読めば身に付くネットリテラシー

オンラインで知り合っただけの相手とビデオ通話で性的な行為をするのは危険!“セクストーション”の被害が拡大中

 SNSや出会い系アプリで新たな出会いを求めている人が増えています。実際、忙しい人たちにとって、時間や場所を選ばず、いつでもどこでも新しい相手を探せるのは便利です。多くの人たちが出会い、結婚に至る人も増えています。しかし、多くの人たちが利用している分、ネットの闇も入り込んできます。中でも深刻な被害を出しているのが“セクストーション”です。性的な「セックス」と、恐喝という意味の「エクストーション」を合わせた造語です。

 女性の画像を使ったアカウントで多くの人とつながり、性的な会話に誘導します。あなたの裸の画像を送ってくれたら、自分も送る、と言ってくるのです。しかし、真に受けて画像を送った途端、態度が豹変し、その画像をばらまくぞ、と脅してきます。裸の画像だけでなく、いかがわしいことをしている動画を送らせることもあります。近くに住んでいるので実際に会おうと言って、個人情報を聞き出すこともあります。

オンラインで出会った女性から、裸の画像を送り合おうと誘われます(生成AIで作成したイメージ画像です)

 若い男性が、棚から牡丹餅的に女性と知り合い、性的な行為をするチャンスがあれば理性が低下し、言われるままになってしまう可能性が高くなります。自分の裸の映像を送るのも、女性よりは抵抗がないかもしれません。

 しかし、想像してください。性的な行為をしている自分の画像や動画を、SNSなどでつながっている人たちに片っ端から送り付ける、と脅されるのです。個人情報と紐づいてしまうと、深刻な被害が出ることは予想できるでしょう。相手も畳みかけるように、その結果どのようなことが起きるのかを伝えてきます。

 要求は金銭です。10万円、50万円といった若者でも支払えそうな金額を言ってきます。そして、支払えなければばらまく、と脅されます。

脅迫する素材がそろったら、手のひらを返して金銭を要求してきます(生成AIで作成したイメージ画像です)

 セクストーションを仕掛けられ、パニックになり、自殺に至ってしまう事例があとを絶ちません。2022年、米ミシガン州の高校生は犯人から1000ドルを要求され、300ドルを送りましたが納得してもらえず、「みじめな人生を送れ」などと言われ、彼は命を絶ってしまいました。セクストーションの標的になってから6時間後のことです。

 2023年にはカナダの14歳の少年がセクストーションに遭いました。10代の女性を装ってInstagramで近寄ってきたアカウントと仲良くなり、Snapchatでやり取りするうちに、性的な画像を送るようになったのです。そして、家族にばらすと脅され、電子マネーを購入して送るように言われたのです。数分間のやり取りですが、その後、少年は自殺してしまいました。

 どちらの事件も犯人が逮捕されていますが、犯人は女性でさえなく、男性です。生成AIで作ったりネットで拾ったりした画像を使ってだましていたのです。

 FBIはセクストーションに関する啓発サイトを開設しています。セクストーション被害が急増し、脅迫を受けた結果、自殺してしまう被害者も驚くほど増加しているそうです。

 自分は引っ掛かるわけがない、と思うかもしれませんが、犯罪者たちは10代の若者にアプローチする方法を日々研究しています。自分は見る目がある、ネット詐欺を見破る自信がある、と思っている人ほど、一定レベル以上の詐欺師に狙われるとひとたまりもありません。見破るかどうかにこだわるのではなく、オンラインで知り合っただけの人には個人情報を渡さない、ましてや、いかがわしい映像を共有しない、ということが重要です。

 もし、セクストーションの被害に遭ったら、恥ずかしがらずに必ず両親や警察に相談してください。恥ずかしいことをしたと隠そうとすると、金銭やさらに恥ずかしい写真などを要求され被害が拡大していきます。サイバー犯罪者は言われたお金を払ったからと言って脅迫をやめません。とことんまで被害者から絞り取ります。例えば、前述の事件で逮捕された犯人たちは、被害者のことを顧客と呼んでいます。彼らにとってはセクストーションはビジネスなのです。

 FBIも「セクストーション被害に遭ったのはあなたのせいではありません」というメッセージを強く発信しています。犯罪を犯しているのはセクストーションを仕掛けている側であって、あなたは被害者なのだから相談してください、と言っているのです。

 我々DLIS(NPO法人デジタルリテラシー向上機構)にも、セクストーションの被害者から相談があります。彼らは口をそろえて、絶対に親に迷惑をかけたくない、と言います。お金を払ってもいいので、画像や個人情報だけは回収したいと、その方法をたずねてきます。しかし残念ながら、一度ネットで送ったデータの回収は不可能です。DLISで犯人を特定することも困難です。性的なビデオ通話やバーチャルセックスなどは、女性はもちろん男性でも、人生を崩壊させるリスクがあるということは肝に銘じておいてください。


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※ネット詐欺に関する問い合わせが増えています。万が一ネット詐欺に遭ってしまった場合、まずは以下の記事を参考に対処してください
参考:ネット詐欺の被害に遭ってしまったときにやること、やってはいけないこと