インタビュー

子どものスマホ・SNS、「家族で話し合ってルール作り」と言われても、正直難しくないですか?

「16歳になった瞬間にSNSデビューする方が怖い」という上沼紫野弁護士にヒントを聞く

 青少年のスマートフォンやSNSの利用に関する、いわゆるデジタルセーフティの話題で、決まり文句のように使われるのが「家族で話し合ってルール作り」を、という提言だ。

 だが、筆者はいつも思う。「家族で話し合ってルール作り」って、サラッと言われるけど、相当に難しくない? と。

 Googleは7月に、GoogleおよびYouTubeのデジタルセーフティに関する説明会を行った。紹介されたのはGeminiに関する「AIファミリーガイド」、YouTubeのペアレンタルコントロールなどの家族・子ども向け機能、Androidの「ファミリー リンク」(Family Link)の3点だ。これらについて、詳細は後述する。

実質「押し付け」になりがちな「家族での話し合い」の問題

 機能紹介に続いてパネルディスカッションが行われ、その参加者の1人だったのが、今回お話を伺う弁護士の上沼紫野氏(LM虎ノ門南法律事務所)だ。

 上沼氏は、こども家庭庁の「青少年インターネット環境の整備等に関する検討会」委員、サイバー通信情報監理委員会委員、安心ネットづくり推進協議会特別会員などを務め、子どもからのSNS関係のトラブル相談に応じる機会も多い。スマホ・SNSの規制論に対しては「(一律の年齢規制で例えば16歳未満は禁止としておき)16歳になった瞬間にSNSデビューするほうが怖い。小さく失敗しながら付き合い方を学ぶ必要がある」との考えで、今回のパネルディスカッションでも、同様の意見を語っていた。

上沼紫野(うえぬま しの)氏。LM虎ノ門南法律事務所。千葉県立長生高校理数科、東京大学法学部卒。弁護士、ニューヨーク州弁護士。米国Perkins Coie法律事務所、FTCでインターンの後、知的財産、IT関連、国際契約等の業務を主に行う。最高裁判所司法研修所刑事弁護教官(2012-2015)、こども家庭庁青少年インターネット環境の整備等に関する検討会委員、サイバー通信情報監理委員会委員。産業カウンセラー、SNSカウンセラー

 GoogleおよびYouTubeでは、デジタルセーフティについて「子どもたちをデジタルの世界から守るのでなく、デジタルの世界の中で守る」というスタンスを示している。つまり、年齢制限などでデジタルツールから隔離するのでなく、適切にデジタルツールを利用できる環境を整えましょう、というもの。サービス事業者の意見ならば当然そうなる、ではあるが、上沼氏の考えと合致するとも言えるだろう。

 ここで、冒頭の「家族で話し合ってルール作り」への疑問に戻る。適切にデジタルツールを利用するには、ルール作りも必要だ。

 話し合いが全くできないほど壊滅的なケースは少ないとしても、実質的にほぼ親の意見を押し付けるだけとなり、結局ルールは守られない……という状況の家庭は多いのではないだろうか。ルール作りや運用をめぐって、保護者の間で意見が対立するケースもあるだろう。説明会の最後に行われたパネルディスカッションでも、そのような悩みの話題が出た。

 今回は、親が「家族で話し合ってルール作り」への解像度を上げ、子どもと意義のある話し合いができるようにするためのヒントを、上沼氏に伺った。


「気分で怒らない」「話を最後まで聞く」をまず心がける

——家族・親子で話し合いをするとなると、前提として親子の間に信頼関係が必要だろうと思います。が、親も子も互いに「言っても聞かないけど」「通じないけど」とか思いながら一応話して……となっていることは多いように思います。

 信頼関係と言うといささか硬い感じになりますが、親はどうすれば、子どもから「話が通じる相手」だと認識してもらえるでしょうか?

上沼氏:おっしゃる通り、いきなり「話し合い」と言われても、難しいものだと思います。まず大切なのは、子どもから、何かがあったときに相談してもらえる関係を作ることです。

 親に相談しても意味がないとか、かえって状況が悪くなるとか思われていると、子どもが困った事態に陥ったときに、一人で何とかしようとして、結果的に事態を悪化させてしまうことになりがちです。

——上沼先生からご覧になって、信頼関係があってうまく行っている親子と、そうでない親子に、どのような違いがあると思われますか?

上沼氏:私が相談を受けるケースでは「そうでない」ケースのお子さんがほとんどになりますが、皆さん「親に言うと怒られる」と思っています。親に相談する方が不利益だ、という認識だと、相談しようという考えにならないのですよね。

——なぜ、「親に言うと怒られる」という認識になるのでしょう?

上沼氏:そうしたケースでは、親が「気分で怒る」のです。子どもが同じことを言っても、機嫌がよければ何も言わず、機嫌の悪いときはものすごく怒る、ということでは、子どもとしては怖くて話ができなくなります。

 親の気分で対応がブレることがあってはいけません。いつも同じ基準で扱ってくれる、と子どもが認識できれば、そこから安心感、信頼感が生まれるでしょう。

 また、「話を最後まで聞かずに怒る」ということも問題です。親としては、(話が途中でも)そこまで聞けば分かった、ということもあるかもしれませんが、子どもからすれば、話をきちんと聞いてくれず、すぐに怒る、ということで、信頼感が損なわれます。

 聞いている途中で何か思っても、まずは飲み込んで最後まで話を聞く。(怒るのでなく)叱るにしても、子どもの話を受け止めて考えた結果なんだと思ってもらえる間があるべきですね。

 気分で怒らない。話をしっかりと聞く。まずは、このあたりを意識すると、子どもから「話が通じる親」だと見てもらえるようになると思います。

——「対応に一貫性がない人とは、誰も話したがらない」「相手の話を遮らない」というのは対人コミュニケーションの基本的な注意点だと思いますが、家庭で、親という強い立場であるとなると、つい自分に甘くなってしまうこともあるかもしれないですね。


「本当に重要な1、2のこと」の理由を理解してもらう

——話し合いができたとして、ルールの粒度や運用の厳格さについては、どのように考えるのがいいでしょうか?

 「うちは放任主義です」という方もいれば、細かなルールを決めて緻密に運用しているという話も聞きます。突き詰めればケースバイケース、家族や子どもの個性によるだろうとは思いますが、もう少し考え方の基準にできるものがあればなと思います

上沼氏:運用できるなら多くのルールがあってもいいのでしょうが、まず最低限、何が必要かと考えるなら、本当に重要なことを1つ2つ決めて、それはなぜかを、親子で話し合うことです。

 どんなルールも、子ども自身が重要さを認識していなければ、「やらされ感」が出てしまいます。まずは本当に重要なことについて、しっかりと重要さを確認して、理由を理解してもらうことから取り組むべきですね。

——その、本当に重要な1つ2つのこととは、具体的にはどういうことが考えられるでしょう? 学業とか生活習慣とかでしょうか?

上沼氏:SNSなどの利用から起こりうる危険として、最も重要なのは、子どもの生命や身体に関することです。殺人事件や傷害事件になって報道された例もありますが、相談を受ける中でも、深刻な上に数が少なくないのは、YouTubeには当てはまりませんが、一般的なSNSなどで、相手に要求されるままに裸の写真を送ってしまった、というケースです。

 そのような、取り返しのつかないことも起こりうる、だから、知らない人とネットでは話さないようにしよう、といったことを話せば、自分を守るために重要なことだと納得してもらえる可能性は高いでしょう。

編集部注: 裸の写真を送ってしまうケースは、交際あるいはそれに近い関係にある相手との間で起こる以外にも、オンラインで性的な期待を持たせながら言葉巧みに写真を送らせ、それを使って脅迫をする手口も知られている。セキュリティの用語では、これを「セクストーション」(性的脅迫)と呼ぶ。さらに、「PCのウェブカメラを遠隔操作して性的な映像を撮影した」などと、実際には撮影していないのに脅迫する「偽セクストーション」あるいは「セクストーション詐欺」と呼ばれる手口もある。これらは年齢・性別を問わずターゲットとなり得る。
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 もう1つ決めるとすれば、お金の話です。サブスクリプションやゲーム関係の支払い、オンラインショッピング、フリマサイトの利用など、いずれのケースにせよ、お金を使うことに関しては親の承諾を取る。お小遣いの範囲なら親が代わりに決済するとか、特定の用途に対してならこれくらいの額は許容するとかいったルールを、はっきりと決めておくといいでしょうね。

 学業に関しては、ネットがあってもなくても生じる問題ですし、ゲームをする時間が長すぎるとかいったことは、身体やお金の次の問題だと思います。親がどのような理由でルールを提案するのか、守ることにどのような意味があるのかが分かってくれば、自ずと学業や生活習慣に関しても自制が利くようになりますし、ルールとしても話し合えるようになります。

編集部注: オンラインでの金銭支払いについては、スマートフォンのOSやサービス上の設定、アカウント管理において、親の承諾なしでは決済を完了できないように設定できる。適切に設定したうえで、親と子どものアカウントを分け、親のアカウントを使わせないようにすることで、システム的に大きなトラブルを回避可能だ。親子でアカウントを分けるには、デバイスを分ける(子どもに専用のスマートフォンを与えるなど)ことが簡単かつ確実だが、専用デバイスがない場合には、アカウントを複数設定する、決済機能を通常はオフにする等で対策したい。
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「失敗が許される環境」をどう作るか?

——上沼先生は「小さく失敗させる」ことが大切だとおっしゃっていますが、子どもの失敗が許される環境をどう作るかも、難しいテーマだと感じています。

 昨今、セキュリティの文脈では「サイバーレジリエンス」(サイバー攻撃に対する回復能力)という言葉が使われ、強固に防御するだけでなく、攻撃を受けてしまうことはあるという前提で、回復能力を備えておくことも必要だと言われます。

 単に「ルール」と言うとき、そこからの逸脱や失敗は許容されないような印象もありますが、子どものスマホ・SNSの話題でも、失敗は起こるものだという前提で、それを許容し、回復できる、さらには学びの機会にできるようにすることが大切だと思います。そのための考え方などを、アドバイスいただけますでしょうか。

上沼氏:そのような点では、リアルと同じ世界でネットも始めよう、とお話しします。まずは家族間、それから、学校の友達との間。少なくとも小学生の間は、オープンなSNSはやめて、知った人たちの間だけのやり取りにするべきです。

——それは、顔を合わせて口頭で会話するのとは違うのでしょうか?

上沼氏:顔を合わせての会話だと、基本的には全員が当事者になります。ネットの場合は、やり取りの場に第三者も存在します。この、第三者として他者のやり取りを見たり、自分のやり取りが第三者から見てどのように捉えられるかを理解したりするのが、ネットならではの経験になります。

 例えば、深い関係の相手なら、多少乱暴な言葉遣いだったとしてもやり取りが成立するかもしれませんが、それを事情を知らない第三者が見ていたら、「あなたはあの時、こんな乱暴なことを言った」のように指摘されることもあります。そういった小さな失敗を経て、立ち振る舞いを学ぶことが大切です。

 子どもは、10歳ぐらいまでは自分と他者の区別(自他境界)が曖昧だと言われます。このような第三者の視点を理解できるようになるまでは、全く知らない第三者がいる場には出ない方がいい、というのが、先ほど小学生の間はオープンなSNSはやめて、と言った理由です。

——少々個人的な話をさせてください。私は20歳になる子どもがいるのですが、中学校に入ったとき、保護者向けのオリエンテーションの最初に子どものLINEのトラブルについて注意するように、といった話をされて、驚いたことがあります。

 学校の友達同士でも結構深刻なトラブルになることもあるようですし、聞いた話では、子どものトラブルがママ友(保護者)間のトラブルにまで発展したという話もありました。これは大変なことだなと思いましたが、クラスメイトの間なら、まだ相対的には「小さな失敗」の範囲と言えるでしょうか?

上沼氏:そうです。もちろんトラブルが起きるのは大変なことですが、現実的にはまさに「失敗は起こるもの」で、多少はやむを得ません。全くの見知らぬ人とトラブルを起こすよりは、知っている人の方がまだいいですよね。

 失敗して傷ついて、そこから回復するのがレジリエンスということではないでしょうか。

——確かに、そうですね。知らない人との間では失敗しても原因を考える材料が少ないし、修復の可能性も考えにくいですし。


交友範囲を広げるなら「趣味でつながる」場がいい

上沼氏:学校の友達より広い範囲の関係でも、子どもがオンラインで付き合う相手を把握することは、ある程度できます。例えば、お父さんが子どもと一緒にオンラインゲームをしているというケースも聞きます。

——なるほど。これも個人的な経験ですが、子どもがポケモン好きで、いろいろあって小学生の頃にポケモン好きの先輩プレイヤーとつながりができたのですが、ずっと気にかけていただいて、子どもが大きくなってもSNSを通じて関係が続いている、ということがあります。大変ありがたい、貴重な出会いでしたね。

 また、別のゲームに熱中しだして、子どもの言葉遣いが急に荒くなったことがありました。何も分からなければかなり困惑したでしょうが、原因は新しいオンライン対戦ゲームだろうということで、まあ……そういうこともあるかなと。かなりうるさく注意しましたが。

上沼氏:どのようなケースでも、お子さんのしていることや交友関係について情報が多いほうが、さまざまな対応や判断も適切にできるようになります。そういう意味でも話し合うことは大切です。

 大きくなれば、学校の友達以外にも交友範囲が広がりますし、オンラインでの活動も増えるでしょうが、「コミュニケーション主体」のサービスよりは、「趣味でつながる」ような場がいい、というお話をします。

 共通のテーマとして趣味があることで、コミュニケーションの取っ掛かりも分かりやすいし、テーマに沿った文脈があるので、ある程度は穏やかな場が維持されます。


子どもに「ひとりの個人」として向き合うことが大切

——今回、上沼先生にお話を伺って、「親子で話し合ってルール作り」とは、成果物としての「ルール」を作る前に、十分に「親子で話し合う」ことを、まず目標にするべきだな、と感じました。

上沼氏:気分で怒らない、話をしっかりと聞く、また交友関係や趣味・関心事を知る、といったことは、大人どうしの関係では当然心がけることですよね。そういう意味では、子どもをひとりの個人と捉えて向き合い、尊重することが大切だと言えます。

 スマートフォンやインターネットなどは、子どもの方が詳しいことも多いし、親子で話していて、親の「上から目線」になりにくい話題だと思います。

 また、スマートフォンを使いすぎてしまう問題などは、子どもに限ったことではありませんから、「親も同じルールを守る」ということもおすすめしています。

——時間制限を設けるなら、親も一定以上使わない姿勢を示す、というのはいいですね。本日はありがとうございました。


 最後に、少し補足を。上沼氏のコメントで「スマートフォンやインターネットなどは、子どもの方が詳しいことも多い」とあったが、INTERNET Watchの読者には、そんなことはなく自分の方が圧倒的に詳しい、という方も多くおられるだろう。

 とはいえ、親世代と子ども世代では、インターネットの「見え方」がぜんぜん違っており、親世代に見えていないものが、子ども世代には見えていることもある。また、同じものを見ていても捉え方が大きく異なることもある。

 もし、意見の違いなどが感じられたら、すぐに訂正したり否定したりするのでなく、違いが生じた理由を探りながら、対話を楽しんでいただければと思う。世代間ギャップを話すネタには、本誌30周年記念の振り返り記事もお役立ていただきたい。



Googleが提供しているデジタルセーフティ関連資料・機能

 説明会において、Googleが紹介した3つの資料および機能を紹介する。なお、下記の画像はいずれもタップ(クリック)して拡大表示できる。

AIファミリーガイド

 生成AIの活用方法について、家族で話し合うためのガイドラインとなる資料。生成AIはどのような仕組みで答えを出してくるのか、AIに頼り切りでいいのか、どのように使えば有意義なのか、といった疑問について考えるためのヒントとなる。

 なお、Googleでは、小中学生の子どもに対しては、一緒に話し合いながら大人が生成AIを操作するようにすることを推奨している。

 この資料は、以下のリンクからPDFをダウンロードできる。

AIファミリーガイド

YouTubeのファミリー向け機能

 YouTubeが提供する家族・子ども向け機能には、13歳未満向け専用アプリ「YouTube Kids」やペアレンタルコントロール(保護者によるコントロール)機能、ショートフィードの再生時間制限、一定時間ごとに休憩を促す機能、1日のうちで視聴を終了する「おやすみ時間」を設定し、通知する機能などがある。

 生活習慣が乱れるのを防止するために役立ち、設定したうえで視聴を許可するのであれば、親としても安心できるだろう。以下の「YouTubeファミリーセンター」から、各機能の詳しい説明を確認したり設定したりできる。

YouTubeファミリーセンター

Android ファミリー リンク

 Androidデバイス向けのペアレンタルコントロール機能。子どものデバイスがAndroidなら親はiPhoneでも利用できる。利用時間の管理およびスケジュールの設定、位置情報の把握と通知、アプリやコンテンツの制限などの機能を持つ。

 以下のリンク先で、詳しい解説を確認できる。

Android のファミリー リンクで子どものスマホを管理。時間制限や位置情報を共有する方法を紹介