趣味のインターネット地図ウォッチ

第198回

ライフログ対応のGPSランニングウォッチ、GARMIN「ForeAthlete15J」

ライフログ機能を搭載したGPSランニングウォッチ

 1日を通して歩数やカロリー消費量などを測定できる活動量計が人気を呼んでいる。Fitbitや、ActiveShiftEDGE(オムロン)のようなスマートフォンと連携可能なワイヤレス活動量計のほか、リストバンド型活動量計も続々と発売されているし、iOS8にヘルスケア機能が搭載されるなど、スマートフォン側の対応も進んでいる。そんな中、GPSランニングウォッチとライフログ機能を併せ持つ新たな腕時計型端末として発売されたのが、GPS専業メーカーのGARMINが発売したGPSランニングウォッチ「ForeAthlete(フォアアスリート)15J」だ。

ForeAthlete15J

 「ライフログ」とは、自分の生活動作を長期間に渡ってデジタルデータとして記録すること。ForeAthlete15Jではステップ数のカウントや、カロリー消費計算などを行えるほか、一定時間動きがない場合にビープ音を鳴らして注意を促すムーブアラート機能も搭載されている。GARMINはGPSランニングウォッチのラインナップとは別に、ライフログ記録用のフィットネスバンド「vivofit」という製品を販売しているが、このvivofitが持つ機能の多くを追加した形となる。

vivofit

 もちろん、従来通り、GPSランニングウォッチとして走行ログを記録することも可能だ。ForeAthlete15Jの筐体は、以前から発売されているForeAthelete10Jと共通のものを使用している。ForeAthelete10Jは2013年2月に日本で発売された製品で、36g(男性向けモデルは43g)という軽さとコンパクトさを実現したモデルだ。15Jも10Jと共通の筐体で、重量やサイズ、ボタン数、ボタン配置などは全く同じ。PCと接続して充電およびデータ通信を行うためのUSBクリップケーブルが付属するのも同じだ。カラーは36gのモデルがTealWhiteとVioletWhiteの2色、43gがBlackBlue、RedBlackの色となっている。

パッケージ
(左から)ForeAthelete10J(重量36gのモデル)、ForeAthlete15J
クリップケーブル
USB ACアダプターで充電

 単に10Jにライフログ機能を追加しただけでなく、GPSランニングウォッチとしての付加価値も向上。15Jでは、10Jでは使えなかったハートレート(心拍)センサーとフットポッドが利用可能となっている。ハートレートセンサーを使えばGPSのログを取るだけでなく、心拍数の記録を行うことが可能で、走行中に心拍数が高すぎたり低すぎたりする場合に警告を表示する機能も搭載されている。

 フットポッドを使うことにより、トンネルやビルの谷間などGPSの電波が届かない場所でも距離を記録できるほか、室内のトレッドミルなどでの運動を計測することも可能だ。フットポッドの使用にあたっては、最初に衛星で測定した距離情報をもとに校正を自動で行う仕組みになっており、衛星捕捉を行ってから数分走行する必要がある。校正後については、フットポッドの使用中の距離計測は、GPSではなく常にフットポッドで行われる。

ハートレートセンサー
フットポッド
フットポッドをランニングシューズに取り付けた状態

 ライフログを記録するとなるとバッテリーの持続時間が気になるところ。ForeAthlete15Jの場合、GPSとして使った場合は約8時間だが、時計として使った場合は約5週間となっている。ボディは50mの完全防水で、GPSチップは準天頂衛星みちびきの補完信号に対応している。

運動を促すムーブアラート

 基本的な使い方は10Jと同じで、「電源ボタン」「トレーニングボタン」「戻る/ラップボタン(ライフログボタン)」「スクロールボタン」のうち、右上の「トレーニングボタン」を押すと衛星の測位を開始する。「イチカクニンチュウ」という表示のあと、衛星の捕捉が完了するとタイマーページが表示される。この状態で再度トレーニングボタンを押すとタイマーがスタートする。

衛星を捕捉するとタイマーページを表示

 トレーニング実行中(走行中)は、日時と月日が表示されるメインページ、タイムや距離など5種類のデータを確認できるデータページ、心拍データ、トレーニングオプションページを切り替えることが可能で、データページは2ページを設定して切り替えられる。1ページには5種類のデータから2項目を選んで同時に表示することが可能で、「タイム/距離」「タイム/ペース」「タイム/カロリー」「ペース/距離」「ペース/カロリー」「距離/カロリー」の6つの組み合わせが用意されている。これ以外の組み合わせは設定できず、データ項目の上下の入れ替えもできない。

 なお、速度表示は現在のペース(分/km)またはラップペース(現在ラップの平均ペース)、トレーニング全体の平均ペース、スピード(km/時間)、ラップスピード(現在ラップの平均スピード)、トレーニング全体の平均スピードの6種類から選択できる。

走行中の表示画面(距離/カロリー)
走行中の表示画面(タイム/ペース)

 このほか、設定したペースに対して、先行または遅延、オンペース(設定したペースで走行)などの状態をビープ音やメッセージで知らせる「バーチャルペーサー」や、ラン(走行)とウォーク(歩行)を交互に繰り返すトレーニングを支援するための「ラン/ウォーク」などの機能も搭載。距離に応じて自動的にラップ測定することも可能なほか、走行中に手動でラップ測定することもできる。自動ラップは0.4km、1km、2km、5kmから選択できる。さらに、走行中に信号などで停止した場合に、GPSでそれを検知して自動的にタイマーを一時的に停止し、再び走行スタートした時に再開する「自動ポーズ」機能も搭載する。

ランとウォークを交互に繰り返すことが可能

 心拍計とフットポッドは、無線通信規格「ANT+」に対応したもので、心拍計は胸のすぐ下に巻いて装着する。ベルトは柔らかめで付け心地は良好だ。心拍計を使用した場合は、設定した心拍数に達した場合や、設定範囲外の数値になった場合に、ビープ音とメッセージを表示する「心拍アラート」という機能を利用可能で、走行中に「シンパクタカスギマス」などの警告が表示される。

 ライフログ機能については、設定でオンにしておくことにより、GPSを使ったトレーニングモードの実行時以外の時は、自動的にライフログを記録する仕様となっている。前日のステップ数をもとに1日のステップ数目標を「ゴール」として自動的に設定する機能も搭載しており、メインページのバーでゴールに対する達成率を確認できる。このゴールは、後述する「ガーミンコネクト」を使用して手動で設定することも可能だ。さらに、「ムーブアラート」の表示を設定しておくことで、1時間移動をしないとメインページに「MOVE!」とメッセージが表示されてビープ音が鳴る。このアラートは2~3分以上のウォーキングを行うことでリセットされる。

ライフログ機能をオン
ステップ数と目標達成率のバー表示
消費カロリー表示
月日表示も可能
1時間移動しないと「MOVE!」というメッセージが表示される
ライフログデータの履歴

「ガーミンコネクト」にデータを転送して地図上でログを確認

 このようにして記録したトレーニングデータやライフログデータは、「ガーミンコネクト」というオンラインサービスにアップロードして確認・保存できる。保存したデータはスマートフォンアプリを使ってデータを閲覧することが可能だ。アップロードする際にはWindows/Mac向けソフト「ガーミンエクスプレス」というソフトをインストールする必要がある。このソフトは、機器のファームウェアを更新する時にも必要となる。インストールしたらForeAthlete15Jをクリップケーブルに取り付けて、WindowsやMacと接続すればトレーニングデータをアップロードできる。

ガーミンエクスプレス

 アップロードが完了したら、ウェブブラウザでガーミンコネクトにアクセスすると、トレーニングデータの一覧が表示される。トレーニングデータを見られる「スポーツ」コーナーでは、Google マップ上で軌跡を確認できるだけでなく、標高やペース、心拍数の推移が分かるグラフも表示される。最大心拍数や平均心拍数に加えて、平均ペースや最高ペースなどの細かいデータも確認できる。これらのデータはほかのユーザーと共有することも可能で、自分だけ、知人だけ、全員と公開範囲を決められる。データに対して「いいね」をクリックすることで評価することも可能だ。

スポーツのデータのリスト
軌跡ログをGoogle マップ上で確認できる

 一方、「ヘルス&フィットネス」のコーナーでは、ライフログのデータを確認できる。ステップ数やゴール達成率、消費カロリーなどを一覧できるほか、毎日のステップ数のグラフや、ゴール達成状況や合計ステップに応じて「バッジ」を獲得することも可能なほか、登録した友人や家族間でステップ数を比較することも可能だ。

ライフログのデータのリスト
ステップ数や消費カロリーを確認可能

 ウェブのガーミンコネクトにアップロードしたデータは、iOS/Androidアプリ「Garmin Connect Mobile」からもアクセスしてデータを確認できる。地図上にログを表示し、ラップの位置をタップするとペースを確認できる。また、ペースや高度のグラフ、ライフログのデータなども見られる。

Garmin Connect Mobile
ペースや標高の推移をグラフ表示
ライフログデータ

誤差の少ない安定したGPS性能

 それではForeAthlete 15Jの走行ログをチェックしてみよう。今回は皇居周回コースを走行して軌跡ログを記録した。比較に使ったのは、15JのベースモデルとなったForeAthlete 10J。スタート地点は東京メトロ竹橋駅付近にある平川門で、ここから左回りに走行。ForeAthlete 15Jを左腕に、ForeAthlete 10Jを右腕に装着してログを記録した。ログの赤線がForeAthlete 15J、青線がForeAthlete 10Jを示している。

 なお、計測時は歩行者の邪魔にならないよう歩道をゆっくりと走った。ログの一部で車道に入り込んでしまっている部分があるが、これはGPSの誤差によるものであり、実際の走行軌跡とは異なる。

 ログを見ると、スタート直後に10Jが大きく右にぶれているが、15Jは誤差の少ない安定した軌跡を描いている。そのまま千鳥ヶ淵の交差点を過ぎて左折し、内堀通りを南下するまでは15Jも10Jもほとんど同じ軌跡となる。桜田門の手前あたりで15Jが少しカーブ内側にズレるが、誤差はわずかでほとんど気にならない。違いが出るのは大手門付近で、スタート時と同じように10Jの軌跡が車道の方に外れるが、15Jは実際の走行ルートとほぼ同じ軌跡となっている。全体的に10Jと比べて誤差の少ない、安定したログとなった。

 GARMINならではの安定したGPS性能に加えて、ライフログ機能も追加したForeAthlete 15J。心拍センサーやフットポッドにも対応しているので、まずは本体だけ購入して、あとでアクセサリーを追加していくといった買い方もできる。機能や対応アクセサリーが増えたにもかかわらず、重量とサイズは10Jと変わらない点も魅力だ。ライフログが非搭載で心拍センサーやフットポッドにも対応しない10Jは、株式会社いいよねっとの直販サイトで1万4800円(税別)。15Jは1万8300円(税別)で、その価格差は3500円となるが、個人的にはこの差額を支払うだけの価値は十分にあると思う。GPSを使った場合のバッテリー持続時間は8時間で、100kmのウルトラマラソンなどには使えないものの、フルマラソンには十分なスペックであり、GPSランニングウォッチのエントリーモデルとして完成度の高いモデルと言えるだろう。

片岡 義明

IT・家電・街歩きなどの分野で活動中のライター。特に地図や位置情報に関す ることを中心テーマとして取り組んでおり、インターネットの地図サイトから法 人向け地図ソリューション、紙地図、測位システム、ナビゲーションデバイス、 オープンデータなど幅広い地図関連トピックを追っている。測量士。インプレスR&Dから書籍「位置情報ビッグデータ」(共著)が発売中。