被害事例に学ぶ、高齢者のためのデジタルリテラシー

それってネット詐欺ですよ!

送金したらお金が倍に増えた!? それでも危険な「PayPay倍増詐欺」に注意

 InstagramやX(旧Twitter)で「PayPay配布」「PayPay倍増」といったPayPayでのお金配りを謳う投稿があふれています。小遣いが欲しいとDMで連絡した結果、ネット詐欺に遭ったという報告が多数出ているので、今回は「PayPay倍増詐欺」について紹介します。

 該当の投稿には実際にお金を配ったユーザーとのDM画像が複数添付されています。実績がたくさんある、全員に配布する、キャンセルが出たのであと10人、といった謳い文句で、送った金額の2倍を返金すると募集をかけています。当たり前ですが、PayPayで送ったお金は盗まれて返ってきません。

イメージ画像。PayPay倍増詐欺の被害に遭う人が続出しています。

 詐欺だったら警察に行くぞ、と言っても詐欺師は「詐欺ではないのでもちろん問題ない」と自信満々に返信してきます。PayPayの残高画面を公開しており、その残高が高額で寸借詐欺はしないようなイメージを打ち出しています。お金をばらまく理由について聞くと、「PayPayの送金実績を積み上げたいから」ともっともらしいことを言います。

 また、信用させるためにリスクを取る詐欺師もいます。あるユーザーは最初は疑って100円だけ送金したところ、200円になって返ってきました。詐欺師はこれで信用を得たと判断し、「あと1回倍増できる」と同じユーザーに持ち掛けます。だまされたユーザーが次に3000円を送金すると、詐欺師はユーザーをブロックし、連絡を絶ってしまうのです。

 送金してくる獲物に追撃してくるケースもあります。例えば、3000円を送金したら「1万円にして返したいのであと2000円送ってくれ」などと言ってくるのです。もう無理だと判断するまで100円単位でせびってきます。

詐欺師は配るお金があるように見せかけるのが得意なので注意が必要です

 リプライを見ていると、多くの人が「PayPay倍増」投稿に群がっているのが分かります。そして、被害に遭ったユーザーが「●●アカウントは詐欺です!」といった投稿をしていることも多く見かけます。

全て詐欺とは言い切れないけど……

 PayPay倍増詐欺に遭わないためにはどうすればいいのでしょうか? 本当は全部詐欺だからスルーせよ、と言いたいところですが、フォロワー数を増やしたり、影響力を高めるために、本当にお金をばらまいている人もいるようです。いずれにしても不健全な提案ではありますが、詐欺だとは言い切れません。

 「詐欺じゃないですよね?」とコミュニケーションして確認する人もいますが、そういう人はたいてい言いくるめられてしまいます。もしかしたらあり得るかも、などと考えないようにしてください。この人は信用できそう、という判断をしてしまい、複数回被害に遭った人もたくさんいます。

 被害報告で「PayPay詐欺は●●という罪なので、犯人捕まえられますよね」と言っている人がいますが、少額だとどうしようもないことが多いです。開示請求しようにも弁護士費用だけで赤字になってしまいます。

 100円や1000円を欲しがって、お金を失った上に最悪の気分になるなど、絶対に避けなければいけません。少なくとも、こちらから送金するという行為は絶対にしない、と決めてしまいましょう。そうすれば、現金の被害は回避することができます。もちろん、このような事例を知っていれば、迷わずスルーできます。今回の手口は高齢者というよりは、若者が引っ掛かっています。ぜひ、家族内で情報を共有しておきましょう。

あなたの両親も“ネット詐欺”の餌食になっているかもしれません――その最新の手口を広く知ってもらうことで高齢者のデジタルリテラシー向上を図り、ネット詐欺被害の撲滅を目指しましょう。この連載では、「DLIS(デジタルリテラシー向上機構)」に寄せられた情報をもとに、ネット詐欺の被害事例を紹介。対処方法なども解説していきます。

高齢者のデジタルリテラシー向上を支援するNPO法人です。媒体への寄稿をはじめ高齢者向けの施設や団体への情報提供、講演などを行っています。もし活動に興味を持っていただけたり、協力していただけそうな方は、「dlisjapan@gmail.com」までご連絡いただければ、最新情報をお送りするようにします。

※ネット詐欺に関する問い合わせが増えています。万が一ネット詐欺に遭ってしまった場合、まずは以下の記事を参考に対処してください
参考:ネット詐欺の被害に遭ってしまったときにやること、やってはいけないこと