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SNSの「年齢による一律規制」よりも大切なのは――日本が目指す青少年保護策について、総務省の考えを聞いた
2026年7月9日 09:55
「年齢による一律規制を行うのか、行わないのか」ばかりが独り歩きして、重要な論点に目が向けられていない――。
オーストラリアは「16歳未満のSNS利用禁止」に踏み切り、同様に、青少年のSNS利用について、年齢による一律規制などが多くの国で検討されている。日本でも年齢による一律規制の方針が固まっているかのような報道が今年春ごろには相次いだ。そんな中、総務省のワーキンググループが今年6月に示した報告書案では「一律の年齢制限をかけることは望ましくない」との表現が盛り込まれることとなった。
しかし、「一律の年齢制限を行うか、行わないか」以前に、注目すべき論点は「保護措置のあり方」と「年齢確認厳格化」だという。具体的にどのような対策をするつもりなのか、総務省の田熊秀行氏(情報流通行政局 情報流通振興課 課長補佐)に話を聞いた。
青少年のSNS利用で「実効性のある対策」が求められている
青少年のスマートフォン等を通じたSNS利用が進み、トラブルは多様化している。誹謗中傷やネットいじめ。SNSを通じて知り合った相手からのプライバシー侵害や性的被害等。SNSから闇バイトに応募し、特殊詐欺に加担するなど、被害者としてだけでなく、加害者になるリスクも高まっている。長時間利用や、生成AIによる偽・誤情報の影響もある。
そこで求められているのが、青少年のSNS利用における実効性のある対策だ。現在、総務省が開催している「デジタル空間における情報流通の諸課題への対処に関する検討会」の「青少年保護ワーキンググループ」では、法改正も視野に入れながら、事業者に求めることや「保護措置」のあり方などについて具体的な議論が進んでいる。
青少年保護ワーキンググループの議論においては、有識者たちから「SNSは不登校の子どもたちなどの居場所になっている」という意見も出た。最終的には、子どもの知る権利やアクセスする権利という観点、諸外国では年齢制限をしてもすり抜ける例が多く、制限の効果もまだ見えていないことなどを考慮し、「一律の年齢制限をかけることは望ましくない」という結論に落ち着いた。
ただし、今後も一律の年齢制限を一切行わないというわけではない。諸外国でのSNSの規制状況や、米国でのSNS依存・性被害訴訟における裁判の行方なども注視し、総合的に判断する必要がある。例えばオーストラリアでは2027年までに、16歳未満のSNSアカウント作成を制限した効果を調査・発表するとしている。「もし、年齢での一律制限に効果があれば、日本でも再検討の余地はあるだろう」(田熊氏)という。
フィルタリングで対処できない「発信への対処」が検討課題
では、青少年保護ワーキンググループが考える対策の主眼はどこにあるのか。
今ある青少年保護を目的とした法律として「青少年インターネット環境整備法」が挙げられる。同法では、携帯電話事業者に対して、18歳未満の青少年が契約または使用するスマートフォンや携帯電話において、原則としてフィルタリングサービスを提供することを義務づけている。
同法が成立した2008年当時は、違法・有害サイトにアクセスしないようにするなど、インターネット経由で情報を受信することに伴うリスクを考えればよかった。ところが今のインターネット利用は、SNSなどで青少年が発信する機会も多くなっている。長時間利用や依存など、利用そのものに伴うリスクもある。そこで、「法律で義務づけられているフィルタリングでは対処しきれていないリスクにどう対処するかが、現状の検討課題」(田熊氏)となっている。
SNSに起因する事犯による被害児童数は、全体としては減少傾向にあるものの、そのうち重要犯罪等の被害者は増加傾向にある。また、このような事件において被害児童のほうから最初に投稿したことが端緒となっている割合は74.2%に上る。まさに、「発信リスクが課題」なのだ。
被害児童におけるフィルタリング利用率は、約10%にとどまる。「フィルタリングをかけていれば被害に遭わないわけではないが、保護者が子どもの利用を把握・管理できているかどうかも大切なのではないか」(田熊氏)。
「年齢確認厳格化」へ、Appleアカウント/Googleアカウントの情報が有効か
具体的な対策の1つとして掲げるのが、SNSのアカウント登録時の「年齢確認厳格化」だ。利用開始時に年齢確認をするSNSは多いが、自分で生年月日などを登録する自己申告制を多くのサービスで採用しており、実効性には問題がある。年齢確認の問題は世界中で注目を集めており、例えばEUは独自に年齢確認アプリを開発している。
年齢確認には、いくつかの方法が考えられる。例えば、携帯電話会社の登録情報をもとにした年齢認証だ。LINEがこのやり方を採用しているが、一部のMVNO事業者の登録情報は活用できないなどの課題がある。マイナンバーカードは属性証明機能をスマートフォンに搭載できるため、この仕組みを年齢確認に使える可能性がある(ただし、15歳未満はスマートフォン搭載が原則不可となっている)。事業者によっては、サービス開始利用後の年齢推計として、顔写真を撮影し、判定にAIを活用しているところもある。しかし、正しく認証できないことも多く、技術的に難しい。
一方、AppleとGoogleは、アカウントに紐付けられた生年月日に基づき、“年齢範囲”の情報をアプリ事業者に提供できるAPI連携機能の提供を開始している。プライバシーに配慮し、生年月日そのものの提供は行わず、保護者が同意した場合のみ、アプリ事業者が同機能を活用し、年齢範囲の情報を取得することができるようになっている。
サービスのリスクの評価・公表を事業者に求める
さらに事業者に対して、サービスのリスクの評価と、リスクに対応する機能制限や「保護措置」(使用適正年齢の設定を含む)、必要なリテラシー等の公表を求め、それを外部から再評価する仕組みを設けることを考えている。
「事業者側が自社サービスのリスクをどうとらえているのか、見える化するという狙いがある。それによって、サービスの内容、そのサービスを利用する際に考えられるリスク、当該リスクに対応する保護措置などの全体像が見えてくることを期待している」(田熊氏)という。
こうした取り組みには前例があり、EUのデジタルサービス法(DSA)では、事業者が未成年者の保護措置を行うこと、大規模プラットフォーム事業者に対してはリスク評価およびリスク軽減措置を実施・公表することを義務づけている。その公表を日本でも求めるというわけだ。
保護措置は、すでに用意されているサービスもある。例えば、Instagramのティーンアカウントやペアレンタルコントロール機能、TikTokのペアレンタルコントロール機能、YouTubeのペアレンタルコントロール機能などが該当する。このような機能がどのリスク項目に対応するものとして用意されているのか、見える化することで問題が把握しやすくなるのではないか。
「保護措置」はデフォルト設定でオンに。「スクリーンタイム」「ファミリーリンク」の活用も
Metaは、自社調査でInstagramが10代のメンタルヘルスに悪影響であると知りながら隠していたとして、非難・批判を浴びた過去がある。事業者が適切に評価・公表するだろうか。
これに対しては、「インセンティブがあってもいいのでは」という意見が青少年保護ワーキンググループで挙がっている。適切な保護措置をしているサービスにはインセンティブを用意し、できていないところにはペナルティを与えることも考えられる。さらに、事業者自身のリスク評価が適切かどうか、第三者の再評価も検討している。
各プラットフォームにおける青少年保護の主な取り組みを見た場合、まだ対応できていない部分も、中間報告書では指摘されている。Instagramでは「中毒性のある機能の制限」、TikTokでは「データ取得制限」、Xでは「データ取得制限」「発信機能の制限」、YouTubeでは「ショート動画の視聴時間の制限」(本記事執筆時点で対応済み)、LINEでは「中毒性のある機能の制限」「データ取得制限」などだ。
すでに保護措置はあっても、カスタム設定となっており、デフォルトでは設定されてないことも問題視している。「保護設定があってもユーザーは知らないということは多い。青少年保護措置はデフォルトではオンにすべきと考える」(田熊氏)。
具体的には、Instagramの「利用時間の制限設定、TikTokの「利用時間の制限設定」「コンテンツの閲覧制限設定」、Xの「中毒性のある機能の制限」、YouTubeの「利用時間の制限」「コンテンツ閲覧制限」「その他(アプリ内購入機能の制限)」などが該当するという。
こども家庭庁の「令和7年度 青少年のインターネット利用環境実態調査」によると、インターネットを1日に5時間以上利用していると回答した青少年は約48%、平均利用時間は約5時間27分であり、利用時間は長時間化している。米国のSNS依存の裁判では、「無限スクロール」がSNS依存の原因として問題視された。
どの事業者を対象とすべきかという課題もある。たとえ大規模事業者でも、成人ユーザーばかりの事業者を対象としても意味がない。青少年のアクティブユーザー数で考えるべきか、被害者数で考えるべきかについても検討中だ。
また、アプリストアごとにレーティングが大きく異なる現状への改善も要望されている。App StoreやGoogle Playなどのアプリストアでは、アプリ事業者が申告した内容に基づき、アプリごとに年齢制限(レーティング)が設定されており、OSのアカウントに設定された年齢が制限にかかる場合にはアプリのダウンロードができない仕組みとなっている。ところが、LINEはApp Storeでは「13+」、Google Playでは「3+」となっているような例があるためだ。
Appleの「スクリーンタイム」やGoogleの「ファミリーリンク」の活用も期待されるという。アプリのインストールを許可制とすることで発信リスクに対処でき、利用時間制限なども可能となる。「AppleとGoogleに、技術的保護手段として提供を義務づけることも考えたい」(田熊氏)。
子どもたちがSNSを賢く使える環境の整備を
総務省の青少年保護ワーキンググループでの議論は、技術的な保護手段がメインとなっている。一方、こども家庭庁は、青少年インターネット環境整備法のあり方を考える司令塔となり、両省で連携して議論を進めている最中だ。
法改正となった場合も数年ごとに見直しがあり、リスクの再評価も行ったうえで、対策の効果を判断する必要がある。SNSに起因する犯罪の被害者の減少や、利用時間の変化など、具体的な数字で評価していく必要もあるだろう。
いずれにしろ目指すのは、子どもたちがネットやSNSを賢く使えるようになることであり、そのために必要となる制度整備だ。「まずは安心安全を前提としたうえで、子どもたちの知る権利やアクセスする権利を担保しつつ、各ステークホルダーの責任や役割はどうあるべきか、議論を進めていきたい」(田熊氏)という。
事業者に対して技術的な保護措置を講じてもらう予定だが、年齢確認を厳格化したり、保護措置を用意しても、青少年がこっそり利用してしまえばトラブルにつながる。そのため、子どもたちや保護者のリテラシーを高めることも重要となる。安心安全な利用のためには、子どもも大人もリテラシーの底上げをしていくことが大切なのだ。
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高橋 暁子
ITジャーナリスト/成蹊大学特別客員教授。SNSや情報リテラシー教育が専門。スマホやインターネット関連の事件やトラブル、ICT教育事情に詳しい。『若者はLINEに「。」をつけない 大人のためのSNS講義』(講談社+α新書)、『スマホで受験に失敗する子どもたち』(星海社新書)ほか著書多数。http://akiakatsuki.com/










