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手首装着で心拍数を測れるGPSランニングウォッチ、GARMIN「ForeAthlete 225J」レビュー

胸ベルト不要で心拍数を計測可能

 ランナーにとっては定番のアクセサリーとなっている胸ベルト型の心拍数計を使わずに、手首に装着するだけで心拍数(脈拍数)を測定できる製品が登場した。米GARMINの「Forerunner 225」がそれで、日本では正規代理店の株式会社いいよねっとから「ForeAthlete 225J」として販売している(同社オンラインストアでの販売価格は3万3800円/税別)。今回はこの製品のレビューをお送りする。

ForeAthlete 225J

 運動中の心拍数をリアルタイムで計測できる胸ベルト型の心拍計は、GPSランニングウォッチの定番アクセサリーとして広く使われているが、ForeAthlete 225Jは時計裏面に光学式脈拍センサーを搭載することで、本機単体での心拍数の計測が可能となった。これにより、走る前にいちいち胸ベルトを取り付ける手間がなくなるとともに、胸ベルト装着による違和感も感じることがなくなる。

ForeAthlete 225J
光学式センサーが搭載された背面

トレーニング以外の時でも使えるライフログ機能

 本体のサイズは5.49×4.8×1.6cmで、ディスプレイのサイズは1.0インチ(180×180ピクセル)。重量は約54g。GARMINで最も安価なベーシックモデル「ForeAthlete15J」は、重量が36gまたは43gなので、それと比べるとやや大きめだ。50mの完全防水仕様で、操作ボタンは5つ。準天頂衛星「みちびき」にも対応したGPSチップを搭載している。

 バッテリーはリチウムイオン充電池で、持続時間はGPSおよび脈拍センサーを併用した場合で約10時間。フルマラソンで使うには十分だが、ウルトラマラソンで使うには短い。なお、GPSや脈拍センサーを使わずに、時計機能だけを使った場合は約6週間、時計機能に加えてライフログ機能を使う場合は約4週間となっている。

 保存できるデータはタイムや距離、ペース/スピード、ピッチ、カロリー、心拍数などで、保存可能なトレーニングデータの容量は約200時間。設定した距離や位置で自動的にラップタイムを取得できる「自動ラップ」機能や、走行を止めると自動的に計測を一時停止する「自動ポーズ」機能も搭載している。自動ポーズ機能を使うと、信号待ちなどで計測を自動停止させることが可能となり、走行を再開すると計測も自動的に再開される。

 このほか、トレーニング時以外でも使えるライフログ機能も搭載している。これは歩数(ステップ)や移動距離、消費カロリー、目標値(ゴール)、達成率、心拍数、日付などを記録する機能だ。また、一定時間移動(運動)を行なっていないことを赤いバーで知らせる「Moveアラート」機能も搭載している。

左側にはボタンが3つ
トレーニング開始ボタンとラップタイムボタンの付いた右側
ディスプレイは1.0インチ
旧製品の「ForeAthlete 10J」(右側)と比べるとひと回り大きい

現在地をリアルタイムで共有できる「Live Track機能」

 無線通信はANT+に対応しており、胸ベルト型の心拍センサーやフットポッドと接続できるようにはなっているものの、前述したようにこの製品はそれ自体で心拍を測定する機能を内蔵しており、また、加速度センサーも内蔵されているので、フットポッド不要で屋内トレーニングのデータを計測できる。

 BLE(Bluetooth Low Energy)にも対応しており、専用アプリ「GarminConnect Mobile」をインストールしたiPhoneやAndroidスマートフォンとペアリングを行える。スマートデバイスと連携することにより、現在地をリアルタイムでウェブ上に公開し、第三者へ共有できる「Live Track機能」を利用することも可能だ。

 付属の充電クレードルをコンピューターのUSBポートへ接続することにより、Windows PCやMacとデータ通信を行なうこともできる。コンピューターには専用ソフト「Garmin Express」をインストールすることでデバイスとデータ交換を行なうことが可能で、GARMINが運営するウェブサービス「Garmin Connect」にトレーニングデータをアップロードしたり、コンピューター側で作成したトレーニング内容(ワークアウト)や、トレーニング計画を組んだカレンダーなどをForeAthlete 225Jにダウンロードしたりすることができる。

 Garmin Connectでは、トレーニングデータの軌跡を地図上で確認できるほか、ペースや心拍数の移り変わりをグラフで確認することもできる。また、ランニングシューズなどの消耗品を「ギア」として登録しておくことにより、走行距離などを管理することもできる。さらに、トレーニングデータだけでなく、歩数や消費カロリー、睡眠時間などのライフログデータも確認できる。

 ForeAthlete 225Jのディスプレイはカラー表示で、晴天下でも見やすい。バックライトの点灯も可能で、夜間でもバックライトキーを押すことで表示内容を確認できる。バックライトはキーを押してから一定時間操作を行わないと自動的に消灯する。

 GPS衛星の捕捉はかなり早く、上空の開けた場所であれば約30秒から1分程度で完了する。衛星の捕捉は電源投入後に自動的に行われて、捕捉中は衛星捕捉アイコンが赤色に点滅し、捕捉が完了すると緑色になる。バッテリーの消耗を抑えるため、衛星の捕捉をオフにすることも可能だ。

USB接続のクレードルで充電やデータ交換を行える
メニュー画面。GPS衛星の捕捉が完了すると上部のアイコンが緑色に変わる
Garmin Connect
ライフログデータも管理できる
Garmin Connect Mobile

測定した心拍数を5段階でゾーン表示

 一定時間操作を行わないと自動的にパワーセーブモードになり、バッテリーの消耗を抑えられる。パワーセーブモードに切り替わるまでの時間は初期設定では5分間となっているが、これを25分間に変更することもできる。パワーセーブモード時は、常に時計ページが表示される。時計ページでは現在時刻のほか、ライフログデータを確認することも可能で、1日の歩数や移動距離、消費カロリー、目標歩数、心拍数、達成率などの表示を切り替えられる。

 脈拍センサーは光学式で、計測中は本体裏面から緑色の光が照射される。この光は肌の色や周囲の状況に合わせて自動調光されるため、精度の高い計測が可能だという。心拍数を計測するにあたっては、事前に基準として「心拍ゾーン」を設定する。これは、ユーザーの最大心拍数や安静心拍数を基準に、どれくらいの心拍数でどの程度の運動強度かをゾーンごとに示すもので、心拍ゾーンを知ることにより、現在のトレーニングが自分にどれくらいの負荷を与えているのか、そして目標とする負荷に達するにはどれくらいの心拍数でトレーニングすればいいのかを知ることができる。

 心拍ゾーンは、数値の低い方から順に、「リラックス」「イージー」「モデレート」「ハード」「エキスパート」の5段階に分かれており、トレーニング中は時計の外周に沿った丸形のゲージでどのゾーンにいるかを確認できる。

 トレーニング中はこの心拍ゾーンゲージページだけでなく、一般的なGPSランニングウォッチのように、移動距離や経過時間、ペースなどを表示する「データページ」にも切り替えられる。データページに掲載する項目は、「タイム」「ラップタイム」「距離」「ペース(分/km)」「平均ペース」「ラップペース」「スピード(km/h)」「平均スピード」「心拍数」「平均心拍」「心拍ゾーン」「ピッチ(1分間あたりの総歩数)」「カロリー」「高度」「ラップ数」など、さまざまなデータの中から3項目を選んで画面の上・中・下に配置できる。

自動調光機能を搭載した光学式センサー
心拍ゾーンゲージページ
データページ

細かい練習メニューを作れるワークアウト機能

 このほか、コンピューターで作成したワークアウトを使ってトレーニングを行う際は、ワークアウト用のページが表示される。ワークアウトは、トレーニング内容(ウォームアップ、ラン、回復、休憩、クールダウン、その他)と、そのトレーニングを行なう量(時間/距離)を指定しながら、ステップを区切ってさまざまなトレーニングを組み合わせることが可能な機能で、例えば「ウォームアップとして10分間走ったあとに10kmのランを実行し、最後にクールダウンを5分間行う」といった細かいメニューを作れる。

 ワークアウトのステップの切り替えは、時間や距離を指定できるほか、ラップボタンを押すことで切り替えたり、心拍数や消費カロリーが一定値に達した時に切り替えたりと、さまざまなやり方を指定できる。

 このワークアウト機能とは別に、インターバルワークアウトのメニューも用意されている。インターバルワークアウトとは、トレーニング用のステップと休息用ステップを1つのセットとして、そのセットを繰り返す回数を指定して行なうトレーニングで、各ステップは、距離またはタイムから達成値を設定できる。こちらはワークアウト機能とは違ってForeAthlete 225J単体で達成値を設定することが可能だ。

 さらに、自己ベストを記録する機能や、設定した数値の範囲外になるとビープ音とメッセージの表示で警告するアラート機能も搭載している。GARMIN製のGPSランニングウォッチの多くには、設定したペースから大きく外れると警告を出す「バーチャルペーサー」という機能が搭載されているが、本機ではペースによるアラートだけでなく、心拍数やピッチ、タイム、距離などさまざまな数値でアラートを発することができる。

ワークアウトの編集画面

誤差の少ない安定した軌跡

 ForeAthlete 225Jを装着して実際に皇居周回コースを走行してみた。スタート地点は東京メトロ竹橋駅付近にある平川門で、ここから左回りに走行している。なお、計測時は歩行者の邪魔にならないよう歩道をゆっくりと走った。ログの一部で車道に入り込んでしまっている部分があるが、これはGPSの誤差によるものであり、実際の走行軌跡とは異なる。

 軌跡を見ると、スタート直後は車道側にずれてしまっているが、すぐに正しい位置となり、その後は真っ直ぐに安定した軌跡を描いている。その後も、半蔵門交差点付近と、ゴール手前の気象庁前交差点付近で車道に少し入り込むものの、全体的には大きな誤差が無く、かなりきれいな軌跡だと思う。総走行距離についても、1周で3.08マイル(約4.96km)と、ほぼ正確な周回距離が記録された。トレーニング開始時のGPS衛星の捕捉も早く、GPSランニングウォッチとしての基本性能はかなり高いと思う。

 胸ベルトを付けることなく、トレーニング中に心拍数を確認できるのはとても便利で、道路の勾配が変化する時などは心拍数を一定に保つように心がければ、オーバーペースを防ぐことができるだろう。もちろん、光学式脈拍センサーを内蔵したために、ForeAthlete 10Jなど非搭載の製品に比べると大きく重くなっているが、これくらいのサイズアップならば納得できる。胸ベルト型心拍センサーに煩わしさを感じている人や、これまで心拍センサーを使ったことのなかった人など、幅広いランナーにおすすめできるランニングウォッチだ。

皇居周回コースのログ
スタート付近
桜田門の周辺

片岡 義明

IT・家電・街歩きなどの分野で活動中のライター。特に地図や位置情報に関す ることを中心テーマとして取り組んでおり、インターネットの地図サイトから法 人向け地図ソリューション、紙地図、測位システム、ナビゲーションデバイス、 オープンデータなど幅広い地図関連トピックを追っている。測量士。インプレスR&Dから書籍「位置情報ビッグデータ」(共著)が発売中。