被害事例に学ぶ、高齢者のためのデジタルリテラシー
だまされないように注意!
「電話料金の未納があります」、フィリピンからNTTファイナンスをかたる怪しい国際電話がかかってきた
2024年4月5日 07:01
3月20日、午後8時ごろ、筆者の携帯電話にフィリピンから国際電話がかかってきました。訝しみながら出てみると、自動音声でNTTファイナンスを名乗り、「料金の未納があるので電話が利用停止となります。オペレーターに繋ぐ場合は2を押してください」といったメッセージが流れました。
メッセージは日本語でしたが、身に覚えがないので詐欺と判断し、番号は押しませんでした。もし、押してしまった場合は、名前や生年月日などの個人情報を聞かれるうえに、料金の支払いを要求してくる恐れがあります。「支払わなければ訴える」と言う場合もあるようですが、もちろん、これは架空請求詐欺の1つです。
なお、NTTファイナンスは国際電話で連絡をしたり、未納料金などの支払いを案内することはないとして、ウェブサイトで注意喚起を行っています。
自動音声の内容にも複数のパターンがあり、「NTTファイナンスです。料金未納につき法的措置をとることになりました。詳しい説明は1番を押してください」、「NTTファイナンスです。重要なお知らせがございます。1番を押してください」などと言ってくるパターンもあるそうです。宮崎県警本部のウェブサイトでは、実際に詐欺師との電話のやり取りを録音した音声を聞くことができます。
また、詐欺師はSMSでNTTやNTTファイナンスをかたり、架空の未納料金の支払いを要求してくるケースもあるので注意してください。NTTファイナンスでは、自動音声ガイダンスで契約状況に関する事項や回線の利用停止を通知したり、SMSで「料金のお支払いがない」「ご利用料金の確認が取れていない」などの連絡をすることはないので、応じないように、と警告しています。
X(旧Twitter)を見ても、多くの人が同様の電話を受けていることが分かります。電話に出なかった場合、留守番電話にメッセージが残っていることもあるようです。
IP電話が普及し、国際電話料金が安くなったとはいえ、ここまで大規模な詐欺を仕掛けるには詐欺師側にも資金が必要です。それ以上のお金をだまし取る自信があるのでしょう。ちなみに、日本で国際電話の着信を受けても、通話料はかかりませんが、海外にいるときに、電話を受ける場合も通話料が発生する場合があるので注意してください。
「050」のIP電話から国際電話を利用するケースが増加
迷惑電話フィルター製品を手掛けるトビラシステムズが公開したレポートによると、国際電話番号を利用した特殊詐欺が急増しています。2022年9月時点では架空請求詐欺に利用された電話番号は固定電話が56%で「050」の番号で始まるIP電話が44%でした。ところが、2023年9月には固定電話が21%に減り、その分、IP電話が59%に増え、そして国際電話番号が20%を占めるようになりました。
突然、国際電話が増加した理由として、2023年6月に総務省がIP電話番号取得時の本人確認義務化の方針を明らかにしたことが挙げられます。国によっては国際電話番号を簡単に取得できるため、詐欺師たちが方法を変えたのでしょう。なお、日本の詐欺グループも簡単に利用できる国際電話番号を使って詐欺を行っているとも言われています。
国際電話を利用する詐欺はもう1パターンあります。「国際ワン切り」と呼ばれる手口で、一瞬だけ電話をかけて着信履歴を残すのです。これは、被害者が折り返し電話をすると、国際電話通話料の一部が通信会社からキックバックとして犯罪グループに支払われる手口です。海外の電話会社の関係者が犯罪グループと結託し、そこから詐欺グループにキックバックされるのです。
対処法として、知らない電話番号からかかってきた電話には出ないようにしましょう。特に、国際電話の場合は発信元の電話番号に注意してください。
携帯電話を持っている人なら誰でも詐欺師から電話がかかってくる可能性があるので、家族や友人のほか、最新情報に触れることの少ない、シニアのご両親に最新事例の情報を共有しましょう。本連載で個別の事例を学び、未知のネット詐欺に遭遇した場合でも被害に遭わないデジタルリテラシーを身に付け、注意してください。
あなたの両親も“ネット詐欺”の餌食になっているかもしれません――その最新の手口を広く知ってもらうことで高齢者のデジタルリテラシー向上を図り、ネット詐欺被害の撲滅を目指しましょう。この連載では、「DLIS(デジタルリテラシー向上機構)」に寄せられた情報をもとに、ネット詐欺の被害事例を紹介。対処方法なども解説していきます。
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