インタビュー
「怒りの心理」を学ぶ研修からサポート技術競技会まで~満足度国内最高クラスのオプテージ「eo光」コンタクトセンターの秘密を探る
2026年2月17日 06:00
インターネット接続サービス(ISP)を選ぶ際の重要な指標の1つに、「サポート」がある。
そして、ISPのサポート満足度調査で、いつも最高クラスの評価を得ているのが、株式会社オプテージが提供する「eo光」(イオひかり)だ。
同社は関西電力グループで、関西圏(大阪・京都・兵庫・奈良・滋賀・和歌山および福井)のみの提供となるが、例えば2025年6月にオリコンが発表したインターネット回線の顧客満足度調査におけるカスタマーサポートの得点は、全国で最高の66.8点となっている。
聞けば、同社はサポートに非常に力を入れており、本社ビルのほぼ半分がeo光のサポート部門(コンタクトセンター)向けに使われているという。今回は、あまり見る機会のない、ISPのコンタクトセンターの様子をレポートする。
オペレーターは「人はなぜ怒るのか?」の心理から学ぶ
eo光のサポートは、ウェブサイトのFAQ、AIチャット、オペレーターによるチャット、電話のほか、メールによるサポート、電話の折り返し予約(予約した日時にサポートからユーザーへ電話する)、リモートサポート(オペレーターがユーザーのPCをリモート操作する)など、さまざまな手法が用意されている。本社ビル内のコンタクトセンターには約1000席が設けられており、オペレーターが9時〜18時の電話サポート、9時〜21時のチャットサポート(いずれも365日)に対応する。
コンタクトセンターは複数の協力会社が参加して運営され、オペレーターは各社が求人・採用する。運営マニュアルや基礎的なナレッジデータベースはオプテージが提供するが、運営の細部には協力会社ごとの工夫もあるという。
業務は、大きくテクニカルサポートと案内(料金や契約に関するやり取りなど、事務的なサポート)に分けられ、オペレーター個人の特性などから判断し、それぞれのチームに配属される。
オペレーターとして働く人には、どのような人が多いのだろうか? 多くはアルバイトで、年代でいえば50代が最も多く、次いで多いのは20代。テクニカルサポートはフルタイム勤務、案内は短時間勤務の人が主力。案内のオペレーターには主婦が多いという。
インターネットは問題なく接続でき、利用できるのが「当たり前」であり、接続できないなどのトラブルが起きてISPのテクニカルサポートに連絡したユーザーには、慌てている人や、感情が昂っている人も少なくないと想像される。そうした人をサポートするオペレーターは、そう簡単な仕事ではないだろう。
実際、多くのオペレーターにとっては最初の研修を終えて、実地研修(OJT)に入ったところで定着までの「壁」があるといい、そこを無事に越えていけるよう、コンタクトセンターではノウハウを結集した研修メニューを組んでいる。
「研修では、クレーム対応の技術として『人はなぜ怒るのか?』という心理を学び、感情的になっている方への向き合い方も身につけていただきます。ただむやみに謝るような応対では、逆鱗に触れるようなことにもなりかねません」と、オプテージの江口氏。感情的になってしまっているユーザーから必要な情報を聞き出し、応対していく技術や、怒っている相手に対する心構えも学ぶことができ、感情的なユーザーにも怖がらずに向き合えるようになるという。
もちろん、カスタマーハラスメント(カスハラ)対策のノウハウやマニュアルもあり、一定のラインを超えるクレームやカスハラに対しては、状況を見てチームのリーダーにあたるスーパーバイザー(SV)が担当を代わったり、対応を停止したりする。なお、カスハラに相当するクレームは「おおよそ月に10件ぐらい」と多くはないそうだが、担当することになったオペレーターの心理的なダメージは大きく、しっかりとした対策により、オペレーターの安全を確保するようにしている。
トラブルで連絡してきて、最初に感情的になっているユーザーほど、解決したときは喜びが大きくなることが多いという。最近の事例として、かんでんCSフォーラムの紀氏から、次のようなエピソードを紹介していただいた。女性オペレーターが対応した事例で、相手のユーザーは高齢の男性。最初はかなり感情的だったが、根気よく話を聞いて、問題を解決できた。すると、ユーザーは喜びと感謝の言葉を次々と述べ、最後には「うちの息子と結婚してほしい」とまで言われたという。
このほか、テクニカルサポートのオペレーターには、OJTを含めて2カ月程度かけて研修を行い、必要な技術的知識を教える。これによって、特に知識のない状態で入社した人でも、しっかりとした知識に基づくテクニカルサポートができるようになる。
「5段階評価の5」獲得60%以上を目指し、日々改善に努める
eo光は、コンタクトセンターに限らずユーザー本位の姿勢でサービス提供に取り組んでいる。「“お客さま起点”で考える」ことを会社全体の取り組み姿勢として掲げており、社長室直通のアンケートなどを全社で確認し、サービス改善を行っているという。
コンタクトセンターの取り組みでは、スローガンとして掲げられている「ONE VOICE ONE STORY」に、それが現れている。サポートのひとつひとつのやり取りを、顧客の喜びや満足につながるストーリーとしていこうという姿勢であると解釈できる。
業務の評価方法も、少々ユニークだ。サポート終了後のアンケートの結果をもとに、全体では「トップ1評価」60%以上の獲得を、1つの指標としているという。
米COPC(Customer Operations Performance Center)が定めるコンタクトセンターの業務品質を評価する規格においては、トップ2評価(5段階評価中の5または4)を85%以上獲得することが、優秀なセンターの目安の1つとされる。eo光のコンタクトセンターでは、このトップ2評価獲得率だけでなく、トップ1評価(5段階評価中の5)獲得率も評価対象にしているわけだ。
世の中には、5段階評価を求められたときに、5を基準として特に不満がなければ5を付ける人もいれば、3を基準に考えて増減させ、あまり5を付けない人もいるだろう。ことサポートに関しては、当人の不便や不都合といった満足度マイナスの状態からスタートすることが多いため、かなり高い満足度や強いインパクトがなければ、トップ1評価されにくいのではないかと想像する。
トップ1評価率向上のため、コンタクトセンターでは、マニュアルに沿った対応に加えて「お客さまの期待を超える何らかの声かけ」が必要だと考えており、協力各社が独自に工夫しているという。
待ち時間の息抜きになる掲示板、サポート技術の競技会も
コンタクトセンターのオペレーター席には、PCと2画面のモニターが標準装備されている。1画面には対応中のユーザーの情報、もう1画面にはナレッジ(対応のためのマニュアル、データベース)を開き、対応にあたるのが基本となる。
業務時間中にはしばしば「待ち」の時間も生じるが、そのような時間に、隣席の人と話すこともできない(応対中のオペレーターもおり、会話がユーザーに聞こえてしまう)。そこで、情報共有や雑談のために、コンタクトセンター内の掲示板システム「Waoチャンネル」が運営されている。
Waoチャンネル内では、例えば「周辺のおすすめランチを教えてください」のようなやり取りが行われ、オペレーター同士の横のつながりが生まれる。また、コンタクトセンターを管理するスタッフからのメッセージの投稿も行われる。
ビル内には広い休憩室も設けられており、休憩時間にはそちらも利用される。複数のマッサージチェアが並ぶエリアや、畳敷きのエリアもあり、オプテージの本社ビルは大阪城の近くにあるため、大阪城を眺めながらリラックスできる。
コンタクトセンターのオペレーターは感情労働であることもあり、オペレーターのウェルビーイングや満足度は、顧客満足度とともに非常に重視されている。
同時に、サポートスキル向上のためのモチベーションを高める取り組みも行われている。2024年には、サポートスキルの競技会「Wa王」が実施された。コール(音声対応)、テキスト(対応記録テキストの内容)、事務(タイピング)の3部門について厳正な審査が行われ、優勝者には「Wa王」の称号と副賞が贈られたという。
コンタクトセンター内を見学すると、その一角に、契約に関する対応を行うチームがあった。年度末にあたる取材時、そのチームは「解約阻止」を重点課題としていた。
サービスの解約阻止といえば、あの手この手で解約手続きにたどり着かないようにされたとか、通常のメニューにない謎の値引きを突然提示されたとかいった経験を持つ人もいるかもしれないが、ここでいう「解約阻止」は、そういった話ではない。
年度末には引っ越しなどの事情により解約する人も多いが、ISP各社が新規獲得を強化するシーズンでもあり、家電量販店などさまざまな場面で「こちらのISPに(eo光から契約を)切り換えたらお安くしますよ」といった勧誘が発生する。
そうした勧誘を受け、連絡してきたユーザーに、eo光のメリットや、未利用の割引プラン(長期利用者向けの、その先3年間の長期契約による割引など、利用意向を示して契約をすれば割引になるプランがあるが、メールなどで案内しても見ていない人は一定数いるという)を説明し、「やっぱりeo光で」と思ってもらうのが、その役割だ。案内担当の中でも精鋭チームが当たるという。
働くオペレーターからは「お客さまが優しい」との声も
以上、eo光のコンタクトセンターについて見てきた。編集部でもISPのコンタクトセンターの内情を見聞きする機会は少ないが、ユーザーと従業員の双方を尊重した、高い目標と整った環境が、双方の高い満足感につながっていると感じられた。また、競技会まで開催し、技術の研鑽に励んでいる例は少ないのではないかと思われる。
最後になるが、この地域ならではの話し方、関西弁の効果にも注目したい。eo光は関西圏向けのサービスであり、コンタクトセンターのオペレーターも大阪周辺の人たちで、そのやり取りには、関西弁が自然に用いられていた。
サポートにおいて、クレーム対応など、かしこまったやり取りでは標準語に近い言葉になるというが、操作の説明などでは、関西弁が増えるようだ。言ってみれば、標準語と関西弁でプロトコル(対話の方式)が2通りある状況で、これをうまく使い分けていることが、円滑なやり取りや高い満足度に、いくらかプラスに影響しているのではないだろうか。
方言に対する印象は人によりさまざまだろうが、地方出身(関西ではなく北陸だが)の筆者は、心を開いて話してくれているようで、心理的な距離がぐっと近くなると感じる。コンタクトセンターのオペレーターの声としては、「お客さまに結果だけでなく(時間をかけて必死に説明した)過程も評価していただける」「お客さまが優しい」とのコメントもあり、好ましい温度感でのコミュニケーションが行われていると感じさせる。
その上で、筆者は幼少期には地元の方言について「東京で使ったらバカにされるぞ」とよく言われてきた覚えがあり(こうした地方人の方言コンプレックスのような傾向は、平成中期ぐらいから減っていると感じるが)、交わされる方言から関西圏の文化基盤の強さを感じて、畏敬の念のようなものも湧く。eo光のコンタクトセンターには、標準語だけでコミュニケーションする場にはあまりないような温かさと、「ご近所」の意識があるように思われた。



