趣味のインターネット地図ウォッチ

トレイルランやハイキング向きなGPSウォッチ「TomTom Adventurer」、走る/登るルートの軌跡を腕時計に表示

GPX形式のログファイルを読み込み可能&音楽も聴ける

TomTomのGPSウォッチの最上位モデル「TomTom Adventurer」

 iPhoneやiPadのユーザーなら、「TomTom」という名に見覚えのある人もいるかもしれない。iOSの標準「マップ」アプリの著作権表記を見ると、Appleに次いで表記されているのがTomTomだ。同社は1991年にオランダで創業した企業で、カーナビゲーションシステムやGPSウォッチなどのコンシューマー向け製品、法人向けの位置情報サービスなどを提供するほか、地図データの提供会社でもある。まだ日本ではそれほど名の知られている企業ではないが、カーナビメーカーとしては、欧州ではトップシェアを誇るという。

 このTomTomが、GPSウォッチ/アクティビティトラッカーの分野で日本市場に参入したのは2016年のこと。その独特のデザインと操作性によってファンを集め、認知度も高まってきている。そんなTomTomのGPSウォッチの最上位機種として2017年2月に国内発売されたのが、今回紹介するGPSアウトドアウォッチ「TomTom Adventurer」だ。

GPX形式の軌跡ログを読み込んで時計画面に表示する新機能

 Adventurerは、GPSに加えて、気圧計も搭載。ハイキングやトレイルランニングにおいて、気圧の変化により高度や勾配を検知することが可能だ。また、スキー/スノーボードでは、リフトに乗っている状態を自動感知するため、滑走ごとに最大スピードや累積下降などのデータを確認できる。

 さらに特徴的な機能として、「トレイル探索(ルート探索)」という機能がある。通行する予定の軌跡ログを読み込んで、そのログをGPSウォッチ画面上に表示する機能だ。背景地図が表示されるわけではなく、あくまでも軌跡を線で表示するだけだが、目的地までのルートのどの辺りに自分がいるのかを確認することはできる。

「トレイル探索(ルート探索)」画面

 読み込み可能なログファイルはGPX形式のもので、自分が過去に記録したものを使えるほか、インターネット上に存在する数多くのGPXファイルをダウンロードして使用することも可能だ。例えば、登山記録を共有できる「ヤマレコ」や、ルートをアップロードして公開できるサービス「ルートラボ」で公開されている軌跡データは、GPX形式でダウンロードすることが可能だ。これらのサイトのデータも取り込んで活用できるわけだ。

40m防水で光学式心拍計を装備、容量3GBのオーディオプレーヤー機能も

 Adventurerの本体サイズは34×60×15mm(幅×高さ×非湾曲部分の厚さ)、重量は55g。光学式心拍計が搭載された防水GPSウォッチとしては軽量で、GPS稼働時のバッテリー持続時間は最大11時間。この場合の測位間隔は1秒だが、間隔が2秒となる「ハイキングモード」の場合は持続時間が最大20時間となる。防水性能は40m。

 さらにオーディオプレーヤー機能も搭載しており、オーディオ再生しながらGPSと心拍計を使うと持続時間は最大5時間となる。ちなみにオーディオファイルのストレージ容量は3GBだ。

時計本体の裏側に、光学式心拍計のセンサーがある

 充電は、付属の専用USBケーブルを本体に取り付けて行う。充電時間は90%までで40分間、100%まで充電する場合は1時間かかる。

 なお、この製品は、時計本体をバンドから簡単に外せるようになっており、バンドは、下位機種の「TomTom Runner 3」シリーズや従来機種の「TomTom SPARK」シリーズと共通のものを使える。Adventurerのラインアップはブラックのみだが、ほかにもさまざまなカラーのバンドがオプションで販売されている。

充電やPCとの通信は、時計本体裏側にある端子に専用USBケーブルを接続して行う
バンドを簡単に外せる
交換バンド

準天頂衛星「みちびき」に対応、衛星の軌道情報をダウンロードしておける「QuickGPSfix」機能も

 GPSは準天頂衛星「みちびき」に対応。時計機能に加えて、前述した気圧計と、コンパスも搭載している。GPSについては、スマートフォンやPCと連携することで、あらかじめGPS衛星の軌道情報をダウンロードできる「QuickGPSfix」という機能も付いている。GPSを使って計測する場合、最初に現在地を測位する必要があるが、軌道情報を使用した場合は測位完了するまでの時間がかなり短く、ストレスを感じることがなかった。

 ディスプレイはタッチ式ではないが、時計画面を手で覆うとバックライトが点灯する。夜間に表示を確認したい場合に便利だ。強い日差しを受けた状態でも見やすく、視認性はかなりいい。

時刻表示
コンパスの画面

独特なデザインの時計本体、GPSアンテナの周囲に上下左右4つのボタンを装備

 TomTomのGPSウォッチに共通するのは、時計本体の下部が湾曲した独特のデザインだ。湾曲部の突起には上下左右に4つのボタンが配置されており、これらのボタンですべての操作を行う。突起中央の四角い部分はGPSアンテナが内蔵されており、左手の手首に装着すると、ちょうど腕を振るときの状態で電波を受けやすい角度になる。このGPSアンテナの周囲にある4つのボタンは、普通の腕時計のように盤面のサイドに配置されたボタンに比べて、ボタンの位置が分かりやすく、とても押しやすい。

 操作方法は、並んだメニューの中からどれかを選択したり、計測をスタートしたりする場合は4つのボタンのうち「右」を押し、戻るときや計測を止めるときは「左」を押すのが基本。表示モードの切り替えは「上」「下」のボタンで行う。

GPSアンテナの突起の周囲にボタンを配置
ほかのウォッチとの比較。左から「GARMIN fenix 5」「TomTom Adventurer」「Apple Watch」
「TomTom Adventurer」には時計盤面部分のサイドに操作ボタンやダイヤルなどがない

ハイキングやトレイルランニングのほか、スイミングからトレッドミルまでマルチスポーツに対応

 Adventurerでは、スポーツのジャンルごとに計測中の表示が異なる。計測を開始するにあたっては、「ラン」「バイク」「スイム」「ジム」「トレッドミル」「サイクルトレーナー」「フリースタイル」「ハイキング」「トレイルラン」「スキー」「スノーボード」といったアクティビティメニューの中から選択する。

アクティビティのメニュー

 このうち「ラン」「バイク」「フリースタイル」「ハイキング」「トレイルラン」などを選ぶと、内蔵GPSを使用してスピードが計測され、通った軌跡ログが記録される。「スイム」「トレッドミル」を選択した場合は、内蔵のモーションセンサーを使用して、スイミングでのストローク数やターン数、トレッドミルでのストライドを計測できる。

 このほか、「ジム」を選択すると、心拍数情報とカロリー消費量が時系列で表示される。また、「サイクルトレーナー」を選ぶと、Bluetoothで接続されたケーデンス&スピードセンサーを使ってスピードや心拍数、カロリー消費量が表示される。

高度差
勾配
ペース
消費カロリー

計測したデータを地図上に表示できるウェブアプリ/スマホアプリも用意

 Adventurerで記録したアクティビティの情報は、Windows/Mac用ソフト「TomTom Sports Connect」を使用して、USBケーブルで接続したPCに読み込み、クラウドサービスの「TomTom Sports」に転送・保存できる。そのほか、Android/iOSアプリ「TomTom Sports」を使用すれば、Bluetooth接続したスマートフォン経由で計測結果をアップロードすることもできる。

 TomTom Sportsでは、GPSを使ったアクティビティの場合は地図上に軌跡が表示されるほか、下部にはスピードと心拍数の推移グラフも表示される。グラフ上にマウスポインターを重ねると、その箇所における標高や距離など細かい情報を確認することが可能だ。グラフの位置に対応した場所が地図にもアイコンで表示されるので分かりやすい。

Windows/Mac用ソフト「TomTom Sports Connect」
ウェブブラウザー上でアクティビティの結果を見られる
スマートフォンアプリ「TomTom Sports」

右/左ボタンを使って、軌跡の縮尺を切り替え可能

 軌跡データのGPXファイルについては、TomTom MySports ConnectでAdventurerとPCを接続した上で、ウェブブラウザー上から読み込み操作を行う。読み込んだGPXファイルは、Adventurerからアクティビティごとのスタート画面にアクセスし、メニューの中から「トレイル」を選択するとリスト表示される。この中から使いたいファイルを指定することで、アクティビティ中に軌跡(ルート)を確認できるようになる。

 GPXファイルの軌跡は薄い線で表示され、家の形をしたアイコンがスタート地点、ゴールの形をしたアイコンが終わりを意味している。現在位置は矢印で表示され、静止しているときは向いている方向、移動しているときは向かっている方向を示す。実際に自分が通過した軌跡は濃い線で描かれる。

 軌跡の表示サイズは3段階に切り替えることが可能で、右ボタンを押すことで縮尺が小さくなり、最もズームアウトした状態では軌跡全体の形を確認できる。背景地図がないため、自分が地図上のどの地点にいるのかを正確に知ることはできないが、ゴールまでの道のりの中で自分が今どのあたりにいるのか、あとどれくらい走ればたどり着くのか――といったことを大まかに把握することはできる。山道を走行するトレイルランニングのようなスポーツの場合は、シンプルな線で描かれたこのような軌跡のほうを好む人もいるだろう。

 GPXファイルを読み込まずに、自分が通過した軌跡だけを表示させることも可能だ。

最も拡大した状態
右ボタンを押すとズームアウトする
最も縮尺が小さい状態
自分が通過した軌跡だけを表示させることも可能

軽量・コンパクトで、トレイルランニングに最適

 このほか、トレーニングプログラムとして、距離・経過時間・消費カロリーなどの目標を設定できる「ゴール」、休憩を入れながらエクササイズを行える「インターバル」、設定した時間(ラップタイム)や距離に応じて計測できる「ラップ」、スピードや心拍数、ケーデンスなどを設定して目標のゾーン内でトレーニングできる「ゾーン」などのモードもある。

心拍数の推移を表示
心拍数ゾーンの表示

 また、過去のアクティビティ記録を登録し、その記録と競争できる「競争/レース」という機能もある。この場合、トレーニングの最中に、その記録より先行しているかどうか、差はどれくらいあるのかをグラフィカルに確認できる。

 GPSランニングウォッチとしては基本的な機能はひととおりそろっており、これに加えて気圧計により高度の変化や勾配などの情報も得られるため、ランニングだけでなくトレイルランニングや登山も楽しむという人におすすめのGPSウォッチだ。

 GPSアンテナの周囲にあるボタンは走りながらでも操作しやすく、音楽好きな人にとっては、内蔵ストレージに楽曲ファイルを保存しておいてBluetoothイヤホンで聴けるのも魅力だ。また、手持ちのGPSデータやインターネットで公開されているGPXファイルを使って軌跡を表示できる機能も面白い。

「競争/レース」モード
音楽を聴きながら走れる

 カシオの「PRO TREK Smart WSD-F20」GARMINの「fenix 5X」など、オフラインで地図が見られるGPSウォッチが今春に発売されたが、これらの多機能なGPSウォッチはどうしてもサイズが大きく重量も重くなる。ランニング計測がメインの場合は、TomTom Adventurerのような軽量な製品を好む人もいるだろう。これから夏にかけて、トレイルランニングを行う人には注目のアイテムといえる。

「TomTom Adventurer」の希望小売価格は4万500円(税別)。一方、特徴的な機能である「トレイル探索(ルート探索)」はそのままに、気圧計やアウトドア系の一部モード(ハイキング、トレイルランニング、スキー、スノーボード)は非搭載として用途を絞り込み、より安い価格設定で5月に国内発売されたのが「TomTom Runner 3」だ。“GPSアウトドアウォッチ”のAdventurerに対し、Runner 3はその名の通り“GPSランニングウォッチ”という位置付けとなっている。Runner 3には、光学式心拍計やオーディオプレーヤー機能の有無、付属Bluetoothイヤホンの有無により計4モデルのバリエーションがあり、例えば、Adventurerと同様に光学式心拍計とオーディオプレーヤー機能の双方を備えたモデル「Cardio+Music」は3万3130円(税別)、オーディオプレーヤー機能を省いたモデル「Cardio」は2万6630円(税別)。

片岡 義明

フリーランスライター。ITの中でも特に地図や位置情報に関することを中心テーマとして取り組んでおり、インターネットの地図サイトから測位システム、ナビゲーションデバイス、法人向け地図ソリューション、紙地図、オープンデータなど幅広い地図・位置情報関連トピックを追っている。測量士。インプレスR&Dから書籍「こんなにスゴイ!地図作りの現場」、共著書「位置情報ビッグデータ」「アイデアソンとハッカソンで未来をつくろう」が発売。