備した等高線を使用しているという。
なお、日本登山地形図(TOPO10MPlus V4)は、同社のポータブルGPS受信機(トレッキングナビ)向けにパッケージとして提供している「日本登山地形図(TOPO10MPlus V3)」の後継製品であり、V3に加えて、登山コメント(登山コース中の注意箇所などに関するテキスト情報)やトイレ注記の新規整備、ルートの精度アップ、整備エリア拡充などの充実が図られているという。また、V3は2014年度のデータを使用しているが、V4は「山と高原地図」および国土地理院いずれのデータも2016年度のデータを使用している。
ディスプレイは1.2インチの非タッチパネル、操作は5つのボタンで
fenix 5Xの本体サイズは51.0×51.0×17.5mm、重量は98.0g(バンド含む)。多機能なだけあって時計としてはかなり重く、地図の表示機能を持たない下位機種のfenix 5 Sapphire(47.0×47.0×15.5mm、87.0g)と比較すると一回り大きいが、実際に腕に装着してみると厚みも重さも意外と気にならない。
ディスプレイサイズは1.2インチ(240×240ピクセル)で、防水性能は100m。液晶は透過型と反射型を組み合わせた半透過型のMIP(メモリーインピクセル)液晶を採用している。
バックライトの輝度は最も低い設定では5%で、10%~100%まで10%ステップで調節可能。バックライトの点灯時間も4秒/8秒/15秒/30秒/1分/常時の中から選択できる。これらの設定はアクティビティの実行中とウォッチモードでそれぞれ個別に設定可能だ。
なお、ディスプレイはタッチパネルではなく、操作はすべて両側に配置された計5つのボタンで行う。地図の移動やズームについても、決定ボタンを押して「拡大・縮小」「左右」「上下」とモードを切り替えながら、2つのボタンを使って操作スクロールや拡大・縮小を行うというもので、スマートフォンの操作に慣れた人にとっては少々使いづらさを感じるかもしれない。ただし、その一方で、冬山登山やスキーなど、グローブを装着している状態でも変わらず操作できるというメリットもある。
バッテリーはリチウムイオン充電池で、充電は付属の専用USBケーブル(チャージングケーブル)を使用する。このケーブルは独自コネクタを採用しており、ディスプレイの背面に端子が設けられている。腕に接する側に端子が設けられているため、装着しながらの充電はできない。
バッテリー持続時間については、ウォッチモード+光学心拍計の場合は最大12日、GPSを使ったトレーニングモードで光学心拍計を使用する場合は最大20時間。さらに、一定間隔でGPSをオフにするウルトラトラックモードも搭載しており、この場合は光学式心拍計と併用しても30時間持つので、ウルトラマラソンなど長時間のレースにも利用できる。
実際に山でバックライトを100%、点灯時間30秒の設定でGPSをオンにして使ってみたところ、満充電からおよそ2時間の山行でバッテリー残量は85%残っていた。この程度の減りであれば、日帰りの山行であれば余裕を持って使えると思う。
このほかfenix 5シリーズの特徴として、バンドを工具を使わずにワンタッチで交換できる「QuickFit」という機能がある。fenix 5Xには標準でブラックのシリコンバンドと、ブラウンのレザーバンドが同梱されており、例えばスポーツ時にはシリコンバンド、仕事中はレザーバンドと簡単に使い分けることが可能だ。別売でほかのカラーのバンドも用意されており、モスグリーンやイエロー、レッドのシリコンバンド、そしてグレーのステンレス製バンドも用意されている。
スマートフォンと連携してメッセージや天気予報を表示
ウォッチフェイスは、凝ったデザインからシンプルなものまで11種類が用意されている。時間だけでなく、気圧と高度が表示されるものや、歩数が表示されるものものある。ウォッチフェイスのほかには、気温/天気表示や高度/方角表示、歩数表示、心拍数の推移グラフなどを表示する「ウィジェット」が用意されており、ボタン操作で切り替えられる。
Wi-FiおよびBluetooth Low Energyの無線通信機能も搭載しており、スマートフォンと連携することで、メッセージや天気予報を表示できるほか、ミュージックコントロール機能も搭載する。また、fenix 5Xで記録したログを、スマートフォンアプリ「Garmin Connect Mobile」に転送し、地図上で軌跡を確認することもできる。
さらに、PCとUSBケーブルで接続することにより、オンラインコミュニティ「Garmin Connect」にデータをアップロードすることも可能だ。
このほか、無線通信機能「ANT+」にも対応しており、フットポッドや心拍計測バンドと組み合わせることもできる。衛星測位機能はGPSおよびGLONASSに対応する。また、内蔵の加速度センサーにより、フットポッド不要でトレッドミルなど屋内ワークアウトの距離を記録することもできる。
道路だけでなく、登山コースでもナビゲーション可能
fenix 5Xには、トレーニング中のGPSや各種センサーが計測したデータを画面に表示する「アクティビティ」という機能があり、屋外アクティビティの場合は自動的にGPSが有効になる。アクティビティの種類は、「ラン」「トレイルラン」「トレッドミル」「ハイキング」「登山」「バイク(自転車)」「屋内バイク」「MTB」「プールスイム」「屋内スイム」「トライアスロン」「スキー」「ボード」「XCスキー」「ローイング」「ゴルフ」などさまざまな種類が用意されている。
例えば「ラン」では距離・タイム・ペースが表示され、「登山」では総上昇量・高度・総下降量、「屋外スイム」ではタイム・距離、「スキー」では滑走時間・滑走本数・滑走距離(または積算滑走距離)・積算標高差・最高速度・平均速度といったように、アクティビティによって表示するデータの項目が異なる。また、アクティビティの記録中はボタンを押すことで画面を切り替えて、地図などを表示することもできる。
スポーツの種類ごとに表示項目を設定できる「アクティビティ」とは別に、「アプリケーション」として、目的地を指定して経路検索を行う「ナビゲーション」や、地図上に現在地を表示する「地図」といった機能も用意されている。
ナビゲーション機能は街中などで自転車やランニングを行うときに、目的地を指定することでカーナビのようにルートを検索し、案内することが可能だ。また、ポータブルGPS受信機と同様に、登山コースでもナビゲーションを利用可能で、登山口で登り始めるときに山頂を目的地に設定することで、山頂までのルートを検索できる。ルート検索の方法は時間優先や標高差優先などを選択可能で、ルートから自己位置が外れた場合に自動的にリルートする機能も搭載している。
目的値までの経路の途中には曲がり角や分岐点ごとにポイントが設けられて、ナビゲーション中は次のポイントまでの距離が表示される。地図上では登山コースが赤色、検索したルートがピンク色、自分が歩いた軌跡が水色で表示される。
スマートフォンやポータブルGPS受信機に比べると画面サイズはかなり小さいが、ハンズフリーでいつでもデジタル地図を閲覧可能で、自分が山の中や街中でどの辺りにいるのか大まかな見当を付けられるのはとても便利だ。山行中は電池消耗を気にしてスマートフォンの電源を切っておくという人にも最適なGPSウォッチだろう。
情報量の多いオフライン地図とナビゲーション機能が魅力
同時期に発売されたカシオのWSD-F20と比較すると、WSD-F20ではオフライン地図を使う場合にあらかじめダウンロードしておく必要があるのに対して、fenix 5Xの場合は最初から全国の道路地図と登山地図がすべてインストール済みなので、余計な手間が一切不要ですぐに山へ持って行ける。
また、山岳地図として定評のある昭文社の山と高原地図の情報をもとに、山の中でもカーナビのようにルートを検索し、ナビゲーションを行えるほか、コースタイムや水場の情報など、普通の地図にはない情報を入手できるのも大きな魅力だ。反面、WSD-F20のようにさまざまなデザインの地図をインストールしたり、航空写真を見たりすることはできない。
価格については、希望小売価格においてfenix 5XはWSD-F20の倍近くの値段(※)だが、登山地図の情報量の多さとナビゲーションが可能な点を考慮すると、この価格差にも納得できる。登山だけでなく、自転車道路線などの情報も収録しているので、サイクリング用途にもおすすめだ。
また、サイクリングやランニングの用途には、移動したい距離を入力することで、現在地を基点に最適な経路を表示する「ラウンドトリップライド(ラウンドトリップラン)」という便利な機能もある。
fenix 5Xは、登山やスノースポーツ、街中で行うランニングやサイクリング、さらにはゴルフまで、実に多彩なスポーツに対応できるし、アクティビティトラッカーとしても使用できる。スマートフォンと連携してメッセージの通知を確認することも可能で、スマートウォッチのように使うこともできる。さまざまな用途に対応できる完成度の高い“全部入り”のGPSウォッチとして、とても魅力的な製品だ。
※「fenix 5X Sapphire」が9万9800円(税別)、「WSD-F20」が5万1000円(税別)