被害事例に学ぶ、高齢者のためのデジタルリテラシー
スポーツイベント便乗の手口はまた繰り返される!
ワールドカップでも多発したネット詐欺、偽チケット販売や偽無料配信から身を守る方法
2026年7月31日 11:52
「FIFAワールドカップ2026」が7月19日に閉幕しました。決勝ではスペインが延長戦の末にアルゼンチンを1-0で下し、16年ぶり2度目の優勝を飾りました。早朝からの観戦で寝不足の日々を過ごした方も多いのではないでしょうか。世界中が熱狂した1カ月あまり、サイバー犯罪者も大会に便乗して活発に動いていました。
トレンドマイクロが7月24日に公開したレポートによると、2026年上半期に「fifa」「worldcup」というキーワードを含む詐欺・フィッシングなどの不正・不審なサイトが3万5538件確認され、日本国内からのアクセスは約148万件に上りました。
ワールドカップは終わりましたが、こうしたイベントに便乗した詐欺が登場するのは、ワールドカップだけではありません。サイバー犯罪者は大規模なイベントのたびに、同様の詐欺を繰り返しているのです。ただし、手口にはある程度の共通性があります。今回確認された手口を知っておくことで、被害を回避できる可能性が高まります。
グッズやチケットの偽販売サイトは、ワンタイムパスワードまで狙う
今回のワールドカップに伴い多数確認されたのが、偽のショッピングサイトです。トレンドマイクロは2026年上半期に、「FIFA」や「ワールドカップ」「W杯」「日本代表」というキーワードを含む偽ショッピングサイトを6251件確認しました。
そうしたサイトにはユニフォームや応援グッズが並んでいますが、代金を支払っても商品が届かないほか、偽物や粗悪品が送られてくるケースもあります。検索結果で偽サイトを上位に表示させるSEOポイズニングという手法によって誘導されるため、普段どおり検索しただけでもたどり着いてしまう可能性がある点が厄介です。
チケット詐欺も起きています。観戦チケットを扱う「FIFA公式ホスピタリティサイト」を、ほぼ完全に複製した偽サイトが確認されました。ロゴやデザインを似せるだけでなく、公式サイトのサーバーから動画や画像を直接読み込み、公式SNSや規約文書へのリンクまで掲載して本物らしさを演出していました。自動翻訳機能も組み込まれ、日本語でも表示できるようになっていたそうです。偽のログインページにメールアドレスとパスワードを入力すると、認証情報はそのまま攻撃者の手に渡ります。
決済画面まで進むと、クレジットカード情報も盗み取られます。この偽サイトでは、入力されたクレジットカード情報を攻撃者がリアルタイムで受け取り、別のサイトで不正決済を試みます。すると、利用者のスマホには、クレジットカード会社から本人確認用のワンタイムパスワード(認証コード)がSMSで届きます。購入手続きの確認だと思ってその認証情報を偽サイトに入力すると、攻撃者が別のサイトにそれを入力して不正決済を完了させます。利用者自身に認証情報を偽サイトに入力させることで、本人確認の仕組みを突破する手口です。決済時にSMSなどで届くワンタイムパスワードを入力する際は、SMSに記載されている金額などが、自分が今購入しようとしている商品と一致しているかを確認する習慣を付けてください。
米連邦捜査局(FBI)も今年5月、FIFA公式サイトを装う偽ドメインへの注意喚起を出しています。「fiffa」のようにつづりを1文字増やしたり、「wvvw-fifa」のように「w」を「vv」に置き換えて「www」に見せかけたりと、一見しただけでは気付きにくい偽ドメインが多数確認されました。検索結果の上部に出る「スポンサー」枠の広告が偽サイトへの入り口になることもあるため注意が必要です。
「無料でライブ配信」に誘い込まれ、個人情報とカード情報を詐取される
今回多発したもう1つの手口が、偽のライブ配信サイトです。「fifa ワールドカップ 2026 無料配信」という日本語の検索結果から偽配信サイトへ誘導されることが確認されました。検索上位には改ざんされた米国の大学のウェブサイトが表示され、日本の放送局や動画配信サービスの名前をかたる日本語のタイトルが並んでいたといいます。
偽配信サイトでは実際の試合日程に合わせたページを用意し、動画プレーヤー風の画面で今にも配信が始まりそうに見せかけます。しかし、実際に試合の映像は流れません。再生ボタンを押すたびに悪質な広告ネットワーク経由で別のサイトに飛ばされたり、「視聴には登録が必要」と表示して個人情報やクレジットカード情報を入力させたり、試合とは関係のないサブスクリプションに加入させて課金を続けたりするのが目的です。
この手口は東京五輪の際にも広まり、本連載でも、関連記事『ライブ配信サイトでオリンピック観戦しようとしたらフィッシング詐欺に遭った』で紹介しています。その次のパリ五輪でも、無料・安価でライブ配信を視聴できるとうたって個人情報やクレジットカード情報を入力させるサイトが確認され、警視庁が注意を呼び掛けました。イベントが変わっても、使われる手口はほとんど同じです。非公式サイトで「無料配信」という言葉を見かけたら、まず詐欺を疑ってください。
注目度の高いイベントでは便乗詐欺に警戒を
この先も、注目度の高いスポーツ大会イベントが相次ぎます。8月30日にはテニスの全米オープンが開幕し、9月19日~10月4日には32年ぶりの日本開催となるアジア競技大会が行われます。2027年にはカタールでバスケットボールのワールドカップ、オーストラリアでラグビーのワールドカップが開催されます。ラグビーワールドカップでは、先行販売だけで75万枚以上のチケットが売れたそうです。F1やゴルフの大会も、年間を通じて世界各地で開催されています。
特に身近なところとして、日本開催のアジア競技大会に注意が必要です。組織委員会は、公式の販売方法以外で購入したチケットでは会場に入場できないと明言しています。先行販売では人気競技を中心に完売したものもあり、チケットを確保できなかった人がSNSや検索で非公式の販売情報を探す可能性があります。
過去に、SNSで知り合った相手にチケット代を支払った直後、連絡が取れなくなったといった相談が国民生活センターに寄せられています。スポーツイベントでもコンサートでも構図は同じです。SNSの個人間取引や、検索で見つけた非公式の販売サイトには手を出さないでください。
高齢のご家族がスポーツ好きなら、この話題をぜひ雑談の中で共有してください。「チケットをSNSの個人間取引で買ってはダメ」「非公式の無料配信サイトは詐欺を疑う」と伝えておくだけでも、被害に遭う確率はぐっと下がります。万一、被害に遭ってしまったら、警察相談専用電話(#9110)や消費者ホットライン(188)に相談してください。スポーツイベント開催のたびに詐欺師は戻ってきます。手口を知っている人を増やすことが、いちばんの防御となるのです。
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